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孤島オンライン  作者: 西谷夏樹
アイランド・ウォー
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オフラインレイド



 Quartetの拠点がオフラインレイドに遭ったという報告を聞いた俺たちは、すぐにQuartetの拠点に向かった。


 だが、到着した俺たちを待ち受けていたのは壁をほとんど破壊し尽くされ、土台しか残っていない廃墟だった。


 かなこ♪はマップを開きながら、狼狽えた様子で言った。


「ここ、カルテットの拠点だよね?」

「ああ、座標も合ってるし間違いない」


 頷きながらも、俺自身その事実を信じられなかった。


 廃墟の中心に膝をついたimpactの姿が無かったら、周囲の森に本当の拠点があるのではと探しに行っていたかもしれない。


「impact……」

「It's a really hard joke. (まったく、こりゃキツい冗談だ)」


 俺たちに気づくと、impactは力なく肩を竦めて笑った。


 憔悴した様子のimpactの顔には覇気が感じられない。ゲームとはいえ、築き上げた拠点が破壊されたショックは相当大きかったのだろう。


 それからじっくり話を聞いたところ、impactがログインした時点で既に拠点は廃墟の状態だったらしい。


 ログに残された情報を読み取るに、襲撃が遭ったのはimpactがログインする以前、俺やかなこ♪ら学生組がログインするよりもさらに前の時間帯だったようだ。


 これはもうどうしようもないことだ。前回の襲撃ではimpactがログインしていたおかげで襲撃に気づくことができ、俺たちも援軍を送ることができた。しかし、今回は完全に拠点が留守のところを襲われたのだ。


 ――オフラインレイド、impactは留守中の襲撃をそう呼んだ。


 俺たちがこれまで空き巣と言っていたものの別称だ。これをやられたら、大量にタレットを置いている拠点であっても時間を掛ければ簡単に攻略されてしまう。


 Quartetは四人で運営しているギルドだ。タレットの数も知れている。オフラインレイドをされれば一時間と拠点が持たないのは俺もimpactたちもお互い理解していたと思う。


 しかし、理解していてもその結果を受け入れることができるかはまた別の話。impactは拠点が壊滅したことを未だに受け入れきることができていなかった。


 そんな彼を奮い立たせようと、俺は手を差し伸べた。


「We will launch an attack on them tonight. Will you cooperate? (俺たちは今夜連中の拠点に襲撃を仕掛ける。協力してくれないか?)」

「……」


 impactは答えない。そんな彼に、俺は彼が前回の襲撃の際に放った言葉を繰り返した。


「Not when you're bearish, right? (弱気になってる場合じゃない、だろ?)」


 impactがそれを自分の言った言葉だと覚えていたのかはわからない。しかし、たしかに心には響いたようだ。impactは顔を上げた。


「……Naturally. I have only one body, but I'll let you fight. (……当然だ。身一つしかないが、戦わせてもらうぜ)」


 悔しげな表情を浮かべながらも、impactは俺と力強い握手を交わした。


 そして、立ち上がったimpactと俺は今後のことについて話し合った。


 Quartetの拠点はもう存在しない。そのため復興するとなればゼロからとなる。ロンとの戦争を進めるにあたってそんな時間的な余裕はないため、impactは俺たちに初めて会ったときに断った合併の申し出をしてくれた。


 合併をすれば武器や食料の共有はもちろん、拠点へのアクセスも容易になる。俺は申し出を受け入れ、Quartetのメンバー四人をギルドに迎え入れた。


【南海同盟はQuartetと合併しました】

【impactがギルドに加入しました】

【TomBoyがギルドに加入しました】

【PanicPanicPanicがギルドに加入しました】

【John Smithがギルドに加入しました】


 いずれは合併をと考えてはいたけれど、正直に言って……こんな形で合併が行われるとは思っていなかったな。


 impactとしても本音では不本意な合併だったかもしれない。それでもロンに反撃するためにはあらゆるものが必要になる。それは人数だったり、武器だったり、連携だったり。


 それらすべてを補うためには合併は避けては通れない選択だったと思う。


 impactはやる気に満ちた顔で「なんでもやる」と言い、俺はそんなimpactたちにハンティングライフルを追加で作りプレゼントした。


 言語での意思疎通が難しい以上は遠距離攻撃で援護をしてもらうほうが、混乱が少なくて済むと思ったのだ。


 それに、昨日のようにアングリーライノがケツァールテイルの掴みによって攫われてしまうような場面では、ハンティングライフルの火力が助けになるかもしれない。


 もちろんまだQuartetメンバーは襲撃による心の傷が癒えていない。それでも攻撃するなら今だと俺は考えた。


「ロンはカルテットの拠点を襲撃したばかりだ。いまなら相手の持っている爆発物も少ないはず。早速攻撃を仕掛けよう」

「カルテットの仇討ちだね!いくぞー!」


 メンバーの士気は高い。俺たちはテイムモンスターや武器を揃え、再び離れ小島にあるロンの拠点に向けて侵攻を開始した。



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