表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤島オンライン  作者: 西谷夏樹
アイランド・ウォー
76/102

リメイク


「お、やっとテスト終わったー?」

「ギルドマスターが二日もログインできなくて悪いな」


 かなこ♪はキッチンでいつものように料理で実験していた。


 ふわっとした金髪を三角巾でまとめて、張り切った様子でキッチンに立つ姿はどこかお母ちゃん臭く見えなくもない。


 かなこ♪はログインしてきた俺を見ると手を止めて、近くの椅子に腰を下ろした。


「テストならしゃーなしでしょ。あたしんとこは次のテスト夏休み前だから良かったぁ。どうする?とりあえず試作した料理食べながらざっと二日間の出来事聞いとく?」

「ああ」


 対面に座り、出された麺類のようなものに視線を落とす。そうめんみたいだけど、元の素材はなんなんだろう……。


 困惑する俺を他所にかなこ♪は話し始めた。


「まずこれは一番最初に報告しなきゃだね。カルテットが管理してたロンのメンバーは消えたってさ」

「消えた?」

「うん。直近で満腹度も水分も十分なのが確認できてたのに、一瞬目を離した隙に全員いなくなってたんだって」

「なんだそりゃ」


 まだQuartetがロンのメンバーを監獄で管理し始めて数日と経っていない。Quartetのメンバーの証言がたしかなら、ロンの連中は何か裏技的な方法で抜け出したのだろうか。


「マルボロさんはロンのメンバーがアバターを作り直したんじゃないかって言ってたよ。実際、あれだけガチガチに拘束されたら抜け出す隙なんてないだろうしねぇ~。キャラ消す以外に脱獄は不可能だろうって」

「脱獄のためとはいえそこまでやるのか」


 俺だったら育てたアバターに愛着が湧いちゃってるし、一週間くらいは脱出できないか粘ってしまいそうだ。ロンのメンバーはその辺りをドライに割り切ってアバターを作り直したのかもしれない。


「そうなると、また襲撃がないか警戒しないといけないな……」

「だねぇ~。でも、さすがにアバターを作り直したんならレベル上げも必要だし、すぐに手を出してくるってことはないんじゃない?」

「だと良いけど……。あいつら、けっこう執念深そうじゃないか?」


 俺の問いにかなこ♪は溜息を吐きながら言った。


「うーん、それはそう。カルテットの人たちもそれが心配だから、ロンの拠点を探すって言ってたよ」

「そういやロンの本拠点は見つかってないんだったな。カルテットの拠点周りには何か無かった?たぶん、湧きポイント用のベッド拠点があると思うんだけど」


 ロンの本拠点がどこかにあるとしても、Quartetを襲撃するにあたっては前哨基地のような拠点が必要だったはずだ。次の襲撃を警戒するなら、まずはその前哨基地を片付けておいたほうがいいと思う。


「それはもう見つかったらしいよ。マルボロさんとか工場長さんが向こうに行ってカルテットの人たちと一緒に破壊したってさ」

「そっか。ならとりあえずやれることはやった感じだ。あとはロンの本拠点を探すだけか」

「うん。このあと時間があるときに探してみようよ。そんときにフューネスとの関係もいろいろ聞かせてもらいたいし~?」

「はは……まあそうですね」


 悪戯っぽい笑みを浮かべるかなこ♪に乾いた笑いを返す。


 なんか、いろいろとあることないことからかわれそうだ。それはもう仕方がないことだけど、なんだかなぁ。


「あ、マルボロさんログインしてきたみたいだよ」


 かなこ♪はシステム画面を開きながら言った。


「マルボロさんからも話聞いとかなきゃか」

「聞いといたほうがいいよ~。なんかこの二日間でめちゃくちゃ兵器開発に精を出してたみたいだから」

「兵器開発?」

「うん。拠点の外に出てみれば意味わかると思う」


 かなこ♪に言われるまま、席を立って外の景色を見に行く。


 扉を開けると、拠点の周りには見知らぬ建物がいくつか建てられていた。


 一つは藁ぶき屋根のあばら家。二つ目は外に薪が積まれた黒塗りの家。三つ目は本拠点に勝るとも劣らない大型の建築物だ。


 それらの様子を眺めて硬直していると、ベッドから起きてきたのだろうマルボロが後ろからやってきた。


「テストお疲れ様です」

「あ、マルボロさんこそ二日間ギルドのことお任せしちゃってすみません。助かりました」

「いえいえ、それよりもいろいろ見せたいものがあるんですが、いま時間はいいですか?」

「もちろんっす」


 見知らぬ建物のこととか、いろいろ聞かなきゃいけないことは多い。


 俺の気持ちを察しているのだろうマルボロは、俺を連れて砂浜のほうに歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ