夜明けにはまだ早い
「コォッ!コォッ!」
「うお……やっと終わったか……」
テイムが完了したのか、ケツァールテイルはニワトリの朝鳴きのように鳴いた。
いつの間にかウトウトしていた俺は重たい頭を持ち上げる。隣を見ると、一緒にテイム完了を待っていたマルボロも目を擦っていた。
「おはようございますマルボロさん」
「私は起きてましたよ……ギリギリ起きてましたから……」
「えっと、いまの時刻は……げ、二時過ぎ!?マジか……」
「本当に長かったですね。テイム完了まで」
「いやいや、大体6時間くらいは掛かってますよコレ」
どんな苦行だよと運営を呪いたくなる。ギルドメンバーのリストを見ると、三姉弟たちはもちろん、フューネスやかなこ♪もとっくの昔にログアウトしたようだ。後からログインしたゲンジと工場長が麻酔薬を運搬してくれなかったら、割と本気で寝落ちしてテイムに失敗していた。
「ケツァールテイル、こいつは絶対に死なせられないっすね」
「ええ。こんなキツいテイムはこれっきりにしたいです」
ゲーム内のモンスターなのに、その命があまりにも重い。ギルドメンバーみんなでテイムに要した労力を考えると、リアルマネー換算でいくらになるんだろう?
十万?二十万?どっちにせよ気軽に乗れるモンスターじゃないのはたしかだ。特に俺のようなゲーム下手が触れるのは危険すぎる。
「って、あれ?こいつこんなレベル高かったっけ?」
見れば、テイムが終わったケツァールテイルはレベルが134にまで上がっていた。元のレベルはもう少し低かったはず。これはどういうことだろうかと考えていると、マルボロが説明してくれた。
「テイムボーナスというやつですよ。テイムのために消費した食料の質によって、テイム終了後にレベルアップボーナスが付与されるみたいなんです。今回のテイムではわざわざ食料を選ぶ余裕はなかったですが、もし次があれば用意しておきたいですね」
「そんなのあったんすか。どこで調べたんです?」
「前に掲示板で情報収集をしたときに知りました。ほかにも有用な情報があればグループチャットに載せておきます」
「うっす、お願いします」
「ふぁ……とりあえず眠いですね。今日はモンスター小屋までこいつを運んで、それからログアウトしましょう」
「オーケーです」
マルボロはケツァールテイルに鞍を装着した。今回の鞍はそれまでのものとは別物で、建材を載せられる広い平坦なスペースが付属していた。広さはケツァールテイルの背部一面。一辺三メートルの正方形といった具合だ。
「おおー、これベッドとか置けるんですかね?」
「そのようです。モンスターでありながら移動要塞にもなる。これはロマンがありますね~」
「ほかにも何か利用方法がありそうっすね」
「ええ。まあ、それは明日みんなで考えましょう」
マルボロは微笑んで、ケツァールテイルの手綱を振った。モンスターの大きさが変わっても基本的な操縦の仕方は変わらないらしい。
俺たちを乗せたケツァールテイルは、そのまま拠点へと飛び立っていく。平日の夜にやるにはハードすぎるテイムが、ようやく終わった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました!
これにて二章完結です。一章も二章もサバイバル系MMOというジャンルを紹介するためのチュートリアル的なお話が多くなってしまった感がありますが、三章からはサバイバル系MMOらしいPvPメインのお話になると思います。作品的にも三章が山場となるので、どうぞご期待ください。
それと、よろしければ画面下のほうにスクロールして頂いて評価もらえると嬉しいです。
以上、作者の後書きでした。それでは~。
 




