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孤島オンライン  作者: 西谷夏樹
航海、そして空へ
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ファーム 前編


 ログインし、拠点で目を覚ます。


 グループチャットを開くと、怒涛のチャットログが視界に広がった。


『マルボロ: 麻酔薬・麻酔矢の用意完了^0^』

『ゲンジ:お疲れ様です』

『マルボロ: マウンテンコンドル二羽テイム完了^0^』

『工場長:コンドル乗ってみます!』

『マルボロ:明日に向けての準備完了。拠点近くを飛んでいる個体を発見したため、ソロでのテイム実験をやってみます。名前はケツァールテイルって言うみたい』

『マルボロ:騎乗中は弓を持つ余裕がないですね。昏睡させるための別の方法を模索しなければ……』

『ゲンジ:洞窟に生息していたスコルピオはどうですか?』

『マルボロ:マウンテンコンドルとスコルピオでどうにかできないかやってみます』

『工場長:寝ますね』

『マルボロ: (*´∇`)ノ おやすみ』

『マルボロ:スコルピオの特殊攻撃「毒針」を撃ち込むことに成功しました』

『マルボロ:見失ってしまった……(∵)』

『マルボロ:高ステータスのマウンテンコンドルがいなければこの方法でのテイムは不可能。ソロでのテイムを断念』

『マルボロ:リオンさんへ。ケツァールテイルのテイム方法は考えておくので私がログインするまで待っていただけると助かります』

『マルボロ:寝ます』

『ゲンジ:お疲れ様です』

『かなこ♪:おはよ!』

『フューネス:おはようございます』

『キキョウ:おはです~』

『かなこ♪:おは!』

『フューネス:おはようございます』

『かなこ♪:あたしたちリアルの昼食行ってくるね~』

『キキョウ:はーい。ウチらも行ってきます』

『かなこ♪:戻り!』

『キキョウ:戻りましたー』

『かなこ♪:料理作ったから味見募集!』

『†刹那†:感想、やっぱり味は薄かった』

『かなこ♪: (。•ˇ‸ˇ•。)』


 その後もグループチャットにはみんなのログイン挨拶が残っていた。


 ログを読む限りマルボロは遅くまで頑張ってたみたいだな。ソロテイムにこだわっていたみたいだけど、たとえケツァールテイルを寝かせられたとしてもテイム完了まで守り切るのがキツいんじゃないだろうか。


 マルボロの謎の頑張りに内心で敬意を送りつつ、俺はログインの挨拶を書き込んでからキッチンに立っているかなこ♪のほうに歩いて行った。


「おはよー」

「おはよー……いや、おはよう?いまっておはようって時間?」

「いや、こんにちはだな」

「だよねー。もう昼過ぎだよ?」

「日曜日は気持ちよく寝れるからさ……」

「ああそう……」


 かなこ♪は顔はこちらに向けないまま、鉄製の鍋に何かいろいろなものを投入している。薬師キットと同様に料理はアイテムの選択によってオートで出来るはずなのだが、どうやらマニュアル操作を試しているらしい。


「味薄いんだって?」

「それを濃くしようと試してるのよ。でも、味を濃くしすぎると健康ステータスに絶対害悪なんだよねえー。そこがちょっとネックでさ」


 かなこ♪は腕を組み、鍋の様子をじっと見つめた。かなり料理にのめり込んでいるみたいだな。意外と研究熱心なのか。


「じゃー塩ぶっかけまくるって作戦も使えないな」

「そうそう。一回試したら、味は良くなったけど詳細データの【塩】が爆上がりで一生喉渇いて最悪だったから注意ね」

「うわ、そりゃ怖いな」

「まだ残ってるから食べてみる?」


 かなこ♪はインベントリを開いて何かを取り出そうとする。


「いやいいって!」

「そう?」

「ま、まあ頑張ってくれ。俺はちょっとそこらへん散歩してくるから」

「はいはーい」


 逃げるようにキッチンを離れ、拠点を出る。


 やれやれ、酷いもんを食わされそうになったぜ。


 しかし、マルボロがログインするまでケツァールテイルのテイムには取り掛かれないだろうし、それまでどうしたもんかな。大体の準備は俺がログアウトした後に済ませてくれたみたいだけど……とりあえず、ファームかレベル上げでもやっていくか。


 鍛冶場に赴き、鉄のつるはしと鉄の槍の耐久値を修復しておく。なにをするにしてもこの二つは欠かせない。獣皮の服も直さないとなー。


 つうか、鉄を使えるようになったんだから鉄を使った装備を着ても良いんじゃないだろうか。


 設計図一覧を開き、画面をスクロールしていく。だが、鉄の鎧は解放のための要求レベルが40以上からでまだ手が届かなかった。


 どうやらまだまだレベル上げが必要らしい。って、ケツァールテイルの鞍も要求レベル高いんじゃ……気になって調べてみると、こっちの要求レベルは45以上だった。


 テイムの前にレベル上げが必要だな。マルボロにもその辺確認しとかないと。と、その前に色々武器を作るためにファームをしなければ。


 ひとまず鉄のつるはしを装備し、俺は山を登ることにした。


 鉄鉱石のスポーンポイントに着くと、そこではちょうど工場長が採取に勤しんでいた。


「お、リオンさん」

「こんちはー。マルボロさんがログインするまで暇なんで手伝いますよ」

「そりゃぁ助かる。じゃあ、この先の道沿いがそろそろ湧くんでお願いしていいです?」

「いいっすけど、湧くんですか?」


 湧くという言葉の意図が掴めず、俺は首を傾げた。工場長は「ああ」と苦笑して答える。


「鉄鉱石のリスポーンタイミングがもうすぐなんでさ。どの鉄鉱石も掘ってから一時間でリスポーンするから、一時間おきに巡回しとって」

「えっ、それ豆過ぎません!?」

「いやあ、こういうルーティーン作るの好きなんでなぁ」


 マジか。鉄鉱石のリスポーン周期を一時間と突き止めたこともさることながら、工場長の話が本当なら、工場長は一時間前にも鉄鉱石を掘っていたってことになる。下手をするとそのさらに一時間前にも……。


 リスポーンタイミングを計るという発想も凄いが、だから一時間毎に鉄鉱石を掘ろうという熱意も凄い。まさに鬼ファーマー。鉄鉱石掘りをそこまで考えてやっているとは思わなかった。


 この人がいたからマルボロの資材じゃぶじゃぶの巨大拠点も短期間で完成したのかもしれないな。地味だが、ありがたすぎる。


「凄くありがたいっすけど、あんま無茶はしないでくださいね……」

「ははは、ヘーキヘーキ」


 工場長は楽しそうにつるはしを振った。


 こういう人もいるんだなぁ。なんて感心しつつ、俺は工場長に指示された鉄鉱石の湧き場に向かった。


「おお湧く湧く」


 工場長の言った通り、鉄鉱石の鉱床は目の前でタケノコのようにポンポン湧いていった。


 その鉄鉱石を湧いたその場で掘る。だが、すぐに重量制限が来た。


 そういえば、重量制限とかあの人どうやって解決してるんだろう。まさか重量極振りにでもしてるんじゃ……。


 あり得ない話じゃない。資源のスポーンタイミングを計って掘り尽くしていくような人が重量振りをしないとは言い切れない。


 さっき見た工場長のレベルは28。極振りしているなら重量は370まで伸びているはずだ。それだけの重量があれば何往復かでこのあたりの鉄鉱石を掘り尽くすことも可能なはず。


 考えれば考えるほどに頭が上がらないな、これは。


 俺は重量ギリギリまで持った鉄鉱石を抱えて、重い足取りで鍛冶場へ歩いて行く。炉に鉄鉱石を放り込み、再び山を登る。


 工場長と二人掛かりでの採取だったのもあるが、裏山で一度に採取できる鉄鉱石の量は割と知れているらしい。鉄掘りはすぐに終わり、工場長は「また一時間後」と言ってログアウトしていった。


 まだ掘るのかよ!?と、当たり前みたいに出た工場長の言葉に驚愕し、俺は感謝の祈りを捧げて炉の管理だけは引き受けさせてもらった。


「楽しいっちゃ楽しいけど、そこまでファームにガチにはなれないよなぁ……」


 あるいは慣れなのかもしれない。鉄を掘って何かを作る。その流れに楽しみを見出せればああなれるのかもな。


 炉から鉄を重量限界まで取り出し、背後のアイテムボックスに入れる。


 この鍛冶場の使い方もわかってきた。マルボロの言っていたように、手を伸ばすだけでインベントリにアクセスできる鍛冶場の造りは理に適っている。


 どんなに重いアイテムもインベントリにアクセスさえ出来ればドラック&ドロップで簡単に移動させることができるってのは、つまりアイテムボックスを何千個と並べればバケツリレー方式でどれだけ長い距離でもアイテムを運搬可能ってことなのだ。


 俺は鉄をすべてアイテムボックスに移し、残った灰も灰専用のアイテムボックスにぶち込んだ。炉に残った木材はそのままにして燃やした分だけさっと近場の木を切り倒して補充しておく。


 とりあえずこれで鉄鉱石の採取は終わりだな。鉄掘りは掘って焼いて片付けるまでがセットの作業。ここまでやってやっと完了だ。


「ふー、一仕事終わったぜ」


 そろそろ満腹度と水分が落ちてきたから補給も必要だ。さっきは退散したが、かなこ♪が実験していた料理でも食わせてもらおう。


 拠点に戻り、キッチンに向かう。そこにはかなこ♪と共にTakaとmiyabiの二人がいた。



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