ログアウト -4-
ジリリリッ!と、やかましく鳴る目覚ましを止めて起き上がる。
「ふぁ……よく寝た……」
欠伸を噛み殺しながらカーテンを開けて空を見上げると、今朝は雲一つない快晴だった。拠点がなんとか完成してくれたおかげで、狂っていた生活リズムも少しは戻せたな。連日夜更かしするのはさすがにしんどかった。
気持ち昨日よりも軽くなった体をほぐしながら、俺は朝食の味噌汁の匂いが漂っているリビングに向かった。
だが、扉を開けると目の前にはダンボールが山のように積み上げられていた。
「うわ、なんじゃこりゃ……。母さーん、これまた親父が送ってきたの?」
箱をどけながらキッチンのほうに呼び掛けると、母さんは「んー」と適当な返事を寄越した。
「またか……いい加減受け取りまで全部やってくれる倉庫借りればいいのに」
毎度のことながら溜息が出る。
うちはマンション住まいで、リビングはそれなりに広いほうなのだが、そのリビングの半分を大量のダンボールが覆ってしまっていた。なぜこんなことになっているのか。それは俺の親父が個人の貿易商をやっているからだ。
扱っている商品は主にレトロ玩具。半世紀前に流行っていたという紙のカードやハリウッド映画のおもちゃを、海外のマニアショップから輸入してはオンラインショップやオークションで売っている。
輸送途中で雑に扱われてくしゃくしゃになったのだろうダンボール箱たちには、米国ニューヨークからの送付と書かれたシールが貼られていた。なるほど今回はアメリカまで買い付けに行ったらしい。
「ニューヨークだってさ。今回はいつ帰るって?」
「えー?来週明けだって」
「オッケー。そしたら帰国までにまた腕を上げとかないとな」
言いながら、俺は部屋の隅に置いてあった「Soul Links」の対戦用ホログラムマットを指でなぞった。俺と親父の間のお約束というやつで、俺たちは再会のたびに「Soul Links」で対戦することにしているのだ。
対戦成績は五分五分。まあ、血は争えないってことらしい。
「うん、美味しい!最高!」
味付けに満足した様子の母さんはお盆に載せた朝食を運んできた。
国際結婚した母さんだけど、作る料理は和食ばかりだ。いつもの納豆・みそ汁・焼き鮭のメニューを胃袋に流し込んで、俺はいつもより早めに家を出ることにした。
 




