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孤島オンライン  作者: 西谷夏樹
ギルド結成
35/102

拠点ツアー 後編


 階段を上がり、その先にあった扉を開けると屋上に出ることができた。屋上には家具の類は一切なく、ちょっとした展望台があるだけで他には何もない。


「あ、二人とも来た!リオンさん!ここ景色いいよ!」


 フューネスとかなこ♪は展望台の上から手を振っている。


「お邪魔するよー」

「どうぞ~」


 場所を譲ってもらい、俺は一人で展望台に登った。展望台は土台一マス分の広さで二人も登ればぎゅうぎゅうといった感じ。壁三枚分の高さの頂点だけあって、周囲一帯をぐるりと見渡せるようになっていた。


「水平線が綺麗だから見てみて」

「いいでしょー?」

「おおー、ほんとだ」


 二人の言う通り石の壁三枚分の高さから見る景色は格別だった。水平線にはところどころ島のようなものが見え、高所だからか風が吹いていて気持ちがいい。


 爽やかな気分で景色を眺めていると、後ろからマルボロが上がってきた。


「屋上には設備を置いていません。いずれギルドメンバーが増えたときに備えて、階層をもう一段増やそうと思っているんですよ」

「二階建てにすると?」

「はい。階層が増えれば部屋を増やせますし、貴重品も二階に保管しておけば奪われにくくなると思います」

「たしかに拠点が大きいと攻めるのも大変そうっすもんね」


 階層を増やすとなればもちろん資材は掛かる。でも、二日でこの規模の拠点を建てられたんだ。一週間か二週間もあれば拠点規模の拡大は余裕で出来る。俺自身、防衛力の向上とは関係なく大きい拠点を作るのにはロマンを感じるから賛成だ。


「では次が最後です。一旦外に出ましょう」

「え、外ですか?」


 困惑する俺にマルボロは苦笑しながら言った。


「リオンさん忘れてるんじゃないですか?我々がなぜここに引っ越してきたのかを」

「あ、鉄ですか!」

「その通りです。鉄を加工するための鍛冶場を作りました。付いてきてください」

「了解っす」


 言われるままにマルボロに続く。鍛冶場は拠点の裏手にあった。


「わー、なんか石窯っぽいのがいっぱい!」

「正面からだとこんなのがあるなんて気づかなかった」


 一緒に付いてきたかなこ♪とフューネスは感心したように言う。


 鍛冶場はキャンプ場にある炊事場のように、簡素な屋根があるだけの開けた作りになっていた。拠点の壁に向かって作業机が並び、間にアイテムボックスを挟んで反対側に五つの炉が設置されている。


「鍛冶場は特に気合を入れて作らせていただきました」

「ん、その割にちょっとオブジェクト同士がキツキツな気がしますけど……」


 机・アイテムボックス・炉の間隔は人一人がギリギリ通れるくらいの幅しかない。


「ええ、重量超過のことを考えて敢えてそうしました。各所のインベントリに手が届くなら、重量を調整せずともその場で物資の移動が出来るので」

「なるほど」


 たしかに重量超過で動けなくなるなら、バケツリレー方式でそもそも動く必要をなくせばいい。鉄は重い資材だし良い工夫だと思う。


「五つ並んだ溶鉱炉は鉄鉱石を溶かすための設備です。インベントリを開き、木材と鉄鉱石を投入し点火することで鉄鉱石を鉄へと変換します。リアルだと高炉や反射炉という大型の設備が必要なのですが……そこはまあゲームなので省略されているみたいですね」

「へー、もしかしたら高レベル帯になったらそういうのも解放されるかもしれないっすね」


 なんにせよ鉄鉱石はそのまま利用できるものではなく、加工に少々手間が掛かるらしい。それだけの労力が掛かるのなら、それ相応のアイテムが作れると良いんだけど。


 マルボロは炉から離れて今度は机のほうを示した。


「で、こちらの机は作業台と呼ばれる設備です。一部のアイテムはこちらに座らないと作成することができません。例えば素材に鉄が必要なアイテムは作業台に座らないと作成しようとしてもキャンセルされてしまいます」


 これだけ専用施設が必須となると、いよいよ鉄装備の効果が気になってくる。


「鉄で作れるアイテムってどんなのがありました?」

「安く作れて即戦力になりそうなのは鉄のつるはしですね」


 言いながら、マルボロはインベントリからつるはしを装備した。


 つるはしは木の棒にクチバシ型の鉄材を取り付けたもので、刃先がなかなか鋭利だった。


「つるはしは石斧よりも鉱石系の素材採集能力が高いようです。耐久値も高いのでギルドメンバー全員にこちらの装備を使うように言ってください」

「必需品ってことですか。グループチャットに書いときます」


 グループチャットでつるはしの旨を説明し、あとからログインする人も気づけるようにピン留めしておく。


「建築についての説明はざっとこのくらいですね。今後も増築で弄っていくので、その都度報告します」

「お願いします。いやー、これでひとまず拠点は完成っすね」

「はい、お疲れさまでした」

「マルボロさんには建設全部丸投げしちゃったのに最後までありがとうございます。そしてみんなもお疲れ様!」

「お疲れ様でした」

「パチパチパチ~!」


 その場の四人で簡単に拠点完成を祝う。


 長かった……本当に長かった。そんな言葉しか浮かんでこない。でも、こういう仕事終わりの達成感みたいなものはとても気持ちがいい。


「と、そうだ」


 俺はさきほどのテイムを思い出し、拠点を見上げているマルボロの肩を叩いた。


「マルボロさんまだライノには乗ってないですよね?」

「え?乗ってないですけど、でも私はまだ初日のトラウマが……」

「資材集めで絶対乗ることになるんです。早いうちに慣れちゃいましょうよ」

「うーん」


 動くのを渋るマルボロを見て、かなこ♪は「私連れてくる!」と言って表のほうに走っていった。それでも動かないマルボロの背を俺はフューネスと共に押していく。


 ――その後。初めは恐る恐るといった具合のマルボロだったが、元々乗り物は嫌いじゃないのかすぐにライノを乗りこなすのに夢中になっていった。


 聞けばどうやらタバコだけじゃなく、車もけっこう好きらしい。次第にアングリーライノの試乗会は採取効率や移動速度の測定に移っていき――俺は眠くなってきたので早めにログアウトすることにした。


「ふぅ……んー、このまま寝るかぁ……」


 ヘッドギアを外し、軽く肩を回して時計に目を向ける。


 時刻は23時を回っていた。昨日は資材集めのために3時過ぎくらいまで頑張っていたから、それを考えるとだいぶ眠れるな。


 明日の目覚ましをセットし、部屋の電気を消す。


 メンバーが集まり、拠点が完成し、下地は整ってきた。明日からはもっと個々でやりたいことをやっていける。


 島の探索はまだまだで、空を飛んでいた大型のモンスターの存在も気になる。アングリーライノも一頭だけじゃなく、二頭、三頭と揃えていきたい。やりたいことは山積みで終わる気配も見えない。


 俺たちの無人島開拓はまだ序章。


 これからが本番だ。




 ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました!


 孤島生活はまだまだ続きますが、とりあえずこれで序章完結となります。

 次章では他のギルドとの小競り合いと、大型飛行モンスターのテイムが話の中心になると思います。お楽しみに。


 ところで、本作はARKやRUSTなどのサバイバル系MMOをモデルにしたお話なわけですが、読者の方でサバイバル系MMOを遊んだことがあるって人はどのくらいの割合なんでしょうかね。5%もいれば多いくらい?


 自分自身はこのジャンルがかなり大好きで、人生のけっこうな時間を鉄掘りや伐採に費やした人間です。


 自分なりの好きを詰め込んだお話なので、ブクマ・評価などで応援してくれると嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
やはりArkが元ネタでしたか!ならやっぱりショルダードラゴンはディモルフォルドンが元ネタかな?
[良い点] 実際にVRでこんなゲームが出来る時代になれば私もマルボロさんタイプなんだろな笑笑 これからも応援してます。
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