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孤島オンライン  作者: 西谷夏樹
ギルド結成
32/102

大捕り物 後編

 射られた矢は三頭のうちの一頭に刺さり、攻撃されたことに腹を立てたのだろうアングリーライノたちが駆け出した。フューネスはそのままターゲットを引っ張ってこちらに走ってくる。


「みんな!まずは先頭のやつを狙おう」

「よっしゃーやったるで!」

「うわー凄い勢いで来てる!」


 かなこ♪は興奮したように飛び跳ねた。後ろでは†刹那†がもう投石具を振り回し始めている。


「連れてきたよ!」


 フューネスはタゲを釣ったまま森へと逃げ込んだ。彼女を追って雪崩のような勢いでアングリーライノたちは大木をなぎ倒す。


 木々に止まっていたのだろう鳥が一斉に空に羽ばたき、倒木が物凄い地響きを立てながら足元を揺らした。宙に舞った土砂や木の葉がポリゴンへと姿を変えながら降り注ぐ。


 なんだか時間が圧縮されたみたいな感じだ。ほどよい緊張感が心地いい。俺の視線の先には、動きを止めたアングリーライノが映っていた。


 ――チャンスだ。最初に三人で撃退したときも、アングリーライノは突撃の直後は動きが止まっていた。いまなら安全に攻撃をぶち込める。


「先頭に集中砲火だ!」

「行け行け行けー!」


 俺は投石具をアングリーライノの前足に向けて放った。後からみんなの投石具も続き、赤色のポリゴンが視界を埋め尽くした。


「うわ!なんか爆発したみたい!」


 最初に対峙したときは三人でどうにか倒したアングリーライノだが、六人での一斉攻撃は桁違いの圧倒的火力だった。


「ブォッ!?」


 明らかな動揺が窺える鳴き声が響いた。先頭の一頭はダメージを受けて力尽きたらしく、倒れ込みながら消滅した。


「うおお、効きすぎやん!?」

「うひゃあ、別んやつがこっち突っ込んでるど!?」


 後続のアングリーライノは工場長に向かって突進を試みた。だが工場長は木を盾に突撃を躱し、距離を取って投石具を投げつけた。


「ゴアァッ!?」


 的確な反撃にアングリーライノが怯んだ。


 良い動きだ。事前にどんなモンスターか情報を共有していたから、みんなもパニックにならずに冷静に対処できている。


 やはりアングリーライノは投石具のような鈍器・打撃系の攻撃に弱い。こうやって相手の特性と弱点を理解して戦えば、強力なモンスターも倒すことが出来る。


 俺はさらに攻撃を加えようとするみんなに叫んだ。


「そいつは倒さずに捕まえよう!攻撃を止めてくれ!」


 麻酔矢を撃たなければいけないことを考えると、投石具でのダメージは最小限に留めたい。二頭目の足が部位破壊できているのを見て、俺は攻撃の中断を判断した。


「ブ、ブァっ!」


 一頭が消滅し、二頭目が動けなくなったことで三頭目は形勢不利だと気付いたのか、慌てたように逃げて行った。


「あいつ仲間がやられてんのに冷たいやっちゃなぁ!」


 †刹那†は遠ざかっていくアングリーライノにやいのやいのと言っている。


 俺は攻撃には参加しなかったフューネスの元に向かった。


「ナイスおとりだったよフューネスさん」

「ありがと。みんなの連携もすごく良かったね」

「だな。こっからが仕上げだ。これ預かってた装備ね」

「うん」


 装備を返し、俺は弓を手に持った。


「さて、アングリーライノはどれくらいで眠るかな」


 みんなでアングリーライノを取り囲む。俺はアングリーライノの部位の中で、比較的装甲が薄そうなお腹に向かって狙いを定めた。


 一発、二発、三発と数えながら矢を撃ちこんでいく。


 アングリーライノが昏睡状態になったのは八発目の麻酔矢が命中して間もなくのことだった。


「思ったより本数いらなかったな」

「ステータス見ようよ!」

「オッケー」


 昏倒したアングリーライノに近づき、そのステータスを確認する。


------------------

【レベル】68

【名前】アングリーライノ ♂

【体力】1476/2355

【持久力】347/347

【器用】116%

【重量】0/354

【攻撃力】164%

【肺活量】100%

【移動速度】100%

【状態異常耐性】178%

【熱耐性】45

【寒耐性】16

【昏睡値】93/100

------------------

【満腹度】99/100

【水分】98/100

【栄養】99/100(詳細データ)

【病気】なし

------------------

【装備】なし

------------------


「うわ、レベルもステータスも高いな」

「肩乗りちゃんと比べると段違いじゃん!」


 かなこ♪は俺の肩に乗っているショルダードラゴンのステータスと見比べながら顔を左右に動かしている。


 たしかに二頭のステータスの差は大きい。アングリーライノは体力の多さが半端じゃないし、プレイヤーを相手にしても渡り合えるポテンシャルがある。


 それに気になる点もある。ショルダードラゴンは装備不可だったのに、アングリーライノは装備欄に「なし」と書かれているのだ。装備で防御力も底上げできるのだとしたらかなり心強い。


「あの、持ってきた肉入れてええん?」

「いいぞ。入れてみてくれ」


 エンペラぁ針金に頷き、肉を入れさせてみる。しかしアングリーライノに投入された肉は消費されず、テイムゲージも現れなかった。


「ん、こいつ肉食じゃないのか?」

「もしかして草食なんだろか?そういや動物園のサイって草食ってるもんなぁ」

「なるほど……じゃ、みんなでそこら辺の草むらから適当な草や果物を集めてみよう」


 こんな凶暴なモンスターが草食だなんて意外過ぎる。いや、原型がサイなんだから考えればわかったことか?


 周辺の果実を採取し、インベントリに次から次へと放り込む。この過程で気づいたことだけど、どうやら果物は果物でも種類によってテイムゲージの伸びに差があるようだった。


 また、テイムゲージはインベントリに投入された食料の消費に応じて増加するため、昏睡したアングリーライノの満腹度が下がるのを待つ必要があった。


「これけっこう時間掛かりそうだな……」

「餌は充分そうだけど、ゲージが溜まるの遅いねー」


 かなこ♪は退屈そうにゲージを眺めて、俺の肩からフューネスの肩に乗り移っていたショルダードラゴンを撫で撫でし始めた。


「俺も触らせて!」

「僕も~」

「おいおい、周りに肉食モンスターが出ないか警戒してくれよ」


 落ち着きのないメンバーを宥めつつ、システム画面から時計を確認する。ショルダードラゴンのテイムはすぐに終わったけど、大型モンスターのテイムとなると昏睡させてからも大変だな。


 今回は眠らせたのが砂浜に近い河口だったからまだ良いけど、肉食モンスターがたむろする内陸でテイムをするとなると一筋縄にはいかなさそうだ。


 それからアングリーライノのテイムゲージがマックスになるまでにはおよそ三十分掛かった。


『アングリーライノのテイムが完了しました』


「やっとテイムできたー!」

「みんなお疲れ様」

「乗りたい!マスター、いいやろ!?」

「僕も乗りたい!」


 †刹那†とエンペラぁ針金は遊具に群がる子供みたいに訊いてきた。


「しょうがないな、まあ一緒に乗ればいいんじゃないか?ほら、身体は支えてやるからさ」


 攻撃力補正のおかげか俺は二人を軽々とアングリーライノの背中に乗せてやることができた。移動速度よりは地味だけど、攻撃力はこういうときには地味なりに役に立つらしい。


「ブォッ!」

「うお、揺れる!?」

「これ乗るん無理や!」


 だが、アングリーライノはむすっとした顔で背中に跨っていた二人を振り落とした。


「おいおい大丈夫か?」


 駆け寄った俺に、†刹那†は尻を痛そうにしながらアングリーライノを指差した。


「痛つつ……大丈夫だけど、これ乗れんて」

「乗れないか。うーん、乗り方が間違ってるのかそもそも乗れないのか」

「そういえば設計図にモンスターの鞍ってのがあったよ!」

「鞍?」


 かなこ♪に言われて設計図一覧を見てみると、たしかにモンスターの鞍の設計図が見つかった。鞍はモンスターごとに別々に存在するらしく、必要な素材も微妙に違っていた。


「馬みたいに鞍を付けて乗らないとダメってことか。必要な素材は拠点にあるから、乗るのはそれからにするか」

「んだな。マルボロさんのほうももう終わってるかもしれんし」

「アングリーライノ、俺たちに付いてこい」

「ブォ……」


 アングリーライノは追従の指示には素直に従ってくれた。鞍を作成するため、俺たちは一旦拠点へと戻ることにした。


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