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孤島オンライン  作者: 西谷夏樹
ギルド結成
31/102

大捕り物 前編


「姉ちゃん!これ俺も欲しい!」

「僕も!」

「あんたら似たようなこと言って前怒られたんだから!すみませんフューネスさん……」

「怒ってないし気にしてないから大丈夫。それよりも後で一緒にテイム行く?移動速度がないと捕まえるの大変だから」


 テイムを終えて仮拠点に戻ると、みんなはフューネスの肩に乗っているドラゴンを見て物珍しげに集まってきた。


 三姉弟に詰め寄られているフューネスは、以前なら距離を取っていたかもしれない彼らとも苦笑しながら話している。その様子にほっとしながらも、俺は工場長の隣に立った。


「工場長さんも後で触ってみてください」

「そりゃもちろん。けどショルダードラゴンかぁ。どうやって捕まえたんで?」

「麻酔矢で眠らせて、麻酔薬で昏睡値を管理しながら肉をインベントリに入れるだけっすね。テイムしたいモンスターが逃げ出したときに追いつける移動速度があればかなり簡単だと思いますよ」

「なるほど、それならオラでもやれんべ」


 工場長はショルダードラゴンの姿を目で追いながら、興味深げに頷いた。


「マルボロさんのほうの様子はどうですか?」

「まだ掛かるんでねーか?さっき拠点に資材取りに来てたみたいだけんど、もう少し掛かるだろうって」

「そうですか。じゃあ、これからアングリーライノのテイムに挑戦しようかなと思ってるんですけど行きます?」


 工場長が答える前に、†刹那†が勢い良く手を挙げた。


「それやる!俺もモンスター捕まえたい!」

「ぼ、僕も……」


 エンペラぁ針金もおずおずと言う。続いてキキョウも小さく挙手した。


「あの、私と弟たちも一緒に良いです?」

「オッケー。人数を掛けたほうが楽に捕まえられるだろうし。あ……それと工場長さんのレベル上げって三姉弟がやってくれたんだってな、ありがとう」

「レベル無きゃなんもできんしなーこのゲーム!」

「ウチら迷惑ばっかり掛けてますし……このぐらいは」


 恐縮した様子のキキョウの言葉に工場長は腰を上げた。


「やーやー、助かりましたよ。おかげでやっとこさ動けるようになったしなぁ」

「本当は俺が率先して手伝う予定だったんですけど、昨日は資材集めのことで頭いっぱいになっちゃってて……」

「まあ仕事で忙殺されてるときはね。†刹那†君らが手伝ってくれたし気にせんと」

「はい」


 ……ひとまず三姉弟と工場長に話が出来て良かった。これで次の段階に心のおきなく進める。宿敵・アングリーライノのテイムに……!


「よし、それじゃテイムのための準備を始めますか。とりあえず建設中のマルボロさん以外全員参加ってことでいいですか?」


 その場にいた全員が頷いた。俺はテイムの方法を改めて説明して、麻酔薬の作成からテイムに至るまでみんなが経験を積めるように事を進めることにした。


 手順はこうだ。パラの実を集め、腐った肉と合わせて麻酔薬にし、弓矢の用意も済ませておく。今回のテイムでは武器も必要になるため、ショルダードラゴンのテイムでは使わなかった投石具も準備する。これを全員でやる。


 30分もすると準備は終わり、七人全員が麻酔矢・投石具装備のハンターに変身していた。ちょっと大げさすぎるくらい入念に準備してしまったかもしれない。ただ、相手はあのアングリーライノだ。慎重に慎重を重ねるくらいでちょうどいい。


「それで、アングリーライノってのはどこにおるん?」


 †刹那†は背伸びしてあちらこちらに視線を飛ばしている。


 あれ、そういやアングリーライノには俺自身初日以降会ってないんだよな。テイムしようぜって言った手前、出来れば探索にあんまり時間は掛けたくないんだけど。


「探してみないとなんとも言えないな。俺たちが会った個体はマルボロさんが引き連れてきた奴だから」

「あぁ、アングリーライノの生息地なら心当たりあっぺ」


 工場長はとんがった髪を直しながら答えた。


「それってどこでですか?」

「こん先に河口があって、水場の周りに何頭かの集団で暮らしとったよ。見るからに危険なんで普段はあまり近づかなかったけど」


 水場があるとは知らなかった。そこならアングリーライノのほかにも色々なモンスターを見つけることができそうだ。


「良いっすね。それじゃその河口に行ってみましょう」

「あ、リオンさん、ショルダードラゴンは置いてったほうがいい?」


 フューネスは名残惜しそうに肩乗りドラゴンを見つめていた。


「別に連れてっても良いんじゃないか?危なくなったら下がらせればいいし。三人でテイムしたんだからフューネスさんの好きにすればいいよ」

「……そうだよね。なら私の判断で連れていくから」


 フューネスはショルダードラゴンの頭を撫でた。それを見ていた†刹那†は無邪気な笑顔で言った。


「フューネス姉ちゃん!一回だけでいいからドラゴン触らせて!」

「えっ?ね、姉ちゃん?」

「あは!フューネスがお姉ちゃんだってさ」

「ん?ああ、かなこ♪はカナ姉な!」

「君、私にはちょっと馴れ馴れしくない?」


 かなこ♪が真顔になって言うと、†刹那†は走って逃げ出した。


「やれやれ……」


 ギルドメンバーが増えてだいぶ賑やかになったな。


 あまり統制は取れていないけれど、雰囲気は悪くないと思う。ここまでほかのギルドとも衝突なくやってこれたのは幸いだった。この調子でやっていければいいんだけど。


 ――それから俺たちは一路河口に向けて出発した。


 こちらの方向に遠出するのは初めてだったが、道中は砂浜を辿っていたから特に危険なモンスターに出くわすこともなかった。そして工場長の言っていた通り、河口には数分もしないうちに到着した。


「結構広いな」


 島だから川幅はあまりないと思っていたけれど、河口は幅が七~八メートルほどの広い川だった。ただし、流量は少なく川の深さは足首ほど。水に勢いはなく、近辺には砂浜の砂と同じ白い土砂が堆積していた。


 上流のほうは岸辺が砂利になっていて視界は開けている。目を細めると、アングリーライノの姿が河口から見て二百メートルほど向こうに小さく見えた。


 アングリーライノを見つけると†刹那†は大声で騒ぎだした。


「うわ、あれがアングリーライノ!?めっちゃ怖い顔しとるやん!」

「あんたちょっと静かにしいって」


 キキョウが†刹那†を黙らせるのを横目に、河口をうろついているアングリーライノを数える。


「三頭か……けっこう多いな。捕まえるのは一頭で充分なんだけど」

「一頭だけはぐれさせるのは難っかしそうだ」

「そうっすね。それに可能ならここらまで引っ張ってこないと」


 工場長とどうしたものか思案していると、かなこ♪はフューネスに覆いかぶさった。


「ターゲットを釣るならフューネスが適任じゃない?足はっやいよ!」

「カナ重いって……」


 フューネスはかなこ♪に潰されて鬱陶し気だ。ともあれショルダードラゴンにも追いつけるフューネスなら、たしかにオトリ役は適任かもしれない。


「フューネスさん、任せてもいい?」

「構わないよ。ここまで引っ張ってくればいいのよね?」

「ああ、森に誘い込んで動きを封じたところにみんなで総攻撃を仕掛けよう」


 アングリーライノは直進的な動きは得意そうだが、方向転換は苦手に見える。森に引き入れることが出来れば、木を盾に攻撃を躱すことも可能かもしれない。


「了解。じゃ行ってくるね」

「頼んだ」


 フューネスはショルダードラゴンと手持ちの麻酔矢を俺に渡し、通常の矢を携えて出て行った。


「キャウ」


 ショルダードラゴンは喉を鳴らして出撃したフューネスを見送った。俺は肩乗りドラゴンの頭を撫でてからみんなに指示を飛ばした。


「フューネスさんが戻ってくるまでにポジションにつこう。みんな森の中に散ってくれ!」

「おー!」


 みんなを森に潜ませて、投石具の用意をしてもらう。各自の準備が整ったのを見て上流に目を向けると、ちょうどフューネスはアングリーライノに対して矢を放ったところだった。


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