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孤島オンライン  作者: 西谷夏樹
ギルド結成
16/102

カルテット

ここまで読んで頂きありがとうございます。今回のお話では英語の描写が出ますが、内容は全てグーグル翻訳にちょいちょい修正を加えている程度なので、後々ちゃんとした翻訳をするか英語部分を削除すると思います。


「プレイヤーだ」

「え、敵……?」


 かなこ♪は怯えるようにテーブルの影にしゃがみこんだ。


 料理の手を止めて様子を覗う。4人組は男性3人に女性1人で、4人ともアバターの腕が異様に長かったり胴体が細すぎたりと通常ではありえない異形の姿をしていた。キャラクリでアバターの見た目は好きに変えられるけど、ああいう極端な調整にするのはエンジョイ味がある。


 装備は全員石斧のみで服も着ていない。また、4人はいずれも「Quartet」というギルドに所属していた。


 彼らは俺たちに笑顔で手を振ってきた。


「Hey guys!(やあ、みんな!)」


 英語だ。そうわかった瞬間、俺は警戒のレベルを一段階引き下げた。英語が話せる相手ならコミュニケーションが取れる。殺し合いに発展せず交流できるかもしれない。


 彼らとの交流に希望を見出して、俺は手を振り返した。


「Come on! Let's be friends.(来いよ!仲良くしようぜ)」

「Oh, you know what I'm talking about ?(お、話通じるじゃん?)」

「Really. (ほんとだ!)」

「「HAHAHA!!」」


 会話が通じたことに向こうはちょっと驚いたように顔を見合わせた。どうやら俺たちに会う前にもプレイヤーと遭遇したことがあるらしい。この様子だと英語が通じる相手ではなかったみたいだが。


 俺は彼らを安心させるため、俺自身の素性を軽く話しておくことにした。


「I'm Japanese, but I lived in America when I was a kid.(俺は日本人だがアメリカに幼い頃住んでたんだ)」

「That makes sense.(なるほどな)」

「finally met a player who could speak english..(やっと英語が話せるプレイヤーに会えたわね)」


 彼らはそのまま歩いてきて、俺たちの料理器具を指差した。


「Actually, I've been starving for a while now, and I came in with the smell of food.(実はさっきから腹ペコでさ、メシの匂いにつられてやってきた)」

「Then you can have a snack here.(ならここで食っていっていいよ)」

「Are you sure? Thank you.(いいのか?ありがてえ!)」


 肉を焼き始めながら、俺はフューネスとかなこ♪の2人に確認するように訊いた。


「腹が減ってるんだってさ。焼肉食わせてあげてもいいよね?」

「うん、構わないけど」


 フューネスは警戒した様子だが、彼らが友好的だと言うのはなんとなく察したのか特に距離を取るようなことはしないでくれた。


 一方、英語を話さない2人を見て、Quartetの1人は俺に小声で訊いてきた。


「Ladykiller , Looks like your two don't speak English.(色男さんよ、そちらの2人は英語が喋れないみたいだな)」

「Is that what you call me, a ladykiller? Please don't.They learn it in school, but it's hard for them to hear the native pronunciation.(俺が色男だって?やめてくれ。彼女たちは学校で英語を習ってはいるが、ネイティブの発音を聞き取るのは難しいんだ)」

「Yeah, I can see that. Japanese people don't seem to be very good at speaking. We're fellow English teachers. We know each other well..(ああ、わかるよ。日本人はスピーキングが苦手みたいだからな。俺たちは英語教師仲間だからよく知ってる)」

「So the four of you understand Japanese?(じゃあ4人は日本語がわかるのか?)」

「チョットダケ」

「おいおい、普通に喋れたのかよ……」

「ダカラ、チョットダケダッテ」


 まさかの日本在住の英語教師らしい。この感じだと島にいるのは日本のプレイヤー……あるいは、アジア地域のプレイヤーでまとめられているのか?初日に会ったあの外国人も住んでいる地域自体は俺たちと近かったのかもしれない。


 俺は取り皿をその場で作成し、4人に焼いた肉を取り分けた。さらにシャノミジュースの飲み方もレクチャーしてあげた。


 4人は「VRの飯はこうだよな」とか「俺は肉にはうるさいぜ」とか言いながら食事に手をつけた。彼らはリアルでも付き合いがあるせいかお互いに気兼ねのない雰囲気だ。


 一方で、フューネスとかなこ♪は彼らの会話をなんとか理解しようと頑張っていたみたいだが、内容はほとんどわからなかったらしい。


「いやー、全然リスニングできないんですけど!」

「ネイティブは違うね」

「ベンキョーガンバッテネ」


 ――とまあ、雑談はどこか英語の授業のような様相を呈していた。それから食事を終えて小休止。俺は砂浜に座って潮風に当たっていた。


 のんびりしていると、Quartetのリーダー格と思われる「impact」が俺の隣にやってきた。


「ハナソウカ」

「English , ok.(英語でいいよ)」

「Thank you.(ありがたい)


 impactは満腹で膨らんだ腹をさすりながら腰を下ろした。


「Brothers, how many guilds do you guys have together?(兄弟、君らは何人のギルドを組んでるんだ?)」

「There's seven of them. What about you? (7人だ。そっちは?)」

「As you can see, there are only four of us.(見ての通り4人だけさ)」


 お互いのギルド情報の交換。ここまで打ち解けたなら、まあ大体のことは話しても大丈夫だろう。


 しかし4人か。そのくらいの人数なら小規模ギルド同士だし合併するというのも手かもしれない。彼らが加わってくれれば大人組が増えるし、拠点防衛の面でも心強い。


「Heh, I think I'll get along with you guys. why don't you join our guild?( なあ、君らとは仲良くできそうだと思ってるんだけど、良かったら俺たちのギルドと合併しないか?)」

「Merger? Are you serious?(合併?マジで言ってる?)」

「Yeah, I think it's easier to attack that way.(うん、そのほうが楽にゲームを攻略しやすいと思うんだ)」


 俺の提案にimpactは悩むような顔を見せた。


 4人ギルドとはいえ、合併はそれまでのギルドが消えてしまう大きな決断だ。合併を渋るのは当然だろう。impactは少し考えさせてくれと言い、離れたところで仲間と相談を始めた。


 フューネスは彼らを横目に俺に訊いた。


「何て言ってたの?」

「合併しないかって誘った」

「ええっ?いきなり?」

「大丈夫だよ。あの人たち良い人らっぽいし。それにプレイ時間がズレてるメンバーは欲しいなと思ってさ」

「ああ、空き巣対策か……」


 フューネスも空き巣対策については思うところがあったらしい。俺の話を聞いて、彼らにじっと視線を向けた。かなこ♪は両手を頭の後ろで組んだ。


「悪い人らじゃなさそうだしねー。まあいいんじゃない?正直、外国の人と話すのは苦手だけどさ」


 その気持ちはわからなくもない。俺も言葉の通じない相手と仲良くするのは難しいことだと思う。彼らは最初に彼ら自身が言ったように日本語はチョットダケ話せる程度で、会話のキャッチボールができるほど話せるわけではない。


 しかし、せっかく地域(リージョン)が入り乱れているゲームなのに、同郷で固まるのも俺はつまらないんじゃないかと思った。


「というか、さっきリオンさん英語ペラッペラだったよね」

「昔向こうに住んでたからな。こっちに来てからだいぶ喋れなくなったけど、それでも軽い日常会話くらいなら出来るみたいだ」

「へー、帰国子女なんだ」


 かなこ♪は納得したように頷いた。だが、フューネスは帰国子女という言葉を出してから妙に険のある視線を向けてきた。


「ん?フューネスさんどうかした?」

「いや……なんでも……」


 その視線でなんでもないってことはないと思うが。なんか帰国子女に恨みでもあるんだろうか。


 疑問に思っていると、相談が終わったのかQuartetの面々はこちらにやってきた。


「Hmm... Not a bad suggestion, but we like to play amongst ourselves. Sorry about that.(ふむ...悪くない提案だけど、俺たちは仲間内で遊びたいんだ。悪いな)」


 合併は通らないか……まあ、それなら仕方ない。そう言われることも織り込み済みだ。


「Okay, so how about an alliance, at least?(そうか、じゃあせめて同盟関係ってのはどうだ?)」

「Alliance…I don't think I've done anything wrong.(同盟か……俺は悪くないと思うが)」


 impactの言葉に、3人はそれぞれ頷いた。


「I agree.(賛成)」

「Me too.(私も)」

「It's settled.(決まりだな)」

「OK,Let's form an alliance.(よし、同盟を結ぼう)」

「Thank you .(ありがとう)」


 俺たちは握手を交わし、同盟を結ぶことにした。


 ……合併まではいけなかったが、同盟を組めたなら十分な成果だ。4人が敵にならなかっただけでも儲けものだと思うことにしよう。


 食後休憩が終わると、Quartetの4人は別れを惜しむように去って行った。


「I'll see you soon!(また会おう!)」


 砂浜の向こうに4人が消えていく。彼らに手を振り、姿が見えなくなると俺はほっとして椅子に座った。


「お疲れ様!なんだかギルドの重要局面?って感じだったね!」

「まあね……とりあえず敵にならなかっただけ万々歳だ」


 ギルドは他のギルドと同盟を組むことができる。その恩恵はいまのところ同盟用のグループチャットが使えることくらいしかわからなかった。


 だが、敵を作らなかった。これが一番成果としては大きかった。4人だけとはいえ、味方になるか敵になるかでその差は天地だ。


「あ、三姉弟やマルボロさんにも教えとかないと」


 俺はシステム画面を開き、Quartetと同盟を結んだことをギルドのお知らせ欄に書き込んだ。これで後からログインしても同盟が出来たことはわかるだろう。


 フューネスは椅子から立ち上がった。


「食事の後始末しとくね」

「お、ありがとう」

「ねーねー、食後の運動ってことでモンスターってのと戦ってみたいなー」

「それじゃカナ、このあと一緒に狩りに行く?」

「行く行く!リオンさんは?」


 かなこ♪に訊かれて、俺はよっこらせと身体を起こした。


「俺も行こうかな。獣皮の服の素材も欲しいし」

「あー、そういや未だに全裸だもんね……」


 かなこ♪は可哀そうなものを見る目で俺を見た。おいおい、こっちは好きで薄着しているわけじゃないからな。しかも全裸じゃないし。


 心外に思いながらも、俺は狩りの準備を始めるのだった。




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