表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤島オンライン  作者: 西谷夏樹
ギルド結成
15/102

食事



「水分はたしかシャノミの実から摂れるはずだったよな」

「うん。シャノミの実は任せていい?こっちは肉焼き器を設置するから」

「オーケー任せた」


 食事を作ることになり、ささっと各々の役割を決める俺たち。かなこ♪はフューネスが動き出したのを見て彼女に付いて行った。


 ……さて、俺もジュース作りに取り掛かるか。


 ヘルプ欄から食料の作り方について索引してみる。


 どうやらシャノミの実から水分を得るにはインベントリから取り出したシャノミの実を傷付けるか、調理用のアイテムで加工するかの二通りの方法があるようだ。


 調理用のアイテムはまだ持っていないから、今回は実を傷付ける方向でいくしかないな。


 インベントリから取り出したシャノミの実を近くの岩場に固定する。そして石斧でシャノミの実を叩き割ってみると――


「うおっ、ジャバジャバじゃねえか!」


 実の中からは蛇口を捻ったように水が流れ出した。匂いはココナッツジュースのような爽やかな香りだ。思いきり叩き割ってしまったせいで中の水はほとんどこぼしてしまったが、一個だけでかなりの水分が補給できそうなことはわかった。


 改めて岩場にシャノミの実を固定する。飲みやすく加工するなら、表面に優しく傷を付けるくらいの要領でやればいいな。


 割るのでなく穴を開ける程度に。そっとシャノミの実を傷付けると、良い感じに実に亀裂が走り、そのまま亀裂から中の水分を飲める状態になった。


 てっきり実を割ればそのままインベントリにシャノミジュースが手に入るのかと思っていたが、想像以上に料理らしい料理をする仕様のようだ。こういう細かい作業は好きな人は好きだが合わない人は合わないかもしれないな。


 飲める状態にしたシャノミの実を三人分作り、それを抱えて拠点へと持っていく。しかし、持ってきたはいいものの置き場所に困ってしまった。


「うーん、いくらなんでも床に直接置くのは不衛生っつーか、不格好だな」


 昨日はアングリーライノの襲撃のせいで家具を作る暇がなかった。この機にテーブルと椅子くらい作っておくか。


 設計図の一覧を開き、テーブルと椅子をそれぞれ解放する。二つともコストはあまりかからないようなので、手持ちの素材ですぐに作ることができた。


「テーブルの大きさは木の土台と同じくらいか?」


 いまの拠点の広さを考えると外に設置したほうが無難だな。設置のため砂浜に出ると、ちょうど肉を焼き始めたのか良い匂いが鼻腔に香った。


「カナ、もう少し焼いたほうがいいんじゃない?」

「えー!?焼きはミディアムレアが美味しいって!」

「これ腐りかけの肉なんだけど……」

「そうなの!?じゃあ中までしっかり焼こう」


 見ればフューネスとかなこ♪は焚火の前に座り込んで肉を焼いていた。肉焼き器はかなり原始的な仕組みで、棒で肉を串刺しにし、地面に刺した二本のY字棒で支えるタイプだった。


「へえ、コスニアの料理って美味しそうだな」

「あ、リオンさんのほうは終わった?」

「終わったよ。地べたで食べるのもなんだしテーブル設置するよ」

「うん」


 俺はテーブルと椅子3つを肉焼き器の近くに設置した。設置を終えると、今度は肉焼きの様子を見るためにしゃがみ込む。


 赤黒く焼けた肉は一つ一つは小ぶりだ。インベントリ内での重量が1個あたり0.1とあったから、肉は一つ100グラムくらいなのだろう。


 見た目の肉質は、牛の赤身肉といった感じなのがアングリーライノで、鶏もも肉っぽいのがグランドバード肉だな。リアルの飯時はまだだけど腹減ってきた。


 かなこ♪は遂に我慢できなくなったのか、串を一つ手に取った。


「じゃーちょっと一口食べてみるねー」

「あ、ちょっと」

「……んぐんぐ。んー、まあまあかな?」

「微妙な反応ね」


 かなこ♪は首を傾げながら串を振った。


「味付け無しだからかなぁ?かなりたんぱくかもね~」

「んー、味付けもそうだけどさ。VRゲームの食事はプレイヤーに満腹感を与えないように調整されてるんだよ。俺、いままでVRゲームで心から美味いと思えたメシないし」

「そうなんだ?それはちょっと残念~。てかリオンさんけっこうゲームやってる人?」

「下手だけどね。それにサバイバル系はこれが初めてだから」

「そーなんだ。でもなかなか頼りになりそうじゃん!」


 期待を向けてくれるかなこ♪に、俺は胸の前で×印を作って言った。


「なりません。それはマジでこれからわかると思う。むしろ俺は二人のほうが頼りになりそうだなって思ってるぜ?」

「はは、まあわたしはあんまりだけど、フューネスはかなりの廃ゲーマーだからその予想は合ってるかも」


 かなこ♪は自慢げにフューネスの頬を指で突いた。フューネスは鬱陶し気に躱しながら答えた。


「わたひはソロでしかやってなかっはから、ほんなんじゃないはよ」

「メインはバトロワだっけ?」

「カナやめて……ええ。アナログゲーならFPS。VRならバトロワ、シューター全般は一通り。ほかには昔ちょっとだけ格ゲーをやってたくらいかな」

「そうなんだ」


 バトロワをやっていたというのは聞いていたから、シューター系のゲームが好きなのは想像できた。でも格ゲーを齧っていたというのは意外だな。俺みたいに「Soul Links」だけは好きってタイプなのかもしれない。ちょうど同じ世代だし。


「カナさんはどうなの?」

「あたしはフューネスがきっかけでゲーム始めたからフューネスとやるゲームは大体一緒だよ。プレー時間は段違いだと思うけど」

「へえ、二人は付き合い長そうだよな」

「四、五年くらい?」

「そんなもんだねー」


 二人は顔を見合わせて言う。


 それだけ長い付き合いの友達とVRで一緒に遊べるというのは正直羨ましい。俺はゲーム内ではあまり濃い友達を作ってこなかった。その辺は対戦が絡まないゲームばかりやってきたことにも原因があるかもしれない。


「あ、そろそろ焼き過ぎね。テーブルにお皿用意する」


 フューネスはインベントリを操作し、木の皿を取り出した。俺たちはテーブルの上に串焼きとシャノミの実を並べて食事の用意を済ませていく。肉と飲み物だけの簡単な食事だが、三人でテーブルを囲むと気分が違うな。


 俺は簡単にジュースの飲み方を説明した。


「シャノミジュースは傷が付いてる穴から直接飲めるようになってる。ストローがあれば完璧だったんだけど、それらしい設計図が無くてさ」

「ううん、これで充分。それじゃみんなで食べよ」

「いただきまーす!」


 椅子に座り、三人で肉にがっつく。味が薄くてもみんなで食卓を囲んで食べる飯は美味かった。


「ふー、これで少しは健康ステも回復したかな」


 俺は食事の効果を確認するためにステータスを開いた。


------------------

【レベル】12

【名前】リオン

【体力】100/100

【持久力】100/100

【器用】100%

【重量】5/100

【攻撃力】133%

【肺活量】100%

【移動速度】100%

【状態異常耐性】100%

【熱耐性】40

【寒耐性】10

【昏睡値】0/100

------------------

【満腹度】91/100

【水分】92/100

【栄養】72/100(詳細データ)

【病気】なし

------------------

【装備】

【武器1】なし

【武器2】なし

【頭】なし

【胴体】なし

【腕】なし

【腰】なし

【脚】なし

------------------


 満腹度と水分はほとんど全快だけど、栄養だけまだ足りないか。まあ肉オンリーの食事だったから仕方ない。しかし、栄養の隣にある詳細データってのはなんだろう?


 試しにタップしてみると、新たにウィンドウが現れた。


【栄養データ】


【タンパク質】 167%

【炭水化物】 80%

【脂質】 130%

【糖】 70%

【塩】 70%

【食物繊維】 45%

【ビタミンA】 79%

【ビタミンB1】110%

【ビタミンB2】113%

【ビタミンB6】140%

【ビタミンB12】108%

【ビタミンC】102%

【ビタミンD】120%

【ビタミンE】70%

【ビタミンK】70%

【カルシウム】80%

【カリウム】103%

【マグネシウム】82%

【リン】131%

【鉄】123%

【亜鉛】119%

【銅】87%

【マンガン】74%



 ……うわ、なんかいろいろ出てきた。この栄養ステータスって何に影響するんだ?


 ヘルプ欄から調べてみると、どうやら栄養ステータスはアバターの健康状態を左右し、あまりに偏った栄養状態になると数々の異常が起こるらしい。食事はバランス良くが基本ってことだな。


「なあ、栄養の詳細データってところはみんな見たか?」

「見たよ。今回みたいな食事が続くとバランスが悪いだろうけど、もう少しやれることが増えていけば改善するんじゃない?」

「あたし栄養には詳しいよん。普段から料理したりサプリとか摂ってるしね。食事は任せて~」


 リアルでは美容や健康に気を付けてる感じなのか。まあ栄養管理に詳しいならかなこ♪に食事とかは教えてもらえばいいな。


「じゃあ栄養管理担当ってことで献立とか任せていい?」

「任されたー」


 俺の指名にかなこ♪はまたウィンクと敬礼のポーズで応えた。


「さて、俺はもう少し食べとこうかな。満腹度にまだ余裕あるし」

「あたしも食べよっと~。満腹度限界突破させてみる」

「それたぶん吐くわよ」

「まさか~」

「いや、ちょっと待て」

「どした?」


 俺は追加で肉を焼こうとしたかなこ♪の手を制して顔を上げた。砂浜の向こうから見慣れない4人組のプレイヤーがやって来ていたからだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ