ログアウト -1-
サービス開始から1日が経ち、SNS上ではコスニアについて活発な情報交換が始まっていた。
『ちょ、コスニアのマップ広いな~』
『ソロに厳しすぎん? #コスニア』
『アバターの挙動にSoulLinksを感じる』
『マゾい #コスニア#マゾゲー』
『ギルドでやってるけどめちゃ面白い』
『★絆ジャパン★ギルドメンバー募集!#コスニア#ギルド募集』
『変な外人に殺されて草生えた#コスニア』
『世紀末バトルロワイヤルやってる感』
『日本では流行らないな』
『Gzhelのコスニアプレイ日記1日目!動画投稿しました~ #コスニア』
『好きな配信者がギルド作ったら始めようかな』
『ぼっち仲間いませんか?#コスニア』
『俺の島に外国人プレイヤーが多すぎる件について』
『クオリティは高い#コスニア』
『今日は有給使ってコスニア』
賛否両論といった感じだが、どの意見もかなり共感できるものが多かった。やはりコスニアは現状ビジュアル面での評価が高い。一方でゲームシステムについてはソロには厳しいというのがプレイヤーの共通意見らしい。日本だけでなく英語圏の感想も漁ってみたが、こちらも概ね似たような感想が多かった。
良作か駄作かの評価は固まっておらず、まだ初日が終わった段階で、みんな手探りな状況なのには変わりはないようだ。
「赤沢くん、なにを見ているの?」
不意に隣から小声で話しかけられて、俺は見ていた携帯端末を制服のポケットにしまった。
「え、ああ……別になんでもないよ」
「なんでもないってことはないでしょ。いま授業中よ?」
「英語の授業の間くらいは勘弁してよ」
俺は隣の女子にそう言って苦笑した。
彼女は篠原瑞樹。俺とは小学校が同じで、高校で再会したクラスメートだ。幼馴染というほど砕けた関係ではなく、距離感は昔学校が一緒だったとお互いに認識しているだけという程度のもの。
しかし、覚えているのは俺だけかもしれないが、彼女には小学校の頃に「あなたゲーム下手過ぎるし向いていないから二度とプレイしないほうがいいよ」と言われたことがある。
別にそのことを根に持っているとかではないのだけど、なんとなく俺は彼女が苦手だ。
篠原は怪訝そうに俺を見てから、電子黒板に視線を向けた。
篠原の俺への意識が外れたことに内心ほっとする。まさか彼女に「コスニアの情報を集めてました~」とは言えない。俺は学校ではゲームなんてしていませんという態度で日々を過ごしているのだ。
下手にゲーム繋がりの友達を作ってしまうと、俺の下手さ加減で相手に気を遣わせてしまうかもしれない。それならひっそりとソロでやっているほうが平和的だと俺は思う。
授業を適当にやり過ごし、俺は放課後がやってくるのを待った。




