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孤島オンライン  作者: 西谷夏樹
ギルド結成
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「換気良し!シーツ良し!暖房良し!」


 声に出しながらチェックリストを埋めていく。リストを埋めきってもなお、上から順に二重にチェックを埋め直す。


 中学の修学旅行当日でもこれほど入念な確認はしなかったと思う。俺は万全の準備が出来たことを確信すると、リストを机に放り投げてベッドに寝転んだ。


 ……うん、良い感じだ。


 きちんとベッドメイクしただけあって、寝心地は抜群。これならゲームプレイに支障を来たすことはない。


 今日は待ちに待ったゲームのサービス開始当日。


『フルダイブ型オープンワールドサバイバルVRMMO Cosmos Pioneers Online』


 略して「コスニア」と呼ばれているそのゲームは、ほんの数分後にサービスを開始する。


 コスニアは国産の大規模サバイバル系MMOだ。多くのポータルサイトで特集記事が組まれ、SNSでもプロやストリーマーが話題に挙げるなど界隈の期待感は高い。


 なんと運営が予想しているプレイヤー人口は全世界で三千万人以上らしい。まあ、そこは詐欺広告だってことで一部界隈で叩かれているらしいけど。


 ただまあ、ある程度誇張が入っているのだとしても、企業が言うのだから桁が違うレベルでの予想のズレはないのかもしれない。国産ゲーでこれほどの大作が出るのは今年初めてだから、ユーザー側もちょっと反応が過敏なのだ。


 注目を集めているゲームというのは、それだけで既に魅力的だ。なんせ注目ゲームにはプロからストリーマーまでたくさんの人が集まる。内容うんぬん以前に、大勢の人が遊んでいることによる熱量だけで値段分の元は取れてしまう。


 しかし、そういう有名人に俺はあまり興味がないし、ましてや俺のゲーム購入指針はそういった世間一般の評価とはかなり異なっている。


 なぜなら、俺はゲームがとびきり下手なのだ……。


 下手だからどうしたという話ではあるけれど、オンラインゲームはゲームであると同時にコミュニケーションツールでもある。同じゲームをやっているプレイヤー同士であっても、そこにはゲームの上手い下手でカーストのようなものが出来上がり、多少なりともお互いの接し方に差が生まれてしまう。


 熟練者は初心者に対して先生のように振る舞うし、上手いプレイヤーは下手なプレイヤーに無自覚なマウントを取ってしまいがちになる。極端な人間は上手さ下手さで煽りさえする。


 何が言いたいかと言えば、そういう諸々が苦手だから、俺はゲームの購入を検討する際に、まずはそのゲームの対戦要素の有無から調べることを常としているのだ。あらかじめ対戦要素があるとわかっていれば、下手くそプレイで味方に悲しい思いをさせることがなくて済むからな。


 ――話を戻すが、俺がこれからプレーしようとしているコスニアには対戦要素がある。


 話が違うと思うだろうけど、これにはもちろん理由がある。


 ゲーマーをやっていれば、誰しも思い出の一作というのが必ずあると思う。俺にとってのそれは「Soul Links」というゲームだ。塞ぎ込みがちだった小学生時代の俺はこのゲームに救われ、今日を生きている。


 そのシリーズの生みの親が、聞けば今回サービスを開始するコスニアに企画者として参加しているらしい。詳しい情報はあまり出ていないものの、神ゲーを作ったスタッフがコスニアに関わっているのなら、食わず嫌いはせず手を出したくなるのが俺だった。


 つまりは好きなスタッフのために苦手なジャンルに挑戦してみた。それだけのことなのだ。


 長々と思い返している間に、デジタル時計はサービス開始の時間を示していた。


「お、そろそろか。よっし……行くかぁ」


 俺はヘッドギアを起動した。ベッドに横たわったままリラックスして、意識が落ちるのを待つ。手術経験者が言うには、VR空間に同期する瞬間というのは麻酔で意識が落ちる感覚に似ているらしい。それが本当なら、手術ってのは本当にあっという間に終わるんだろうな、なんて。そんなどうでもいい思考は不意に途切れ、気づけば俺は待ち望んでいたゲームの世界に降り立っていた。



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