導入/入学式当日
とりあえず書いてみようと書いた作品です。設定やらキャラやらもあやふやな状態で書いています。完結を目指して書き始めたわけでもありませんのでマイペースな投稿になると思います。
名前決めるの難しいです。
こんなべたべたなものを見てくださる変わり者がいらっしゃいましたらありがたい限りです。
岡夏美は憤っていた。
目の前にいる少女「金剛リカ」に対してだ。自分より強い―-こんなにも彼女が恐れを感じたことは生まれて初めてだった。
しかし彼女は負けることはできない。負けたくなかった。この学校で負けるということは存在価値を失ってしまうことと同義である。
彼女は向かう。負け戦と知りながらも自分に残された微かな力を信じて彼女は金剛リカに立ち向かった。
私立雷悶学園。日本の中でも有数のお嬢様高校であり創立は江戸末期までさかのぼる。
伝統あるこの高校。ずばりその校訓は「乙女たるもの常に強く美しく生きるべし」。
この校訓はそれみよがしと校舎の壁面に掲げられておりその達筆で迷いなく書かれた文字からもこの学校が求めんとする女性像が浮かばれる。
そして4月。今年もこの伝統ある高校に一人の少女が入学する。その少女の名は、「金剛リカ」。
後にこの学校はじめって以来の速さで女王になる人物であり、この学校の在り方そのものを大きく変えてしまう人物。
しかしその金剛リカは道に迷っていた――
「うえーーんこの学校広すぎだよぅーー」
午前8時25分。入学式当日。金剛リカはその入学式が行われる第4体育館にたどり着けずにいた。
それも無理もない。普通の高校とは違い、敷地地面積4ヘクタール、校舎総数50個、中には商業施設もありまるで独立した都市のような作りだ。
「守衛さんに道教えてもらったけど広すぎて全然参考にならなかったよーー」
手元の入学案内の地図を見る。しかし大まかにしか場所が記載されておらず非常に分かりにくい。
「えーと、ここがDの4番地だからー、体育館がこの先に見えてくるはずなんだけどーー。」
そしてこの雷悶学園は遅刻厳禁。遅刻すれば即刻退学という恐ろしいルールがあり、入学式も例外ではない。そして何を隠そうあと5分で入学式が始まるのだ。
「うぅ。せっかく推薦でこんなすごい学校に来れたのに、入学式にも出れずに高校生活が終わるだなんて…。おとうちゃん、おかあちゃんごめんよ…。」
高額な入学費を工面してくれた両親に謝罪をし、この先の人生に絶望を感じた時、なんとも気品のある声がした。
「大丈夫?」
「え!?」
見ると目の前にいるのはとても華奢で白く澄んだ肌をした女の子だった。
「何か困ってるの?」
もしかしてこの子も迷子?
自分以外にも仲間がいる。そう思えただけでリカは嬉しくなった。
「そうなんです!第4体育館が見つからなくて!」
「あ、新入生の方?」
「えぇまぁ」
この子も新入生じゃないの?そう思ったが今はそんなことを聞く暇がない。
「残念だけどもう間に合わないんじゃないかしら。」
「えぇ!!」
「だって第4体育館はあの山の中腹ですから…。」
そうやって女の子が指さした場所には確かに建物らしきものが見える。
第4体育館は小高い丘に立っていたのだ。確かにここからだと頑張っても10分はかかりそうだ。しかし金剛リカは素直に喜んだ。
「ああ!あれだったんだ!!ありがとう!!」
「えぇそうよ。残念だけどこの距離でわ…。」
どっ。
すさまじい蹴りで彼女は走り出した。レンガ作りの歩道が砕けるほどに。
常人ならこの距離間に合わないだろう。しかし金剛リカは間に合ってしまう。天性のばねと鍛えたその足でみるみる丘を駆け上がる。
しかしすでに午前8時29分10秒。入り口で点呼していた学生はすでに扉のノブに手をかけている。
午前8時29分30秒。凄まじい速さで駆け上がる。流石に息が上がる。午前8時29分50秒。点呼の学生が扉を閉め始める。55秒、56、57、58、59…。
「まってててぇぇぇ」
バシッ
占めかかった扉に手を挟む。というか手を挟んだ。
「いたぁぁぁ!!」
「うわ??」
あわてて学生が扉を開ける。
ぎりぎり金剛リカは入学式に間に合ったのだ。
まだ入学式は続きます。