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14th Stage まさかの発表! 告げられる知らせ!!

いつもご覧いただきありがとうございます!


今回も投稿時間がぶれました。申し訳ないです。

ストックが、もうないんです……っ(叫び)


気付けば、物語も折り返し地点。

遅筆ですが、完結まで筆は止めませんので、もうしばしお付き合いください。

 

 ◆


 それは、《Vision》が結成されてまだ数ヵ月目のこと。


 仕事は来るもの拒まず、という方針の社長の許、当時中学三年生だった自分たちは、とあるテーマパークに新設されたお化け屋敷のリポーターの仕事が入ってきた。


 年齢の対象が中高生ということでオファーが来たらしく、メンバーは二人一組で新施設を巡ることになったのだが。


 当日クジで決められた組は、四組。

 自分と青史郎。

 橙羽と黄架。

 藍藍と紫苑。

 翡翠はソロで。


 結果的に仕事は上手く行った。

 撮影時のスタッフからはそれぞれのリアクションが好評で、放送後の視聴率も良かったと後で聞いた。


 特に、高身長の藍が平均くらいの背丈だった紫苑に、すがり付きながら出てくる瞬間の視聴率は、音声時のみのリアクション時よりも高かったらしい。


「緋織くん。次のお客さんが来るよ」


 TV係の日野くんが暗幕の陰から伝える。


「……わかった」


 緋織はダブルキャストで前半の貞子役をしていた鈴川くんと交代し、貞子になりきること数回目。


 懐かしい。

 あの時、驚かされる側にいた自分が、驚かす側になるとは思ってもみなかった。


「うわっ、TVがある……」


 次の客がエリアに入ってくる。


(……ようしっ、後半の貞子はまた一味も違うぞってところを見せてやる!)


 ◆


「……紫苑?」


 最悪のタイミングだった。


「……らん!?」


 敬称をつけることも忘れて、私はその場に座り込んだまま、藍と対峙してしまっていた。


「何、してるの? そんな格好で――」


 頭から靴の先まで衣裳を纏う私に、藍の視線が向けられる。


(うん。やっぱりまず、そこ気になっちゃうよね!)


 そして。


「あっ! 藍ちゃん!」


 聞こえてきた声は、今一番会いたくない人だった。


(日向くん!?)


 すぐそこまで日向くんの声が聞こえてくる。


「こっちで、宮園さ――いいや、〝THE・王子さま〞って感じの衣裳を来た子、見なかった!?」

「……」


 藍が一瞬、視線だけをこちらに向ける。


 そして日向くんへ向けて口を開いた。


「……ごめん、観てない。もしその子を見付けたら、彰が探してたって伝えればいい?」

「うん。あと〝部のみんなには僕が注意しておいたから、早く着替えに戻っておいで〞とも伝えてもらえると助かる」

「わかった」


 日向くんだと思われる足音が、遠ざかっていくのがわかった。


「――訳を訊いてもいい、かな? 〝紫苑〞」


 振り向いた藍が、静かに告げる。

 その優しい表情や目はすべてを理解しつつも、〝私〞から聞かされることを望んでいた。


(ここまで、なのかな……)


 この状況で逃げるという選択肢は、私にはもう存在していなかった。




 どこから説明すれば良かったのだろう。


 茂みの陰に二人で座り、私は藍にすべてを話した。


 《Vision》の〝紫苑〞になって、メンバーと出会ったこと。

 かつてお母さんが話していた夢を、私が叶えようと思ったこと。

 そのためにお母さんの母校であるこの学園に編入すると、思いがけなくも入学式で《Vision》のメンバーがクラスメイトになると知ったこと。


 そして、朱里さんと()()()()をしたこと。


 すべてを話し終わったあと、しばらくして藍が口を開いた。


「……じゃあ〝紫苑は宮園さん〞で、〝宮園さんが紫苑〞だって、皆にバレたらダメだってこと?」

「……うん」


 的を得た要約に、私はただ頷くしかなかった。


「……じゃあ、これは二人だけの秘密だね」


 私は、自分の耳を疑った。

 そして隣に座っていた藍を見る。


「……え?」


 今、藍は〝秘密〞だと言った?

 つまりは――


「――誰にも、言わないの?」


 驚く私に、藍は笑いながら頷く。


「だって、〝紫苑の正体は誰にも秘密〞だって、社長と約束したんでしょ?」


 約束と賭けは少しニュアンスが違うけれど。


「……藍は、怒って……ないの? 〝私〞のこと……」


 私は、ずっと気がかりだったことを口に出した。


 自分たちを裏切った〝紫苑〞のことを、《Vision(彼ら)》がどう思っているのか。


「怒る? 俺が? 君を? 何で?」


 けれど、藍は疑問を投げて寄越した。


「……だって、勝手に《Vision》から抜けて――」

「〝紫苑〞は、まだいなくなってなんかいないよ?」


 藍は微笑んだまま続ける。


「君はまだ、俺たちと同じ《Vision(チーム)》の仲間だよ」

「藍……」


 心の中で、何かが揺れる。


「それに君が戻って来ないと、皆、調子狂うんだ。この前なんて、珍しく青史郎が緋織相手にキレたんだよ?」


 潤みそうになった私の視界は、飄々と言ってのける藍の言葉を聞いて途端に引っ込んだ。


「……あの、青史郎が?」


 いつも冷静な、あの青史郎が? 想像もつかない。

 彼はメンバーの言動に対して、呆れることはあっても、怒ることは滅多になかったから。


「とにかく、君が正体を他の誰にもバレずに、この学園で無事に卒業式を迎えれば良いんだよね?」


「協力するよ」と思ってもみなかった言葉を、藍は口にした。


「藍……ありがとう」


 立ち上がった藍は、私に首を横に振る。


「いいよ、このくらい。君には、前に助けてもらったからね」


 確かに、藍が日本での生活に慣れるまで何かと世話を焼いた覚えがあった。

 他にも日本語学校で出た課題や読み書き、言葉の意味を何度か訊かれて教えたこともある。


 けれど、そこまで感謝されることではない気がするのだけれど……。


 とは言え。

 約半年を迎えた私の学園生活で、心強い味方が出来た瞬間だった。


 ◆


()()()()とは言わない』


 それが〝プロとしての意識〞だと、この世界に入った時、社長から最初に教わったことだった。


 それは《Vision》が結成してすぐの頃。


 とあるテーマパークに新設されたアトラクションの体験リポーターとして、《Vision》の七人にオファーが来た時のこと。


 当時、母親の母国であるこの国に来てからまだ日も浅かった彼は、言葉の壁にぶつかっていた。


 片言で喋るのがやっとで、たまに意味も食い違う。

 そんな中でこの国の言葉の一つ一つの意味を、流暢に話す人の言葉から汲み取るのは、彼にとって容易なことではなかった。


「――この流れでお願いします。良いですか? 藍さん」


 藍は余所見をしていた訳ではないし、真剣に話を聞いていたつもりだった。


 けれど苦手なお化けを扱った〝お化け屋敷〞という場所へ向かうことへの恐怖や、緊張もあったのだろう。


 撮影スタッフの女性はマイクの装着をしたあとに、迫る撮影時間を気にしてか、少し早口気味に段取りを説明していた。

 聞き取れなくて曖昧になっていた部分を、藍は誤魔化すように頷くことしか出来なかった。


「……はっ、はい」


 今となっては、腕時計を見ながらこちらに確認を取るスタッフに要らぬ気遣いを使ったのだろう。


 本当ならば〝お時間を取らせてすみませんが、もう一度確認してもいいですか〞と聞き直せばよかった。

 けれど当時中学三年生で、大人に囲まれる中での慣れない仕事。


 加えて先の社長の言葉がずっと頭の中にあり、聞き返すことで〝プロとしての意識が足りない〞と思われてしまうのが怖かった。


 その時だった。


「――わかりました。僕と藍は三番目に中へ入ったあと、一旦中継ポイントで止まって、撮影班の皆さんからの指示を待ちますね」

「はい。向こうの準備が整い次第、撮影に入りますので」


 その言葉を残して、スタッフの女性は去っていく。


「……ありがとう、紫苑」


 彼が話を要約したことで、撮影の段取りの理解が出来た。


「大丈夫だよ。困っているなら、僕らを頼って」


 そう優しく告げる紫苑の手が、そっと藍の背中に触れる。


「僕たちは、同じ《Visionチーム》の仲間だろ?」


 その時だ。

 一人でこの業界にいるわけではないと、気付かされたのは。


 そのことが分かっただけで、心に掛かる不安や重石が、どれだけ軽くなったことか。

 その一言に、どれだけ自分が救われたのか。


 ――きっと、君は覚えてもいないのだろう。


()()()よりも大事なことだって言うのなら、例えそれが何であれ、俺は君を応援するよ、紫苑……)


 藍はその後ろ姿が校舎の角に隠れて見えなくなるまで、ずっと見つめていた。


 ◆


「ゆっかちゃん! さっきはごめんねっ」


 部室へ戻ると、真由ちゃんが頭を下げて謝ってきた。

 他の部員たちも、何人か同様に謝罪を述べてる。


「今年最後だって思ったら、つい調子に乗っちゃって……」


 続けて、私を探してくれていた日向くんも謝った。


「僕も、みんなを止められなくてごめん」


 私は、全員に対してもう大丈夫だと告げる。


「……ううん。私の方こそ、逃げたりしてごめんなさい」


 写真を撮られるのはあまり慣れていなかったからと、言い訳を添えた。

 少し苦しかったかな。


 でも。


「――でも、この演劇部に入部して、衣裳作りに携われて、演技も出来て……本当に良かったです。ありがとうございました!」




 数日後。


 朝、私が雪子と共に席に着くと、食堂にある特大TVに映るTV番組内で、先日の学園の講堂で行われた限定ライブの映像が報道されていた。


 やがて映像が切り替わり、スタジオの女子アナウンサーが映し出される。


『ここで、スタジオにお越しいただいている《Vision》より、重大告知があります!

 それでは、《Vision》の皆さん、よろしくお願いします!』


「ぶっ」


 危ない。水を吹き出すところだった。


「ゆっか? 大丈夫?」

「う、うん。大丈夫……」


 私は一瞬にして、画面へと釘付けになった。


 時刻は朝の六時半。

 画面には、《Vision》の六人全員が映し出されていた。


 食堂にいる女子生徒の視線のほとんどが、中央の壁にあるTVへと向いている。


『皆さん! おはようございます! 〝君の心に《Vision(僕たち)》を伝える〞《Vision》です!』


 代表して、緋織が口を開いた。


『来年の三月三日の日曜日! なんと僕たち《Vision》の、初の単独ライブが決定しました!

 詳しくは、今後事務所のHPで随時報告していくので、ぜひ、皆さんお越しください!!』


 ――衝撃だった。


「へー! すごいね、《Vision》!」


 隣に座っていた雪子が嬉々として叫ぶ。


 私は、固まったままTVの画面を見つめていた。

 勿論、その間に映し出されるニュースや天気予報は、まったくもって頭にも目にも入ってこなかった。


 頭の中にあったのは、ただ一つだけ。


(――《Vision》の、初単独ライブ……っ!?)


 まったくの初耳だった。


翡翠:なあ、黄架。最近……青史郎の機嫌、悪くねえ?

黄架:翡翠くんもそう思います? やっぱり、この前の……

翡翠:緋織が買ってきたお土産に問題があったのかな?

黄架:そっち!? 僕が緋織くんからもらったお土産は、普通に美味しかったけど……

翡翠:緋織、青史郎が酸っぱいの苦手だっていうの忘れて、

   〝身体にいいから〞ってクエン酸味のお土産渡したらしいぞ。

黄架:ひ、緋織くんらしいというか、なんと言うか……

   というか、そんな種類の味があったんですね、あのお菓子。

   僕は普通のやつで良かった……。

翡翠&黄架:次回8/19更新予定『15th Stage ピンチ再び!? 双子の直感!!』

   お楽しみに!

黄架:ちなみに、翡翠くんは何の味のお土産だったんですか?

翡翠:……納豆味。

黄架:えっ。

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