感情
感情をなくし、一人学生生活を送る伏見の前に一人の少女が現れて。。。
小学校卒業と同時に僕から感情が消えた。
「ねぇ!あなた!あなたには感情がないの?本当?本当にのっぺらぼうなの?」
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僕は小学6年生の伏見深草。小学校の頃は原因不明のイジメに悩まされていた。
理由が分からず何故か聞くと「特に理由はない。ただ反応が楽しいから」と言われたのを覚えている。
「感情なんて無ければ反応を楽しまれことなんてない。感情なんて無ければ……!」
僕はそう思いつき、小学校卒業式の後に地元の氏神様にこうお願いしたんだ。
「感情なんていらないから!僕から!感情を取り上げて欲しい!お願いします!」
翌朝、朝ごはんを食べているときに見たニュース。僕の嫌いなはずの内容。いつもは目を背けるハズなのにその日はなにも感じない。嫌いなトマトを残して母親に叱られてもなにも感じない。ただ「うん」と答えただけだった。小学校を卒業してから家に閉じこもった生活をして、両親以外誰と話すでもなく中学校入学式を迎えた。
小学校同級生達も同じ中学校。今度はなにをされても反応しなければなにもされないハズ。そう思いクラスでの自己紹介の時間がやってきた。ドキドキしない。緊張もしない。不思議と普通に自己紹介が出来たと思った。小学校頃の自分じゃない。僕は変わったんだ。変わった。その事実を認識するだけでなにも感じなかった。
小学校同級生たちが早速自分にちょっかい出してきた。が、なにをされてもなにも反応しないことに成功した。昔はあんなに……あんなに?なにがあったんだ?あいつらが声をあげて走り去っていったのは覚えている。でも今回は変な顔をして歩いて去っていった。次の日もまた次の日も同じようなことが続いた。あの人達はなにがしたいのだろう。そう思うだけだった。
「お前には感情がないのかよ。なにをしても嫌がらないし怒りもしない。小学校頃とは別人だぜ?何かあったのか?」
「別に」
それからはなにもされない平穏な日々が訪れた。その代償として手に入れたのは孤独という静かな世界だった。誰からも話しかけられない。自分から話しかけない。
高校は県外に進学し、中学校の同級生で知っている顔は誰も見なくなった。ここでも同じように誰から話しかけられても受け答えしてるハズなのに友人は出来なかった。変な奴らだ。
ただ、何故か女の子にはモテた。なぜだか聞くとクールでかっこいいからだという。数人から告白を受けたが特定の女の子と一緒にいる意味が分からず、全て断った。しかし、何度も何度も頼み込んでくる女の子に負けて付き合うことになった。彼女はおしゃべりで放課後に色々なところに連れ回された。こういうことは初めてで言われるがままについて行った。
しかし、ある日彼女にこう言われて別れを告げられた。
「私には興味がないの?こんなに話しかけてもお出かけしても笑ってもくれない!私がこんなに悲しい思いをしているのに、なにも感じないの?あなたには感情がないの!?」
感情?感情ってなんだ?感情……。記憶の底からなにか思い出せそうになるが思い出せない。
「感情ってなんだ?笑うとか悲しむってどういうことだ?」
「最低!」
彼女は涙を流しながら走って去っていった。涙……。確か自分も昔、そういうことがあったはずだ。なぜ涙を流したのだ。思い出せない。それに感情ってなんだ。
「物事に感じて起こる気持ち。外界の刺激の感覚や観念によって引き起こされる、ある対象に対する態度や価値づけ。快・不快、好き・嫌い、恐怖、怒りなど」
「ある対象に対する位置付け……。快・不快、好き・嫌い、恐怖、怒り……。」
その単語を調べてもその意味が分からない。それがなんなのかクラスの同級生に聞いても不思議な顔をされながら「だからお前はいつもあんな感じなのか。なのに女の子にモテるとか世の中不公平だぜ」とか言われるばかりだった。そしてのっぺらぼうというあだ名たあることを知った。
そんなある日、転校生がやってきた。名を伊奈利凛という。席は自分の後ろの席。
「おはよう。これからよろしくね」
そう言われて「ああ」と返事をして授業に向かう。休憩時間に伊奈利さんは自分にやたらと話しかけてくる。あの子と同じだ。しばらく話しかけられたがいつもと同じ対応をしていたら、なにも話しかけて来なくなった。なぜだ。いつもなぜこうなるんだ。僕は普通に受け答えしてるだけなのに。
「ねぇ!あなた、あなたには感情がないって本当?本当にのっぺらぼうなの?」
まわりの女の子が「やめなよ」と言っているが伊奈利さんは立て続けに質問を飛ばしてきた。
「いつから?なんで感情がないの?感情がないってどんな気持ち?実際には心の中に感情はあるの?ねぇ、挨拶してみて。ありがとうって言ってみて。どんなに悲しくても泣かないの?楽しくても本当に笑わないの?怒らないの?君、面白いから一緒に帰ろうよ!遊びに行こうよ!」
その言葉に違和感を感じた僕は誘いに乗って一緒に帰って遊びに出掛けた。同級生からは奇妙な顔で見られ、なにかを言われていた気がする。
「どうだった?なにかあった?」
「うーん……、なにもなかった。私がどんなにテンション上げても下げても私を静かに見つめてきただけ。彼、本当に感情がないのかも!」
「もー、やめなよー。趣味悪いよ?」
「ううん。ぜっっっっったいに私が伏見くんを笑わせてみせる!絶対に!」
「もう、伊奈利さんの好きにすればいいけど……。」
「ねぇ、佐伯さんも一緒にやらない?伏見くんを笑わせてみない?絶対に楽しいから!ねぇ!やろうよ!」
「わかった。わかったから。そんなに大きな声出さないで」
「なになに?笑わせるとか、なんか楽しいことやってるの?俺もまぜてよ」
「あ。栗山くん!一緒にやろうよ!伏見くんを笑わせるの!」
「ええ……そんなこと話してたの?あいつを笑わせるなんて絶対に無理だろ」
「ふふーん?自信がないのかな?私と戦わずして敗北宣言なんだ」
「ああん?なんだと?俺もやるよ。負けねぇ。伏見を笑わせたら勝ちなんだろ?簡単だろそんなの」
「さっきは絶対に無理って言ってたのに?よし!じゃあ一緒にやろう。私と佐伯さんと栗山くんの三人で伏見くんを笑わせるの!それじゃ、今日の放課後早速作戦会議やるよぉ!」
私は彼に感情を取り戻してもらわなければならない。やらなくちゃいけない。それが私の贖罪だから。佐伯さんと栗山くんには悪いけど一緒にやってもらう。
次回、試行錯誤




