表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/160

第75話 捕獲、なるか……?


 タケトは口径がハンドボールくらいありそうな金属の筒を肩に担いだ。ずっしりとした重さが肩に食い込む。肩に担いでみてわかったけど、これ、形はそのまんまロケットランチャーだ。


「わわわっ……」


 筒の重心が後ろに偏っているため、少しバランスを崩すとひっぱられて背中から倒れそうになったが、ひっくり返る寸前で筒の重さがふっと軽くなった。


「大丈夫ですか?」


 振り向くと、獣化したカロンが片手で支えてくれていた。


(片手かぁ……)


 自分がひっくりかえりそうになる重さを軽々と片手で支えるカロンを見ていると、なんかこう、腕力や筋力では絶対に越えられない差を感じる。


「あ、ありがとう……さてと、狙っていくか」


 タケトは気を取り直してグリップを握り直すと、筒すれすれに顔を寄せて片目を瞑る。

 照準器もなにもついていないのでどうやって照準をあわせるのかよくわからなかったが、普段、精霊銃を使うときの感覚を思い出しながら、だいたいこんな感じかな?と勘を頼りに銃口をゴーレムに向けた。


「精霊銃の要領で、捕まえることを強くイメージしながら撃ってください」


「わかってるよ」


 銃口を向けてもなお、ゴーレムはまったく動く様子はない。しかし、先ほど反撃を受けたときのスピードとパワーを思い出すと、油断は出来ない。



 バシュッ



 引き金を引くと同時に、後ろに引っ張られる衝動と軽い破裂音が響いた。


 銃口から何か大きな塊が飛び出し、ゴーレムに向かって一直線に向かって飛んでいく。

 網だ。

 タケトがフォレスト・キャットと一緒に捕らえられたあの網とよく似たもの。


 特殊な植物でできており、さらに所々に精霊を含んだ魔石が縫い込まれている。獲物に絡みついた途端収縮して、網自らが獲物を包み込む捕獲専門の網だ。


 網は対象物であるゴーレムに近づくと、意思をもっているかのごとく拳を開くようにバッと広がった。


 それまで微動だにしなかったゴーレムも動きだす。爛と赤い片目が鈍い光を放つと、その光の残像を残しながらゴーレムが前に出た。ゴーレムは再び、左手を伸ばして網を掴む。


 しかし網はゴーレムに触れたとたん、急速に閉じ始めた。ゴーレムの腕に絡みつき、上半身を包み込む。


 その間、タケトが担いだままの筒にシャンテが後ろから次弾を装填してくれた。

 カチッと弾が嵌まる音。シャンテが手を離すとすぐに、タケトは次弾を放つ。


 放たれた網は、今度はゴーレムの下半身に絡みついた。ゴーレムは一歩前に出ようとしたが、絡みついた網に脚をとられて体勢を崩した。

 その巨体が転倒し、大地が揺れる。巻き上がった砂煙とともに、地響きのような振動が離れているタケトたちにも伝わってきた。


「捕獲、成功か……?」


 跳んでくる砂が入らないようにタケトは目を眇めた。


「次、装填したよ」


 シャンテの声。


「さんきゅ!」


 タケトは三発目の引き金を引く。倒れたまま身動きできないゴーレムに、あっさりと三度目の網は絡んで、その巨体を覆った。

 文字通り、雁字搦がんじがらめだ。


「捕獲成功……か?」


「並の魔獣でしたら、ここまですればまず動けませんが……」


 カロンが言うとおり、ゴーレムは芋虫のように地面に転がったまま身動きできなくなっていた。


 ……が。


 ギチギチと嫌な音がタケトの耳にも届く。あれは、ゴーレムが網を内側から引きちぎろうと力を入れている音だろう。


「俺も前にああいう網に捕まったことあったけど、フォレスト・キャットの成猫でも歯が立たなかったんだよ。……でも」


 ビリビリブチブチと網が裂ける音が聞こえてきた。


「あーあ……やっぱ、ゴーレムの力は半端ねぇなぁ」


 三重に絡み合っていた網を、ゴーレムは片手で引きちぎった。破れた網の間からゴーレムが顔を出す。脚に絡んでいたものも、簡単に引き剥がされてしまった。


「さあ、避難しますわよ!」


 ブリジッタに言われるまでもなく、タケトたちはその場を全速で逃げ出す。またこっちに反撃してくることを警戒したからだ。

 しかし。


「あ、あれ……? 今度は来ないね」


 シャンテの言うとおり。今回は、さっきのようにドスドスと地響きをさせながら追いかけてくる様子はなかった。


「ほんとだ」


 足を止めて振り返ると、ゴーレムは網を払い終えたあと、再び電池の切れたロボットのように座り込んでそのまま微動だにしなくなった。


「我々が離れすぎたのかもしれませんね。どうやら、あのゴーレムはあの辺りから離れたくないようですし」


 まるで何かを守っているように、あの辺りから離れようとしないゴーレム。しかし、その後ろに遺跡でもあるのなら『それを守っているんだろう』と想像はつくのだが、そこは草も疎らにしか生えていない荒れた大地の真っただ中だ。


「なんなんだろうな……」


 やはり、壊れて誤作動している……そんな風に見える。しかし、何か引っかかる。そんなモヤモヤとしたものがタケトの内に生まれていた。


 タケトはしばらく黙ってゴーレムを観察していたが、カロンは早速次の手を準備し始めていた。あのでかいリュックを開いてごそごそしていたかと思うと、また別の何かを取り出してタケトの手に渡してくる。


「さぁ。網作戦がダメとなると。次はこれ、行ってみますか」


 渡されたのは、さっきよりは細いが、これも筒だ。やっぱり、何かを飛ばす系らしい。なるべく、近づきたくはないもんね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ