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ぶっつけ





練習なしのぶっつけ本番というわけか。


「そんな余裕はないからのぅ」


さっきは、準備は万全が必要、とか言ってなかったか?


「今の状態で、鷏鵜(てんてい)が何処におるか分かるか?」

「………ちょっと待て」

「力は使いながら覚えるしかない」


神力を纏った状態だと、千里眼のように遠くの方までよく見える。

鷏鵜(てんてい)はどうやら、隠世ではなく、現世にいるようだ。

だが、それ以上近づいみようとすると「バチッ」と弾かれる。


「力が強いとそれだけで分かるのじゃ。

だが、相手の力が強いと、壁があるようにそれ以上いけないのじゃ」


そしてこの神力、すごく疲れる。

さっきは目に纏って使っていたが、丸一日テレビでも見たような感覚がするのだ。

確かにこの力は強いが、問題は使い方だな。


「では、鷏鵜(てんてい)の元へ向かうぞ」


城の反対の門へと向かう。

すると、街から人が出てくる。


「さっきまでいなかったのに、どういうことだ?」


しかも、全員意識がないようだ。

なのに、両手に武器を持ち、俺達に襲いかかってくる。


「避けつつ、駆け抜けろ!」


この場で、力を使うわけにはいかないのだろう。

普段の俺よりは力があるが、油断は禁物だ。

街人を避けつつ、門へと走る。



だが、門があったはずの場所には、粉々になった木々だけがある。


「………鷏鵜(てんてい)の仕業じゃな」

「………どうしますか?」

「我々で円を作る。

葦牙と由貴は、その中に入るのじゃ」

「わかった」

「わかりました」


後ろから、街人が追ってきている。


「では、行くぞ」


その言葉と共に、現世へと戻ってきた。


「着いたな」


だが、そこには森がなく、ただのひび割れた地面。

そして、祠はただの木と成り果てている。


「………これも鷏鵜(てんてい)の仕業か」

「急ぐぞ」

「………場所はわかるのか?」

「どうやら、現高木家にいるようだ」

「お主ら、置いてゆくぞ」






(りん)の背中を追って走る事30分。


「………はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

「………葦牙のおっさん大丈夫か?」

「おっさん言うな!

俺はまだ現役だ」


封印されてたから、止まってただけだろう。


この星蓮の端、そこに高木家はあった。

門は壊され、家は滅茶苦茶になっている。

そこに、人影が1つ。


「お前が何故ここに?」


そこには、まだ学校にいるはずの高木雅彦の姿がある。


「自分のケツを拭きに来た」

「何の力も持たぬお前は、下がっておれ」

「だが、場所がわからないだろう?

私が案内する」

「葦牙のおっさんと由貴、頼んだぞ」

「わかりました」


高木を先頭に、家の中へと入って行く。

どうやら地下にいるようで、階段を降りていく。


「………ここだ」


そこは、広さも暗さも、葦牙が封印されていた場所に近い。


「………遅かったかな」


鷏鵜(てんてい)は神格を得た時のような覇気はなく、うなだれている。


とても、世界を消滅しそうに見えないんだが。


「新世界を創ろうとした!

………だが、どこにもいないんだ!

神は全知全能じゃなかったのか!」

「………もしかして、お前杳を」

「そうだ!

だが、ダメだった。

どう創っても、何回創ろうとしても、杳はいない」


………さっきから、なんの話だ?

葦牙のおっさん以外、置いてけぼりなんだけど。


「………お前も知っているだろう。

1度死んだ人間は、2度と生き返ることはない」

「………その杳というのは?」

「俺が愛した女の名だ。

俺はそのために、高天を喰らい、力を使いこなし、封印が弱まるのを待っていた。

そして、他の神格も喰らった。

なのに、なぜだ!」

「………それは、神の力をもってしても無理じゃ」

「………いや、まだあるじゃないか!

お前達が持っている、天乃の神格の欠片が!」


鷏鵜(てんてい)は徐ろに立ち上がる。


「お前達は殺して、神格を奪おう。

そしたら、杳にも遭えるだろう」


先程とは違い、鷏鵜(てんてい)の身体からは、力が溢れ出している。


「葦牙と由貴は、高木を頼むぞ!」


3人は、慌てて距離をとる。

神格を持っているのは俺達4人だから、狙われることはないだろう。


「………恭弥、準備はできているか?」

「全然」


さっきから、引っ切り無しに汗が噴き出してくる。


「そう答えられるなら、大丈夫じゃな」

「………3人共、死ぬなよ」

「お主もな」


鷏鵜(てんてい)はなぜか、俺達の話に耳を澄ませている。


「………わざわざ、待ってくれるとはな」

「悪役は、ヒーローが変身するのを止めてないだろう?

それと同じだ」


悪役という自覚はあるんだな。




「さぁ、始めようか。

世界の存亡を賭けた戦いを」




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