知られざる真実
校内に入ってみたが、特に変わった様子はない。
あるとしたら、いつも聞こえる学生の声が聞こえないくらいだ。
「………パタ、パタ」
聞こえるのは、俺の足音だけ。
他は相変わらずの無音。
美奈も無表情、無言、無音という、三暗刻である。
「とりあえず、全部回ってみましょう」
1階から順番に、教室を確認して回る。
1階を全て周り、2階、3階へと上がっていく。
だが、これといって、変わったことはない。
何も起きなければ、何か起きる様子もないのである。
「もう、全部周りましたよね?」
「………うーむ」
すると、美奈が袖を引っ張ってくる。
「こっち」
意味もわからず、美奈について行く。
もちろん、説明などはしてくれない。
他の2人も、黙ってついてくる。
数分歩いてから、美奈が立ち止まる。
「………ここ」
そこは、1度確認したはずの職員だった。
「ここはさっき来ましたよ?」
「そうじゃな」
美奈は首を横に振り、進んで行く。
どうやら、職員室の奥に校長室があるようだ。
校長室なんて行くことがないから、存在を忘れていた。
扉の向こうから、物音はしない。
「行くぞ」
3人が頷いたのを見て、勢いよく扉を開ける。
そこは、ゆとりをもったスペースに机や椅子があるくらいだ。
先程と同様、何も起きる気配がない。
俺が部屋から出ようとしたら、
「少し待つのじゃ」
輪が制止してくる。
本棚に近づき、なにやら動かしている。
「………ガチャ」
すると、突然机の下に階段が現れる。
なんて古典的な隠し階段だ。
「よくわかったな?」
「流れがおかしかったからのぅ」
………流れねぇ。
「今の状況じゃと、ある程度近づかないと、わからぬ」
「行きましょう」
携帯のライトを頼りに、ゆっくり降りて行く。
階段にトラップなんてことはなく、普通に長い階段を降り終える。
灯りが無く暗いが、ずっと先にボンヤリと光が見える。
周りを警戒しつつ、その光の方へ歩いて行く。
部屋に入ると、眩しくて、思わず目を瞑る。
光に慣れて、目をゆっくり開けると、そこには平地が広がっていた。
何もない。
ただ、広いのだけの場所である。
「………ここはなんだ?」
「ここは………」
「ようこそ、新しい世界の入口へ」
入ってきた所と反対方向から、人影が歩いてくる。
顔は暗くてよく見えない。
「お前誰だ?」
「私?」
「お主はまさか」
「そのお嬢さんは分かったみたいだね。
私は、高木 雅彦。
高天と言ったほうが、君達にはわかりやすいかな」
「お前が、高木雅彦」
「そうだよ」
「その高天がなぜここに?」
「なぜって?
ここでしかできないことをするために、ここにいるんだよ」
………ここでしかできないこと?
「ここに、なにがあると言うんですか?」
「君達には見えないのかな?」
そう言うと、パチンと指を鳴らす。
何もないはずだった広間の下に、模様が浮かび上がる。
「これはどういうことじゃ?」
「君達は何も知らないんだね。
何も知らされず、何も不思議に思わず、そのお嬢さんの言う通りに動いてきたんだろう?」
「………輪?」
「まぁ、そもそも知っているのなんて、そのお嬢さんと神皇とその子の中にいる天乃くらいか」
何の話をしてるんだ?
要点を言わず、ボカして話しているからか、内容が掴みきれない。
「君達は知らないだろう?
元々、隠世には天乃、上間、常立、高天の4神がいたとされている。
だが、本来は5神だったのだ。
そのもう1つの名は………葦牙」
「お主は、次期高天。
知っていてもおかしくはないか」
「今の話、由貴は知っていたか?」
「………いえ、初めて聞きました」
「まだ、終わりじゃない。
なぜ、今は4神となり、葦牙の名は消されてしまったか?
なぜ、高天だけこちらの世界から選ばれるのか」
………確かに。
言われてみれば、高天だけ継承制というのもおかしな話だ。
「元々、高天を含めて5神で隠世と現世を監視していた」
「………監視?」
「そうだ。
本来は監視のみで、今のように表だって行動することはなかった。
だがある時、1柱の神が現世の女と出逢い、恋に落ちた。
だが、それをよく思わなかった1柱の神が、その女を殺してしまった。
そのことに怒った神は同族を殺そうとし、他の神々によって封印されてしまった。
同族の悲劇を悲しみ、殺すことは躊躇われたようだな」
「………それが、葦牙だったと」
「そうだ。
だが、それだけでは終わらない。
葦牙が愛した女の中には、新しい命が宿っていたのだ。
葦牙と仲が良かった高天は、友を救えなかった事を嘆き、名を棄てた。
そして、葦牙の愛した女の子供を育て、代々高天の名を継がせることになった」
「お主がなぜと思ったが、そこまで知っておったとは」
「知っているさ。
この葦牙が封印された土地に学校が作られ、その裏の森に隠世への扉があったこともな」
「………それはどういう」
「監視だ。
そのために、この学校は作られたんだからな。
外側は普通のように見えても、内側は普通とは程遠い。
それもあって、神々は世界に干渉するようになったんだからな」
………頭が追いつかないので、一旦CMいいですか?




