作戦会議って大事だと思うんです
「おはよう、朝から両手に花なんて羨ましい
な」
「好きでやってるんじゃない」
花というか幽霊だけどな‥‥‥。
「お主は女の扱いがうまいの」
「お、おはようございます宮野さん」
「こっちは意外と大変なんだ」
「大変ねぇー、全然大変そうには見えないんだが。むしろ幸せそうに見えるぞ」
「誤解を生むような言い方はよせ」
周りの男共がこっちを見て殺気をだしている。
「周りは皆敵ばかりなんだ」
「それはしょうがないさ」
「ワシは主の味方じゃぞ」
「私もです」
二人の発言で一層殺気が増した。
「はぁ、これだからな」
二人ともわからないという顔をしている。
とりあえず、余計な事は言わないように注意しておかねば。
「まぁ頑張れ!」
「あぁ頑張る‥‥‥」
教室にいってからも、まぁひどかった。
男共にやいのやいのと騒がれ蹴られ、もみくちゃにされた。
2人は俺を心配そうに見ていたが助けてはくれず、親友は手を貸すどころか一緒になってあそんでいた。
幼馴染みは昨日のことがあったからか、こちらを見向きもせず無視していた。
これなら、あっちのほうを構ってる暇もないな。
男共をあしらうので精一杯だ。
午前中はほぼそんな感じだった。
午後、俺をいじるのにも飽きてきたのか、疲れてきたのか。
周りの警戒が緩んだ隙に2人を連れ、教室 を抜け出し、人のいない教室に駆け込む。
「はぁはぁはぁ‥‥‥なんとか逃げ切れた」
「大丈夫か?」
「お前に心配されるとはな‥‥‥まぁなんとか」
誰も追ってきていないことを確認し息を整える。
それにしても‥‥‥なぜか『対俺包囲網』が形成され、心休まる時がない。
まるで、長篠の戦いの鉄砲3段撃ちのようだ。
……… すまない、例えが悪かった。
「リン! お前一様神なんだから、いろいろできたりしないのか?」
「いろいろとは?」
「例えば‥‥‥こう人を自由に操ったりとか?」
自分で言っててなんだが、まだそういうのを完全に信じたわけじゃなく、それにそういう力があったりしたらと思うとつい疑問形になってしまった。
「ワシに今その力はない」
訊いたくせに、ホッとしている自分がいる。
「こちらにまで、力を及ぼしかねんからな。今は無向に預けておる」
‥‥‥む、こう?
よくわからんが、今力は使えないことはわかった。
最終手段がなくなった。
これからはもう強行突破しかない。
「由貴は好みのタイプ見つけたか?」
「‥‥‥いえ」
外見より中身だからな‥‥‥由貴は。
いや、知らんけど。
だから簡単には見つからないだろうとは思っていたが‥‥‥それでも少し期待してもいたんだがな。
………そんな簡単じゃないか。
「そーか‥‥‥」
優しい=お人好しなやつか?
うーん‥‥‥優しいってだけじゃなんとも探しにくい。
「えーっと‥‥‥由貴」
「はい?」
「好みのタイプの条件は『優しい』だけか? それに優しいってのは、自己犠牲のお人好しみたいなのか?」
「そうですね‥‥‥外見はあんまり‥‥‥。純粋で清らかな恋愛を経験させてくれる人がいいです」
ふむふむ‥‥‥不純な動機でなく、真面目なヤツっと。
「探してみるか?」
「お願いします」
俺の知っているやつで真面目で優しいやつか‥‥‥。
やはりアバウトすぎてわからん。
目ぼしいやつに心当たりがない。
それに、まだ一年で学校も始まったばかりだからな。学校のことはもちろん、それに生徒とのことを詳しく知るはずもない。
行き詰まって親友こと宮野の訊いてみたところ、1年に生徒のことに詳しい『データベース君』(聞いていて笑ってしまった)なる人物がいるとのことで、そいつの連絡先を訊いた。
「そいつは馬鹿にされることが嫌いらしいからな、気をつけろ」
と最後に忠告された。
皆バカにされるのは嫌いだと思うがな。
一年で生徒全員のことに詳しいって変じゃないかと思いながらも、頼るあてもないので連絡してみることにした。
自分で言ってて、吹き出しそうになるのを堪え
「えーっと‥‥‥そちらは通称データベース君ですか?」
と尋ねた。
「………学年、クラス、名前」
それがデータベースの第一声だった。
確かにまるで声がまるで機械音のソレだ。
「1年F組向井恭弥」
「‥‥‥向井か」
俺を知っているような口ぶりだ。
そういえば、なんか聞いたことのあるような声だ。
「俺のこと知っているのか?」
「1年では有名、その上同じクラス」
同じクラス、だから聞いたことのある声なのか。
「お前誰だ?」
「近藤‥‥‥学」
‥‥‥聞いたことない‥‥‥たぶん。
確かあんまり目立たないやつ‥‥‥だったと思う。
というか、名前はデータ君じゃないないんだな。
この星蓮高校はいろんな所の中学から構成されているが、大まかに分けると4つに分けられる。
北の安岐、東の藍峰、西の西部、南の志摩だ。
俺の通っていた北は自然の多い所だった。
たしか、西は荒くれ者が多い所だった気がする。
「それで用件はなんだ?」
忘れるところだった。
「この学校で、真面目で優しい男を探してるんだが‥‥‥」
と訊いたら
「お前はそっちの趣味か?………いや、でも婚約者や幼馴染みがいるか」
と、わけのわからないことをボソボソと言っていた。
「構わないが‥‥‥そんなこと訊いてどうするつもりだ?」
「うーん、ちょっとな。話せないこともないんだが‥‥‥」
「まぁいい、依頼主の目的には興味ないからな」
「‥‥‥助かる」
こいつはこいつで、目的もないのになぜ個人情報を集めているのか、気になる所ではあるが今はそんなことを考えている暇もない。
「それであてはまるやつはいるか?」
「該当するやつはいるが‥‥‥」
「いるが、なんだ?」
「やはり、目的がはっきりしないと選びようがない」
「‥‥‥目的か‥‥‥恋愛‥‥‥」
「やはり、そっちの趣味なのか?」
さっきから、そっちだとかこっちだとか何を言ってるんだろうか‥‥‥。
「いまさらだが、俺のことじゃないぞ」
「そうか‥‥‥」
なにかわからんがようやく理解したらしい。
「彼女持ちなどを抜いて‥‥‥他に条件はないのか?」
「他に‥‥‥」
由貴に顔を向けると
「他にですか? そーですね‥‥‥それじゃあ‥‥‥顔で」
「やっぱり最後は顔か‥‥‥」
「お主もなかなか男前じゃぞ」
「俺のことはいい」
「だって他にって言うから‥‥‥」
というか、性格優しくて顔イケメンってスペック高いな。
思わず、心の中でツッコミをいれてしまった。
結局、分かれた選択肢を選んでいけば自然とそういうことになるのか‥‥‥。
「で近藤、顔イケメンだそうだ」
「ちなみに女性はどのようなタイプだ?」
由貴を見て
「男が苦手なお嬢様って感じだ」
「‥‥‥了解した。それじゃあ候補を挙げるぞ」
「メモを用意する。ちょっとまってくれ‥‥‥いいぞ」
「バスケ部キャプテン、現生徒会書記、去年の青軍の太鼓、一昨年の文化祭のトリのベース‥‥‥etc。‥‥写メも送っておく」
去年や一昨年のことなんか知るわけがない。
それに、今生徒じゃないなら意味もない。
その上どっからそんな情報仕入れてくるのか、疑問が残るばかりである。
俺の心を読んだように忠告してきた。
「こっちのことは詮索するなよ」
たぶんほとんどのやつが訊いていることなんだろう。
「そういや、そいつの趣味とかはわからないのか?」
「それはわからない」
性格や彼女持ちとかはわかるのに‥‥‥変なやつだな。
それにしても本当あいつ何者なんだ?
「ちなみに言うまでもなく、優しいってのは人それぞれだからな。それと責任は一切とらないぞ!」
「あぁわかった。情報サンキュウな」
「いや、気にするな」
それじゃあ、これから恋人探しか‥‥‥。
どうするか‥‥‥直接行くかそれとも知り合いに頼むか‥‥‥。
深刻そうな顔をしていたのか、二人が心配そうに見ている。
「お主大丈夫か?」
「‥‥‥あぁ大丈夫だ」
それじゃあ行動を開始するか。




