あぶない夜会
夕食を鱈腹食べ、飲み (未成年はもちろんノンアルコールです)京料理を楽しんだ。
風呂もクラス別。
皆で入って余りあるくらいに大きく、湯上がりはもちろんコーヒー牛乳。
女子風呂に侵入しようとした猛者がいたらしいが、教師に捕まったらしい。
これも、修学旅行の定番である。
「………よし、準備はできたか?」
「「「「「おー」」」」」
「………お前ら、なにしてんの?」
「女子部屋に突入するぞ」
………バカなの?
さっき、捕まったバカがいたばかりなのに。
そのことを、知らないわけもないだろう。
「教師に捕まるのがオチだぞ」
「それは、女子風呂の件で聞いている」
「そのバカは、ただの考えなしだっただけだ」
「俺達は情報を集め、手段を模索した」
お前ら、暇なの?
「そして、1つの可能性を見つけたのだ!」
「先生達が交代する時に、少しのタイムラグがあることに」
「そこを突けば、目的を達成することができる」
………お前らも、十分バカだよ!
「じゃあ、お休み」
布団をかぶり、寝る準備に入る。
「そんな、1人だけいい奴ぶるなんて許されないぞ」
いい奴ぶってるわけではないんだがな。
無理矢理、布団を引き剥がされる。
「俺の布団………」
「向井、諦めろ」
「こういうのはな、団結力が大事なんだ」
そんな団結力、ゴミ箱に捨ててしまえ。
「話している内に時間が過ぎてしまうぞ」
「皆、行くぞ!」
「「「「「おーーー!」」」」」
「………おー」
途中までついて行って、途中で姿を消そう。
俺達の部屋は3F。
女子達の部屋は5Fにある。
皆、壁に背をつけ、足音を立てずに歩いている。
側から見ると、ただの犯罪者予備軍である。
言葉を交わさず、ジェスチャーだけで伝達している。
………どこの、特殊部隊だよ。
どうやら、本当に先生はいないようだ。
皆、ドンドン進んで行く。
「あの………」
「………ん?」
振り向いたら、そこに香がいた。
「恭ちゃん、なにしてるの?」
「シー」
口元に指を当て、確認してくる。
「うちのバカ共が、女子部屋に突入するんだと。
連れられて、ついて行くフリをな
香にバレたし、俺は部屋に戻って寝る」
部屋に戻ろうと、背を向ける。
「恭ちゃん、待って」
「………どうした?」
「少し、付き合ってほしいんだけど」
「いいけど」
「じゃあ、ついてきて」
言われた通り、香の後ろをついていく。
「香、どこに行くんだ?」
「秘密」
前を向いたまま、こちらを振り返ってくれない。
少し歩いてから、香が立ち止まる。
「ここだよ」
………ここ、女子部屋じゃないのか?
「あの、香さん?」
「どうしたの?」
「ここ、女子部屋じゃないんですか?」
「そうですよ」
よし、逃げよう。
逃げようと背を向けたら、そこには由貴やアメリアがいる。
「………2人共、なにしてんの?」
「恭弥さんが逃げように」
「挟み撃ちだよ」
いつの間にか、包囲網が形成されていたようだ。
男子の姿は既になく、狭まる包囲網。
もしや、逃げたのか?
それとも、既に侵入しているのか?
由貴から逃げられるとは思わないが、黙って捕まるわけにもいかない。
逃げるなら、香の方向かな。
意を決して、香の方に走る。
「恭ちゃん」
悪いが、話を聞いていられない。
香を避けて、そのまま走る。
俺は女子部屋に連れてこられている。
男子供は部屋にはいない。
それどころか、美奈や輪を含めた者以外部屋にはいない。
さっきは、香を避けるところまではよかった。
だが、まさかの行き止まりだったのである。
「それで、俺に何の用だ?」
拘束されているわけではないので、手足は自由だ。
あぐらをかいて座る。
「日頃の、恭ちゃんへの鬱憤を晴らそうかとね」
「鬱憤?」
「ここにいる皆そうだよ?」
美奈は、1人首を傾げている。
美奈は、皆には入らないようだな。
ただ、付き合わされただけか。
「それで、その鬱憤とやらは?」
「それはお主、ラブコメなのに全然恋愛は進まず、ギャグ要素が強くなっておるからじゃ」
それは、本当にごめんなさい。
「それに、ギャグ漫画は売れなくなったら、バトル物に移行するからね」
それは、バトルを入れろとのフリか?
「とにかく、私達は皆恭弥さんが好きなのに、恭弥さんは何もしてくれないから」
それ、美奈やアメリアも含まれるんですか?
というか、その恋愛云々は久しぶりに聞いたな。
完全に忘れていたよ。
興味ないわけじゃないが、そういうのは意識しないようにしてた。
「………それで?」
「キス」
美奈も入ってくるんですね。
いやいや、おかしいだろう。
いきなり、こんな展開。
ヒロインが突然ヤンデレ化したくらい、おかしいだろう。
これ、何もしなかったら、見せられない展開になるわけじゃないよな?
「あの………皆さん?」
「キスをしてください」
「由貴、お前には1回しただろう。それで………」
「恭ちゃん?」
「はい」
「正座」
「はい」
まずった。
思わず、口に出してしまった。
このこと知ってるのは、由貴と輪だけなの忘れてた。
「恭ちゃん、聞いてないよ?」
「ごめんなさい」
言い訳せずに、徹底的に謝っておこう。
「お主、ワシも聞いてないぞ」
勝手にのっかってきやがった。
「嘘つくな、お前は………」
「恭ちゃん」
「ごめんなさい」
輪のやつ。
これがわかっててやったな。
「恭ちゃん、由貴ちゃんにできたら、私にもできるよね?」
これは、キスを強制されているんだろうな。
「香」
「なに?」
香に近づき、肩を掴む。
「俺は、お前のことを家族のように思っている」
「………うん」
「だから、家族のように大好きなんだ。だから………」
「香?」
「………大好き」
「香さん?」
香は顔を赤くして、倒れる。
「………のぼせてますね」
………なにに?
皆、捕まえようとしていないし、今の内に、部屋から出るとしよう。
「恭弥さん、ごめんなさい」
「気にするな」
「でも、私の気持ちは本当ですよ」
「ありがとう」
そう言って、女子部屋を後にする。




