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言葉遊び




夏休みが終わり、学校が始まった。

だが、この学校は夏休み明けに林間学校がある。

そんなわけで、皆夏休み気分が抜けないのだ。


予定は1泊2日。

友人達や先生方と寝食を共にして、仲を深める。

そして、家族やこれからの人生について深く考える機会となる。


「皆、まず荷物を部屋に運んで」

「「「はい」」」


バスから降りて、皆振り分けられた部屋に入って行く。

部屋は基本4人組の名前順。

班は男女3人ずつの6人で1班である。

こちらは自由だ。

部屋は宮野と前川、森田の4人である。


1日目は地図を参考にチェックポイントを通過し、キーワードを集めてゴールを目指すというもの。

ちなみに班は宇田、宮野、由貴、香、アメリアだ。

例のごとく、今回も(りん)は不参加である。

ただの出不精である。


「じゃあ、行くか」

「そうだな」

「ポイントは5つですね」


準備ができた班から出発している。

俺達は最後の方のようだ。

地図を参考に歩き始める。


「山歩きは遠足以来だな」

「俺達は部活してるから大丈夫だけど、お前は大丈夫なのか?」

「無理そうだったら、俺を置いて先に行ってくれ」

「そんな覇気のない名言は初めてだぞ」

「そのくらいには、やる気がないということだな」


俺も(りん)と一緒に休めばよかった。

この平凡能力値に、何かを期待するのが間違いなのだ。


「チェックポイント、見えたよ」

「おー、来たか」


目の前には同じような2つの絵。

最初は、どうやら間違い探しのようだ。


「全問正解するまで、次に進めないぞ」


一見まったく同じように見えるが、所々違う。

ここは難なくクリア。

さすがに、最初から難問とはいかない。

だが間違いなく、徐々にレベルは上がっていくだろう。


次からは、皆さんも一緒に考えてください。


2つ目のチェックポイント


「3+8=6 これをマッチ棒1本動かして正しい式を作りなさい」


3つ目のチェックポイント


「ケンさんは、忙しい彼女を待つばかりの生活をしていました。そんな2人に訪れたものとは?」


4つ目のチェックポイント


「①私は秋になるとだんだん色が変わるよ

②形は手のひらに似ているよ

③真っ赤になる頃に、みんなが私を見て楽しんでくれるよ。

この3つの事が表すものとは、一体なんでしょうか?」


5つ目のチェックポイント


「ある人が、道で一万円札を拾った。

近くにいた人が集まってきて誰のだろうと話し始めたところ、一人の男が現れて「それは私のです」と言いながら、あるものを見せた。

すると、みんな納得してその人に一万円札を渡した。

その男はいったい何を見せたのだろう?」






………皆さんは、いくつ解りましたか?


では、正解です。


②ー3+8=5

③ケン怠期

④もみじ

⑤拾った一万円札の番号の前後の番号が印刷された新札



なんとか全て答え、キーワードを集め終える。


「あれは本当に高校生のレベルか?」

「中学生なら答えられるな」

「でも、最後のは難しかったぞ」


最後だけ、正直手こずった。

集めたキーワードは


「の、や、ま、え、う」


の5つだ。


「のやま?」

「これは並べ換えるんでしょうから………こうなのでは?」


「や、ま、の、う、え」


「いくらなんでも、安直じゃないか?」


「じゃあ………これは?」


「う、の、や、ま、え」


「うのやまってどこだよ」


しかも、正しく言うなら「へ」じゃないか?

この近くに「うのやま」なんてない。

よって「やまのうえ」という選択肢しかないのだ。

その安直なキーワードを元に、山の上を目指す。

今まで適当に歩いていたから、現在地はわからないが、上に行くならどこから行っても同じだろう。

流石に頂上はないだろうから、上の方に歩いていたら、何かあるだろう。




「………あそこじゃないか?」


宮野の視線の先には人がいる。


「やっと、ゴール」


近づいて行くと、先生が何人か座っている。


「お疲れ様」


お疲れなのは、先生達の方ですね。

最後のチームが来るまで、待ってないといけないんですね。


「このゴールの証の紙を持って、下りてくださいね」

「わかりました」


帰りは、下に真っ直ぐ進めばいいから楽チンである。


小屋に戻ったら、班別に外で食事を作る。

メニューは定番のカレーだ。


「こういうのって楽しいよな」

「そうだな」


由貴と香を中心に、皆がフォローする形だ。

ご飯も飯ごうで炊く、手の込みようだ。

男3人は釜に木をくべて、うちわなどで火を送る。

周りには、Tシャツでやる猛者もいた。

燃えても知らないぞ。

炊き上がりなんておしえてくれないから、火を調節しながら、時間を計らないといけない。

昔の人はこれをやっていたというから、恐れ入る。


辺りはカレー臭。

もちろん、いい匂いの方だ。


「………グー」


匂いにつられて、お腹の虫も鳴る。


「腹減ったー」

「あれだけ動いたらな」


出来上がった所は、もう食べ始めている。


「俺達はまだか⁉︎」

「ご飯次第だな」

「今は蒸らしてるから、そろそろ大丈夫なはず………」


飯ごうを釜から外し、蓋を開けてみる。


「うおおぉ」

「すげー」


中から、炊き上がった白いご飯が顔を出す。


「よし、食べよう」

「さぁ、食べよう」


気が早いな。


「カレーの方は大丈夫か?」

「大丈夫です」


皆の分、皿に盛り付ける。


「うまそー」

「よだれが止まらない」


よだれ落とすなよ。


「「「「「「いただきます」」」」」」

「美味い」

「美味しい」


ご飯は初挑戦の割に上手く出来上がっている。

カレーの方は2人で作ってるから、言わずもがなだ。

(りん)はこれを食べれなくて残念だな。


「「おかわり」」


食べるの早いな。


「後で腹痛くなっても、知らないからな」

「「大丈夫だ!」」


結局、2人は大量に食べ、作った分は全部なくなった。





その夜、トイレから聞こえる2人の叫び声がした。







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