狭間
「………ここどこ?」
さっきの場所と違い、建物の中が古びている。
「お主、気をつけろ」
輪が警戒してくる。
警戒する要素があったかな?
由貴………は怯えてるからダメか。
とりあえず、順路をなぞって歩く。
廊下もフローリングでなく、木。
建物も木のようだ。
前の学校よりも全体的に黒っぽく、より暗く見える。
歩いていると、こちらにもいくつかドアがあり、「1-1」と数字の羅列が書いてある。
………もしかして、ここも学校か?
「輪どうしたんだ?」
さっきから、周囲に気を配り、警戒している。
「もしかしたら、狭間に飛ばされたかもしらぬ」
「狭間?」
由貴が俺から手を離す。
先程の怯えた表情も消えている。
「こちらの世界では、こういう場所のように
表でも裏でもはい場所「狭間」が突然出現します。
その理由としては、一定の場所に人の色々な感情が集まり過ぎ、耐えきれず、新たな拠り所としてできるようです」
「………でも、俺は初めてだよな?」
「私がいましたから」
そこはちょっと得意気だな。
さっきとは完全に別人である。
「でも、今回はなんでだ?」
「たぶんですけど、学校の怪談にあるでしょう?
階段を上って行くと、異世界へと繋がる場所があるというのは」
「ワシも最初違和感はあったんじゃが、どうもハッキリしなくてな。
先程、ドアを開けた時にうっかり入ってしまったようじゃ」
うっかりってオイ。
「………すみません」
「まぁいい。どうしたら出れるんだ?」
「わからぬ」
「基本的に、何か理由があるものです。
だから、探しながら歩いてみましょう」
「さっきの新校舎だとして、ここは旧校舎?
これは関係あるのか?」
「あると思います」
順路に従って歩いているが、特にお化け屋敷要素がない。
あるのは薄暗く、ひんやりした空気くらいだ。
「だが、何故か順路はあるんだよな」
たぶん、この通り進めってことなんだろうけど。
順路に沿って歩いていく。
すると、体育館?のような広い場所に着く。
「………ダムダムダム」
誰もいないのだが、ボールの跳ねる音がする。
「2人共聞こえた?」
2人共、首を縦に振る。
「何かわかったか?」
2人共、首を横に振る。
この2人、本当に考えているのか?
さっきから、1言も話さないんだが。
次は、なぜか外に繋がっているようだ。
外に出てみると、無音、無風である。
外には墓地があり、その横に小さなブランコが1台。
「………キコ、キコ、キコ、キコ」
風はないのに、ブランコが揺れている。
「………クスクス………」
姿は見えないが、子供の笑い声がする。
「おーい、2人共」
「声について行ってみましょう」
2人共、真剣な顔をしている。
現状を把握できでないのは俺だけか?
俺にはわからないが、その声とやらは墓地に入って行くようだ。
由貴達の後ろをついて行く。
子供の声がしなくなり、立ち止まる。
「2人共、どうしたんだ?」
2人が指す方を見ると、1つの暮石がある。
そこには、
「やすらかにここに眠る」
と書いてある。
「たぶん、今お化け屋敷をしている場所は、元々本当に学校があったんでしょう。
そこに戦争などで、人が沢山亡くなって、色々な思念が集まっていたようです。
さっきの子は幼い時になくなり、もっと遊びたかったんでしょうね」
「………そうか」
よくわからないが、一件落着のようだ。
なら、もう戻れるな。
「前にも思ったが、浄化する方法みたいなのはないんだな」
「私の時もですが、本人が満足しないと逝けませんので。無理矢理逝かせても、後で遺恨を残すだけです」
もうここに来ることはないと思うので、掃除をすることにする。
道具はないので、あるもので。
花はその辺から摘んできた。
掃除を終え、花を添えて、手を合わせる。
「よし、行くか」
「そうですね」
「そうじゃな」
「それで、どうやって戻るだ?」
「「さぁ?」」
………いやいやいや。
この流れは、後戻るだけでしょう。
戻れないとかないよね?
「とりあえず、校舎の方に戻ってみましょう」
体育館を通り戻ろうとするが、古い校舎とは逆の方にも道がある。
「あっちは?」
「行ってみるのじゃ」
お化け屋敷というより、完全に探検である。
ドキドキなしのワクワクのみである。
道に沿って進んで来たが、途中で止まっている。
というか、なぜか鏡で塞がれている。
「そういえば、聞いたことがあります」
「何を?」
「4時44分に鏡の前に立つと、引き込まれるって」
………それ本当なのか?
というより、引き込まれてどこに行くんだ?
「今何時だ?」
「今は4時42分です。あ、43分になりました」
考える余裕もないということなのか。
戻る保証はないが、やってみる価値はあるか。
「手を繋げば、離れることはないんじゃないですか?」
俺の返答を待たずに、2人は手を繋いでくる。
「4時44時になりま………」
「した」
うん、確かに鏡に吸い込まれたようだが、真っ暗で何も見えない。
由貴は、中途半端に途切れた声を聞いたのでいるのはわかっている。
両手に手を握った感触もある。
「由貴、輪いるか?」
「います」
「ここにおるぞ」
握った手を振って、存在をアピールしてくる。
わかってるって。
「………戻ったのか?」
「どうじゃろうな」
「幸い、横に壁がありますので、それに沿って歩いてみましょう」
「それもそうだな」
2人共、壁に手をついてもらい、ゆっくり歩く。
歩いて行くと、視線の先に小さな光が見える。
「あれは………外か?」
「行ってみるのじゃ」
我先にと、手を引っ張り、走って行く。
俺と由貴は、引きずられた状態でついて行く。
「外じゃ!」
「お疲れ様でした」
外だと思って出てみれば、外は外でもお化け屋敷の外だった。
スタッフは、やっと外に出ることができたお客、としか思ってないようだ。
「楽しかったぞ」
「そうですね」
………全然楽しくないぞ。
涼しくなるどころか、少し熱いくらいだ
「また、行きたいのじゃ」
いえ、結構です。
リアルな幽霊体験は、もう飽き飽きである。
「お化け屋敷、楽しかったですか?」
ここに、リアルな幽霊いるのでもう十分です。




