お化け、ここにいます
「お化け屋敷」
それは夏の風物詩。
お化けの出そうな状況を作り出して、客に恐怖心を煽るために作られた施設。
映像や音響、からくり、役者などを駆使し、利用者に対し幽霊や怪物に対する恐怖を疑似体験させ、楽しませることを目的としている。
涼しくなるのは身体の反応らしい。
詳しくはWEBで!
今は大きなアミューズメントパークなどには、季節関係なくあったりする。
だが、大きな商業施設ではこの季節にお化け屋敷のイベントが開催されてる。
今日は、由貴や輪が行きたいということでやってきた。
アメリアは朝から出掛けている。
俺は思った。
「お前らも幽霊だよな?」
「私は恭弥さんの守護霊ですね」
「ワシは神である」
もう2人共、幽霊(仮)でいいじゃないか。
「なのに、お化け屋敷?」
「霊や神がお化け屋敷に来ては行けない、というのはないでじゃろう」
まぁ、確かに。
だが、参加者としてよりも、脅かし役の方がいいんじゃないか?
「ワシのような美少女に、誰が驚くか」
美少女はともかく、今の姿では迫力には欠けるな。
「変身みたいなのはできないのか?」
「できぬ」
それは残念。
「それじゃあ、行きましょうか」
「そうじゃな」
2人共、幽霊(仮)だからか、紛い物にあるのは恐怖でなく、興味らしい。
俺は涼しいければいいけどさ。
「では、行ってらっしゃいませ」
中に入っていく。
中は薄暗く、ひんやりしている。
目の前に教室のような所に「1-1」と書いてある。
舞台は、どうやら学校のようだ。
確かに、学校の怪談や七不思議みたなものはよく聞く。
うちの学校にも七不思議はある。
壁に矢印のマークがある。
どうやら、順路に従って、ゴールを目指すらしい。
「………パタパタパタ」
「ひっ」
由貴が驚いて、腕を掴んでくる。
輪は由貴を見て、腕を掴んできた。
そこは真似する必要ないぞ。
というか、2人共本物なのに、作りモノが怖いんだな。
よくわからん。
由貴や輪は、歩く時に足音を立てない。
立たないのかもしれないが。
だから、廊下を歩く音がするはずない。
「………パタパタパタ」
何かが通り過ぎだようだ。
だが、そこにはなにもない。
聞こえるのは音だけである。
音がする度に、由貴の肩がビクッと動く。
………奇妙だな。
音声だけ流しているのかな?
輪は1人神妙な顔をしている。
順路に従い歩く。
この教室に入れ、と指示されてある。
そこに入ってみると、大きな机に流しが添えつけてある。
調理室か?
だが、壁には標本、戸棚にはビーカーなどが入っている。
ということは、理科室か。
………だが、何も起きない。
帰ろうと出口を開けようとすると、横のカバーが外れ、人体模型が露わになる。
「んー」
驚きで声も出せないのか、それとも声を出さないようにした結果なのか不明である。
「よし、では次に行こう」
「あの、私トイレに」
お化け屋敷自体が広いからか、その辺はちゃんとしているようだ。
「あの、入口で待っててくださいね」
「わかったから、行ってこい」
由貴は、恐る恐るトイレに入っていく。
トイレには、誰もいないみたい。
早く出るために、1番手前に入ろうとしたけれど、
「修理中」
と書いてある。
仕方ないので、隣に入ろう。
「………カタン」
ビックリした。
私が扉を閉めた音だった。
お化け屋敷に行くとは言ったものの、怖くて楽しむどころではない。
涼しいけれど、今すぐ帰りたい気持ちで一杯だ。
「………カラカラカラカラ」
………アレ?
私、まだ紙取ってない。
目の前で回ってる様子もない。
「………トントン」
扉を叩く音がする。
「………トントン」
いえ、隣のトイレから叩いているみたい。
………隣?
さっき見た時は「修理中」って書いてあったはず。
………。
「きゃー」
そこからは、よく覚えていない。
いつの間にか、トイレを出て、恭弥さんを抱きしめていた。
………いい匂い。
じゃなかった、ちゃんと流したかな。
トイレで待っていると、由貴が叫び声を上げて、抱きついてくる。
怯えているし、聞かないでおこう。
古典的だと、トイレの花子さん的なのかな。
次は、教室の目の前に行くと、ピアノが鳴り出す。
「絶対に中を覗かないでください」
そう書いてあるが、これはフリだよな?
俺が考える間も無く、輪がドアを開ける。
ピアノには誰にも座っていない。
自動操作でもしているのか?
次は階段を上るように指示されている。
この場合、実際より1段多いとかありそうだな。
だか、階段が中々終わらない。
1段とかではないく、永遠と上に続いているのだ。
その階段を上り続けると、なぜか行き止まりになっている。
いや、正しくは行き止まりではない。
ドアが1つある。
だが、それしかない。
仕方ないので、入ってみる。
「………ここどこ?」




