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キャンプ

タイトル考えるのに疲れてきた今日この頃





香の父はキャンプ好きである。

たまに、家族でも行く。

そうなると、誘われることになる。


というわけで、今に至る。


「恭弥君、大丈夫かい?」

「大丈夫です」


只今、レンタカーの中。

メンバーは福田家+向井家居候である。

香母は実家に用があるとのことで、不参加である。

凄く行きたかったらしい。

その感じだと、凄く来てくれなくてよかった気がする。

自前には乗らないと、わざわざレンタルまでしてくれたのだ。


………なら、行くしかないよね?

最近、主人公には拒否権がないようです。

YES一択、またはどちらもYES。

それは選択肢がないのと同意です。


「おじさん、結構離れてるんですか?」

「それほどでもないよ」


と言いつつ、結構な距離走ってる気がする。


「富士山が綺麗に見える場所があってね」


富士山なんて、理由がなければわざわざ見に行かない。

記憶にないが、意外と初めてかな。

俺は助手席なので、おじさんの暇潰し相手。

女子は後ろでおしゃべり中のようだ。


たまになる沈黙って辛いよね?

何を話していいか、わからないのである。

ほとんど、おじさんに聞かれた事に答えてるだけだ。

それだと、話も広がらない。

後ろが話してることを考えたら、音楽という選択肢もな。

んー、ネタがない。

香の事を言うのは藪蛇な気がする。

居候組でも同じだよな。

キャンプに行くのだから、ここはキャンプの話で時間を稼ぐか。


「おじさんは、よくキャンプ行くんですか?」

「そうだね」

「家族皆でですか?」

「1人のことが多いかな」

「じゃあ、今日は珍しいんですね」

「こんなに多いのは初めてかもしれないな」


つ、続いた!


「えっと、楽しみですね」

「そうだね」


………終わった。

ごめんなさい、もう浮かびません。

前と後ろでは、世界が違うようである。

後ろ空いてるんだから、帰りは俺も後ろに乗ろうかな。

まだ着いてもいないのに、帰りのことを考えていたら目的地に着いたようだ。


「もとのはらキャンプ場」


「皆、着いたよ」


車を出ると、目の前は見渡す限り大草原。

同じ目的なのか、車も何台かある。

お目当の富士山は、残念ながら帽子を被っているようだ。


「………涼しい」


最初に家を出た時より、涼しいのだ。


「標高が高くて、空気が薄いからね」


知らぬ間に、意外と高い所まで来たようだ。

空気が普通より薄いということは、酸素も少ないのかな?


「呼吸は大丈夫なんですか?」

「高山病なんかになることはないから、大丈夫」


すごいな、香父。


「じゃあ、準備しようか」

「「「「はい」」」」


(りん)は学校では古風な言葉遣いだが、大人の前だと普通を装う。

理由は不明。


「水汲みは香と由貴ちゃん」

「私、薪割したい!」

「じゃあ、薪割りはアメリアちゃんで。(りん)ちゃんは手伝ってあげて」

「わかりました」

「僕と恭弥君で テントの準備をするから」


由貴はともかく、香は大丈夫かな?

あと、アメリア。

薪を木っ端微塵とかは止めてほしい。


「じゃあ、恭弥君手伝って」

「わかりました」

「とは言っても、僕がまず立てるから見てて」

「その後、恭弥にもう1つやってもらうよ」

「わかりました」


まずは、テントを広げる。

この小さな穴に長いポールをクロスに通す。

テントの4隅にあるピンを差し込む。

これで、テントが立ち上がる。

テントに付いてる10ヶ所のフックをポールに引っ掛ける。

4隅にこの釘みたいのを差し込み、地面に刺す。

風が強く吹いても大丈夫なのように、もう1枚上からシートを被せ、地面に固定し、フックを掛ける。


「こんな所かな」


思ったより、やる事多くないですか?

見てましたけど、意外な文書量。

言われるまま、香父に指示されるままに作業を行っていく。


「そこはこうじゃない、こうだ」


とかね。


なんとか、20分かけて、設営を完了させた。

これでも、簡単な方らしい。

でも、もっと簡単な物もあるらしい。


俺が準備している内に、皆作業を終えて、夕食の支度に取り掛かっていた。


「お疲れ様」

「ありがとう」


そこには、飲み物を持ったアメリアがいた。

珍しい。

普段は、そのポジションには由貴がいるんだが。


「アメリアは手伝わなくていいのか?」

「沢山いても邪魔だからね」

(りん)は?」

「あそこ」


アメリアの視線の先には、大の字で寝転んでいるバカの姿があった。

戦力外を言い渡され、やることがなかったんだな。


(りん)

「なんじゃ? 夕飯ができたのか?」

「いや、俺もやることがなくなって、寝転がりにな」


風が気持ちよく、上には空が広がっている。

この状況は寝れる。


(りん)、寝るなよ」

「お主じゃないから大丈夫」


おーい、瞼閉じかけてるぞ。


「寝たら、飯食えないぞ」


その言葉で、目が見開かれる。

現金なやつだな。


「焚火するよ」

「はい」


香父は台のような物を取り出した。


「それはなんですか?」

「ここは芝生が焼けるから、直火は禁止なんだ」


なら、その台の上でするわけだな。


「夕食できましたよ」


焚火で夕食を作ると思っていたが、なるほどガスコンロを持って来ていたわけか。


「「「「「「いただきます」」」」」」


こういう所で食べるご飯は、数倍美味しい。

夕食は終わり、片付け。

そして、皆空を眺めている。


「香達はそっちのテントを使って。恭弥君と私はこっちだ」

「「「わかりました」」」


自分が立てたテント、意外とちゃんとしてる。

夏だから、虫とかに気をつけないといけない。

こっちは2人だから、意外と広い。

後は寝るだけだ。

ゆっくりとした時間が流れる。

喉が渇いたので、水を飲む。


「恭弥君はさ、香のことどう思ってる?」


ブフー………。


「………はい?」


この人、突然何言ってんの?

思わず、マンガばりに口から水吹いちゃったじゃないか。


「いや、昔から君は香と仲がいいだろう」

「まぁ、幼馴染なので」

「幼馴染か。香も君の事を好いてるようだし」

「それは………雛が最初に見たのを親だと思うこと、と同じようなものでしょう」

「本当にそう思うかい?」

「………」

「すまない、1度聞いてみたくてね」


もしかして、それが目的のキャンプだったのか?

香のことは嫌いじゃないが、小さい時から一緒にいるから家族のようなものである。

家族に、そういう感情を向ける方が不自然だと思う。


「今のは忘れてくれ。おやすみ」

「………おやすみなさい」


背中を向けて、寝てしまった。


あー、モヤモヤする。


気温が上がってきたのか、暑さを感じて目を覚ます。

外に出てみると、まだ暗いままだ。

時刻はまだ4時過ぎだ。

そのまま椅子に座り、携帯を開く。

電波は飛んでる。

日の出は4時30頃みたいだ。

なら、このままこうしてよう。

辺りが明るくなってくる。

黒一色から、橙色の光が差し込んでくる。

富士山が顔を出す。


「………綺麗だな」

「そうだね」

「香!」


突然声がすると思ったら、香も後ろで見ていた。


………全然気づかなかった。


「しーっ。まだ、皆寝てるよ」

「わるい」

「恭ちゃん、なんでこっち見てくれないの?」

「日の出を見てるからな」


香が俺の目の前に立つ。

いや、富士山見えない。


「ねぇ、なんでこっちを見てくれないの?」


一旦、視線を合わせる。

そして、椅子を富士山の見える位置に移動する。


「お父さんに何か言われた?」

「………お父さん? 特に何も」

「嘘。恭ちゃん、嘘つく時1度疑問系で返す」

「………そうだっけ?」

「それに、返答するのにも妙な間がある。目が泳いでる。誤魔化す。黙る………」

「わかった、もういいから」


どれだけ、俺の癖を熟知してるんだよ。

怖いわ!


「別に大したことは言われてないよ」

「そう………ならいいけど」


いつの間にか、空は青く、大地は明るくなっている。


「香は俺に話があったのか?」

「………ううん。大丈夫」

「………そうか」

「そうだ! 恭ちゃん、帰りも助手席お願いね」

「は? いや、後ろ空いてるだろう」

「それだと、お父さん暇でしょ?」


いや、隣にいても暇な事に変わりないから。


「よろしくね」


先手を打たれてしまった。

そんなわけで、帰りも沈黙決定なのである。


チクショー!




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