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ウキウキビーチ




やって来ました、プール!

入場前から人が多い多い。

やっとこさ、入ることができたら、中も広い。

女性陣とは分かれて、1人男性更衣室へ。

更衣室も広いのに、空いてるロッカーが少ない。

プールに泳げないくらい人がいる、とかではないよな?

ここまで来て、泳がないのは無しだぞ。

せめて、涼しくなる夕方まではプールに浸っていよう。


プールの方へ入って行くと………人がいない。

まさかの貸切、と思って時期が僕にもありました。

もちろん、そんな運がいいわけなく、ただ、休憩で皆上がっていただけだった。

上げて落とすとはこのことだな。

この間に準備運動をしてしまう。

準備運動は大事だ。

怪我はもちろん、足が攣って溺れかけるなんて嫌だからな。


準備運動が終わったくらいで、由貴達が来た。

3人共、上は脱いで、水着だけになっている。

場内の視線が彼女達に向く。

その後、俺に向く。

そして、見つめられる、睨まれる、怒気を放たれる。

カップルで来ているのは、彼氏が彼女に怒られている。

そして、その怒りを視線で俺に飛ばしてくる。

完全な八つ当たりである。


………おかしいぞ?

プールに入ってないのに、もう寒い。


………風邪引いたかな?


「もう、休憩終わりみたいですよ」


皆、一斉にプールに入っていく。


「私達も入ろう!」

「アメリア、準備運動」


由貴の言葉も聞かず、プールに飛び込んで行く。


「飛び込みは危険ですので、おやめください」


危ないのはもちろんだが、視線が余計集まるので止めてほしい。

だが、飛び込み本人には聞こえておらず


「プール冷たいよ」


と大きなプールにご満悦だ。


「ワシらも行くぞ」

「走ると、あぶな」


(りん)が滑って転んだ。

言わんこっちゃない。


「プールサイドでは走らないでください」


次々と地雷を踏んでいきやがる。

怪我はしていないようだが、痛みはあるのか涙目になっている。


どう見ても、ただの子供だぞ。


(りん)痛いか?」

「この程度………痛くもないともないわ」


と余裕の表情で腕を組んでいる。

というわけで、膝ピンしておく。

おーい、表情崩れてるぞ。

日頃のストレスが少し解消した。

Sが1上昇した。


「由貴行くぞ」


由貴さんは安定でハプニングを起こしてくれないので、安心。


「ちょっと、待ってください」


俺を追いかけようと踏み出した足下には、水たまり。

その水たまりで足を滑らせ、振り向いた俺に覆いかぶさる形で倒れる。

ここまで、スローモーションでお送りしました。


「いたっ」


目の前は真っ暗になった。


………アレ? 死んだ?

いやいや、リアルにそんな設定はありません。


顔には、なにやら柔らかい物が載っている。

退けようと、手を動かす。

なにか柔らかい物を掴んだ。


「んっ」


そこで漏れる甘い声。

流れ出す汗。

顔をどけると、そこには馬乗りで顔を赤くした由貴がいる。

由貴、お前もか!


「ご、ごめんなさい」


慌てて抜け出し、プールへと逃げる。


「走るなって言ってんだろうが!」


俺だけ当たり強くないですか?


なんとか難を逃れ、アメリアと合流。

由貴は(りん)といるようだ。


「恭弥アレ行こう!」


アメリアが指差したのはウォータースライダーだ。

離れた所から見ても、結構な高さがある。


「俺は………いいかな」

「じゃあ、行こう」


そっちの「いい」じゃない。

YESじゃなくて、NOの方。


「いや、俺高い所苦手だから」

「そうか。じゃあ、行こう」


話聞いてねぇ。

アメリアに引っ張られるままに、ついて行く。

振り解こうとしたが、意外と力があってできなかった。

あっという間に着いてしまうわけで、並んでしまうわけで、逃げ出せなくしまうわけである。


「2人共ここに座ってください」


俺を逃さないようにか、アメリアが後ろに周り、腰を掴んでくる。


「おい、アメリア」


アメリアはいつも通り笑顔である。

が、当たってるから。


「しっかり、くっついてくださいね」

「………だから、アアアアァァァァァ」


俺の言葉が届く事はなかった。


スタートの合図はなく、

(聞こえていないだけ)


高い所から下る恐怖

(だだの高所恐怖症)


アメリアの叫び声

(だだのスピード狂)


そんなわけで、着水してプールに浮かんでいる。


「あー、楽しかった。恭弥、もう1回行こう!」


流れるプールよ、このまま俺をアメリアの手の届かない所まで連れて行ってくれ。


「ワシもやる!」


ここで、野生の(りん)が現れた。

………どうする?

(りん)の身代わり。

アメリアに効果抜群だ。


(りん)行こう!」


アメリアは(りん)を連れて行った。


あの恐怖体験を2度も経験しなくてよかった。


「恭弥さん、大丈夫ですか?」

「なんとかな」

「アメリア達はいっちゃいましたし、私達も泳ぎましょう」

「そうだな」


今の内に、ここから離れておこう。


「恭弥さん」

「どうした?」

「さっきはすみませんでした」

「気にしなくていいから」


俺はもう気にしていない。

蚊に刺されたとでも思って、忘れるに限る。


「私、こういうプール初めてで、少し舞い上がってしまいました」

「………そうか」


由貴の過去の事はあまり知らないが、色々苦労があったようだ。


「こうやって、好きな人とプールに来れるって嬉しいですね」


久しぶりに言われたな。

久しぶりすぎて、忘れていたぞ。

普段の生活で、そういうことを言わないからな。


「それは………よかったな」

「よかったです」


2人の間に沈黙が流れる。


………気まずい。


由貴がソッと目を瞑る。

その仕草はもしかして………


「お主ら、何をしておる」


突然の(りん)の声に我に帰る。


「残念、もう少しだったのですが」


由貴はイタズラが成功したような顔をしている。

いや、可愛いけど。


………油断した。


「ワシも混ぜんか!」


そういうことじゃない。


「なら、私もー」


なぜ、アメリアも混ざろうとする。


「じゃあ、皆一緒に」


「だから、なぜそうなる」


そんな、プールの出来事。




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