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多数決の原理




アメリアは普段から本を読んでいる。

または、アニメかゲームだ。

持ち運びという点で、(マンガ)が多いのは致し方ない。

………それでも、これはないだろう。


「アメリア」

「はい?」

「これは学校用のカバンだよな?」

「そうですよ?」

「なんで………なんで、これしか入ってないんだ!」



今の状況を説明しよう。

ここ星蓮高校では、定期的に服装検査、手荷物検査がある。

校則自体はそれほど厳しくない。

携帯やゲーム、音楽プレイヤーを持って来ても問題はない。

もちろん、マンガも問題ない。

アメリアが手荷物検査に引っかかり、ホームステイ先という理由で、俺が保護者代行として呼ばれた。


で、バックの中身を見たのだが、教科書が入ってない。

そこはまぁ今は触れない。

マンガが入っている。

そこも問題ない。



………………………

マンガが入っている。

マンガが入っている。

マンガが入っている。

マンガが入っている。

マンガが入っている。

マンガが入っている。

………………………



「マンガしか入ってないじゃないか!」

「お弁当も入ってますよ?」


そういうことを、言いたいんじゃないんだ。

なんで、バックの9割がマンガで占められているんだ?


「………教科書は?」

「後ろのロッカーと机に入ってます」


確かに、ロッカーと机に教科書を置いてもいいとなってるけども、マンガ入れるためじゃないから。


「アメリアさん」

「はい」

「なんで、マンガ?」

「読みたくて」

「………」

「読みたくて」

「いや、聞こえてるよ」


アメリアがこんなアホだとは知らなかった。

頭は良く、勉強できるみたいだが、まさか全ての教科書を置き勉していたとは。

どうやって勉強しているか、後で聞いおこう。

もう、俺は知らん。

後は先生から、注意でもなんでもしてもらおう。


「………没収だね」


先生ちょっと待って。

これ俺のだから。

没収されても、痛むのは俺の心だけだから。


「いいですよ」


お前はよくても、俺がよくない。

そもそも、簡単に渡せる物なら持って来るな。


「先生、俺のマンガなので、別のにしてもらっていいですか?」


「………わかった」


なんとか、俺の心は守れた。


「じゃあ、2人共反省文ね」


まさかの実害がきた。


「………それなら、マンガ没収で」

「2人共、反省文ね」

「………先生、なんで俺まで」

「保護者不行き届きだよ」


それ以上の理由はなく、あっても答えてくれないんですね。

新学期早々、なんて災難だ。






「すみません、私のせいで」

「注意してなかった俺も悪い」


俺達は、例の反省文を書いているところだ。


よく考えたんだか、やっぱり俺悪くないと思う。

バックに9割マンガ入れて、学校行くなんて思わないからな。

だが、言われてしまったから、やって帰るしかない。


「アメリアはどうやって、勉強してるんだ?」

「普通に授業受けてですよ?」

「………それだけ?」

「はい、何か変ですか?」


これが頭の違いか。

それができるのは、ごく一部だけだ。

俺なんて、いくらやっても身に付かないないんだぞ。


………自分不器用なので。


「マンガがダメだからといって、ゲームパンパンに入れてくるなよ!」

「わかってますよ」


なんで、そこで顔を背ける。

さては、やろうとしてたな?

なんで、コイツが頭いいのかよくわからん。

いや、こういうのが生き方の上手い人間というのか。


「アメリア、終わったか?」

「私は既に終わっていますよ」


手が動いてないと思ったら、俺を待ってたんですね。

ごめんなさい。


2人分の反省文を提出し、下校する。






「アメリア、日本で行きたい所あるか?」

「そうですね………、秋葉原行きたいです!」

「そうだな。秋葉原だと、この前言っていた大きな本屋もあるからいいんじゃないか」


アメリアが小躍りしている。

嬉しいのはわかったから、止めろ。

通行人の邪魔になる。


「じゃあ、明日土曜だし、行ってみるか」

「本当ですか⁉︎ ヤッター」


通行人が、アメリアを煩わしそうに見る。


「す、すみません」


………だから、言ったのに。






やっと家に着いた。

小躍りするアメリアに合わせて歩いたら、いつもより時間がかかってしまった。


「今日のアメリアは、いつもよりテンション高いですね」


料理をしていたのか、キッチンから由貴が出てくる。


「明日出掛けることになったんです!」

「………恭弥さん、聞いてないですよ?」


いや、言ってないからな。


「今から言おうとしていたんだよ」


わざわざ、2人で行く必要はない。

アメリアのお守りは必要だ。

頑張れ、守護霊。

それが仕事だろう?


「というわけで、明日秋葉原に行きます!」


アメリア、お前が言うのか。


「私も行きます」

「ワシもじゃ」

「………思ったんだが、2人がいくなら俺行かなくてよくないか?」

「ダメですよ」

「ダメじゃな」

「恭弥も行きましょう」


多数決により負けてしまった。

たが、少数意見の尊重も大事なんだぞ。

テンションが高いのは由貴、お前も同じだぞ。






「恭弥、買い物日和ですね!」


そうだね、雲1つない良い天気だね。


「こういう日は、日向ぼっこして寝たいよね」

「恭弥さん、ダメですよ」


わかっておりますとも。

だから泣く泣く、着替えを済ませ、玄関に至ってるわけですよ。


「あれ(りん)は?」

「朝食食べて、部屋に戻ったと思うんですが」


そう言って、由貴は(りん)を呼びに行った。


「連れて来ました」


だが、(りん)の姿は見えない。


由貴が後ろを向くと、背中で船を漕いでいる(りん)の姿がある。


「………楽しみで、昨日眠れなかったみたいです」


遠足楽しみで、眠れない子供か!


「電車で遠出するのは初めてですからね」


遠出という距離ではないが、確かに初めてか。

そういえば、電車に乗せたこともないな。


途中で勝手に起きるだろう。

行きは寝てても、帰りは起きてるだろう。


「とりあえず、行くぞ」

「おー!」

「わかりました」




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