QED
…ギャグ色強くなってきましたね
…気のせいかな?
おはようございます、由貴です。
昨日から隠世に来ております。
ですが、朝起きたら恭弥さんの姿はなく、宿の方に聞いても知らないようでした。
昨日あれだけ、離れないでくださいと言ったのに。
恭弥さんになにかあったら、死んでも死にきれませんよ。
既に死んでるんですけどね。
私は恭弥さんの守護霊です。
そのため、主の場所はわかるはずなのですが、わかりません。
これはどういうことでしょうか?
なにかの陰謀でしょうか?
どこかの秘密機関による工作でしょうか?
見つけたら、ただじゃすみませんよ。
覚悟していてくださいね!
というわけで、物語スタートです。
「………ポチャン、ポチャン」
水の音で目を覚ます。
身体が動かないと思ったら、縄で縛られているようだ。
由貴にそんな性癖があるとは思わないが。
周りを見ると、宿の部屋ではないようだ。
石に覆われていて、一面だけは鉄格子のようなもので囲まれている。
檻のようなものか?
ということは、由貴の仕業ではないわけだ。
………少し安心した。
だが、これは誘拐ということか?
安心するのはまだ早かったか。
いや、どちらにせよ由貴には怒られるな。
飯抜きくらいは、覚悟した方がよさそうだ。
この姿じゃどうしようもないな。
タイミングよく、ポケットにナイフなんてあるわけ………なかった。
まぁ、そうだよな。
この世は、ご都合主義で上手くいくようにはできていないのだ。
目の前には、同じような檻に女の子が捕まっている。
監視してる人はいないようだ。
「おーい」
よし、声は出る。
女の子の反応はない。
体育座りのような格好で、顔を伏せている。
寝ているのかな?
「おーい」
顔を上げて、下げた。
………オイ。
「お兄さん、誰?」
「俺は向井恭弥。君は?」
「天野美奈」
「よろしく」
冷静に考えて、なんで自己紹介?
まぁ、いいけどさ。
「美奈はなんでここに?」
「わからない」
この子も誘拐されたんだな。
ということは、他にもいるかもしれない。
「匂う」
思わず、身体の匂いを嗅ぐ。
確かに、昨日風呂に入ってないけど、わかる程匂うかな?
「ちがう」
どういうことだ?
「人間」
俺を指して、答える。
でも、匂いでわかるものなんだな。
「うん、ちょっと理由があって。俺は普通の人間なんだ」
「………そう」
興味なさそうだな。
意外と力を欲してるのは、ごく一部だけかもしれない。
それか、一般的に知られていないかだな。
「そういえば、美奈はここにどのくらいいるんだ?」
「さぁ?」
タイムリミットはそう長くないだろう。
見た感じ、縄は普通のもののようだ。
摩擦で解けないかな?
鉄格子に近づき、縄を擦りつけてみる。
少し、擦れてるような気はする。
時間はかかるかもしれないが、いけそうだな。
いや、待て。
縄を外したとして、鉄格子の錠はどうする。
それも、擦って削れなくはないだろうが、時間がかかりすぎるな。
窮屈だし、とりあえず、縄を外してしまおう。
「美奈は怖くないのか?」
「………別に」
声に抑揚がないが大丈夫だろうか。
それに、先程からいやに冷静だ。
………怖くないのだろうか?
「なにしてるの?」
「縄を外そうとしてる」
なぜか、さっきからお兄さん呼びが定着している。
自己紹介の意味あったか?
ちなみに、俺に妹はいない。
「でれない」
「それは………やりながら考えてる」
もちろん、考えてる程の頭は持っていない。
だから、今は必死で縄の方をなんとかしているのだ。
「………コツ、コツ、コツ、コツ」
こちらに誰か歩いてくるようだ。
そのまま、俺の目の前で止まる。
「におうな、お前」
それはさっき聞いた。
「お前からは芳しい香りがする」
すいません、俺にそっちの気はありません。
危険を感じるので、それ以上近づかないでください。
「フフン」
奇妙な笑い声はやめてください。
あーたべられる。
初めては、女の子がよかったな。
………そして、錠が開けられた。
今日、1枚の花弁が散った。
現在、奪った鍵で美奈の檻を開けている。
話が飛んでないかって?
大丈夫です。
そこはもうカットしましたので、このままいきたいと思います。
………え?ダメ?
そこは、気にしたら負けだよ。
大丈夫、きっと想い込みは力になる
。
………仕方ないな。
では、回想シーンどうぞ。
「って、そんなわけにいくか!」
「?」
相手は何も持ってない。
こちらの手には縄。
もちろん、千切れた所は補強してある。
まずは、足を引っ掛けて転ばせます。
足が下につく前に縄を引っ掛けてから、結びます。
相手に馬乗りになり、後ろ手で結びます。
そして檻に放り込み、鍵を掛けます。
「QED!」
あれ?
使いどころ違う?
そんなの気にしません。
そんな実力どこに隠してたかって?
そこはほら、男の子の秘密ですとも。
「大丈夫?」
「俺は大丈夫だぞ」
「………違う」
何か言いたそうたが、今は後にしてくれ。
閉じ込められていた場所は暗いが、見えないほどじゃない。
人の気配はしないようだ。
「美奈、人の気配するか?」
「ない」
幽霊に気配があるかは定かではないが、同じ幽霊の方がわかるだろう。
「こっち」
美奈が先導してくれるようだ。
「わかるのか?」
「たぶん」
相変わらず返答は薄いが、闇雲に動くよりはいい。
美奈の後ろをついて行く。
「とまって」
手で行く手を制す。
微かに、人の声がするな。
途切れ途切れで、内容はよく聞き取れない。
そこを静かに通り過ぎる。
「もう少し」
ようやく、出口のようだ。
檻に放り込んだ人間から拝借した短剣はある。
が、出口に敵がいた場合、これで応戦できるか。
………難しいだろうな。
誰もいないことを願おう。
「ついた」
人の気配はしない。
「出口周辺に敵はいるか?」
その問いに、美奈は首を横に振る。
それじゃあ今の内に、さっさと抜け出してしまおう。
美奈がそっと扉を開ける。
ずっと暗い場所にいたから、目が慣れてない。
だんだん光に目が慣れてきた。
「………ここどこ?」
そこは異世界の海?だった。




