気づいたら憑かれてました
とりあえず、好きなように書いてみましたその1。
ちなみに、今の所その5まであります。
まったくの初めてなので、拙い文章かと思いますが、どうぞお楽しみください
普通ってのはいいもんだ。
何も変わらず何も起きず、ただただ平凡な日々。
そんな日々をつまらないと思うなんてのは愚かってものだ。
何か起きてから後悔したってもう旧には戻れやしない。
俺は向井恭弥15歳、今日から普通の高校生………のはずなんだが、今日を境に人生が変わる。
今日もいつもと変わらず平凡な朝なんかではなく、新しい朝だ。
今日から高校生になった俺、向井恭弥15歳は入学式へ向かっていたのだが………。
高校の入学式へ向かう途中、目の前で事故が起こった。
なぜかその時の光景が全てはっきりと目に映った。
「救急車! 救急車!」
と叫ぶ周りの人達。
悲鳴を上げる少女。
周囲に集まり始めた野次馬。
事故の加害者であろう顔を青ざめた車の運転手。
そして車に轢かれている高校生位の少女。
それを見た時、その少女が血だらけでこちらに向かってくるのが視えた。
その少女が
「………を………をおし………て」
と、何か俺に求めるように口をパクパクと開閉させていた。
そして、俺を死に呼び込もうというのかオイデオイデと手をゆらす。
「………か………か」
なにかを呼ぶ声。
………そこで意識が途切れた。
真っ暗な闇の中、一人の少女が闇夜を舞う蛍のようにボンヤリと光を放ちこちらに近づいてくる。
だが、近づいてくるとだんだんハッキリ見えてくる。
その少女は血だらけで、俺に助けを求めるように手を伸ばす。
「………た………げて」
手で顔を拭うと血が………。
そこで目が覚めた。
………今のは夢だったのか!?
俺は確かに家を出たはず。
そう思って身体を起こすと、知らない所にいた。
ベットに寝かされていたようだ。
ん? ………ここはどこだ?
………家ではない。
俺の部屋はこんな風にカーテンに囲まれていない。
不思議に思っていると、カーテンが開けられ、白衣の女性が入ってきた。
「あんた誰だ?」
「診てもらった人に対して『あんた』はないでしょう」
この人はあれか………世に言うナース!…‥‥のコスプレ!?
「診て………ここは病院か!?」
にしては、小さい気が、
「いや、違うわよ」
「じゃあここはどこだ?………まさか天国!?」
はぁ………苦節15年彼女もできず、前科も未だない俺がこんな早くに逝っちまうとは。
………父さん、母さんごめんよ。
こんな親不孝な俺で。
やべ………、あまりのアホさに涙も出ない。
………というか、未だに死を実感できない。
「俺………死んだんだな」
「そんなわけないでしょ!ここは星蓮高校の保健室よ」
………なんだ、俺死んだわけじゃないんだな。
一安心しつつ、馬鹿な妄想してたことに苦笑いする。
保健室………ということはこの人は先生か、と思い口調が丁寧になる。
「なんで俺はこんな所に?」
「覚えていないの?」
そういえば、今日から高校生で家から高校に向かってた気が………。
………それで、どうしたんだっけ?
「夢か現実かはわからないけど、変な夢を見た気がします。」
「………どんな?」
………どんな夢だっただろうか。
思い出そうとすると頭が痛む。
頭を手で支えていると、
「頭………痛むの?」
「はい………、思いだそうとすると………」
「無理に思い出さない方がいいわ」
ちなみに聞いた話によると、目の前で衝突事故が起こったそうだ。
その事故に遭遇した俺は気を失ったようだ。
まったく情けない話だ。
部活に入ってないとはいえ、皆勤賞を毎度とるくらいには健康なのに。
俺の心の内を悟ったように
「仕方ないわ、目の前で事故が起きたんですもの………」
その事故は結構酷かったみたいだ。
………ッツ!
………思い出そうとすると起こるこの痛みはなんだ?
「そういえば………、どうして俺はここに?」
「たまたま通りかかった私が、うちの高校の制服を着ている君を見て、ここまで運んだってわけ。わかる?」
わかると訊かれても、覚えていないのだからわかるはずもない。
でも、この人のおかげで助かったわけか。
まぁ、ある意味運がよかったわけか。
「そうですか、ありがとうございました」
「どういたしまして」
「そういえば………入学式!」
ホッとして今日の目的を思い出す。
………今日が初日なのにいきなりサボりか。
俺の高校生活が………、夢の高校生活が………。
………いきなり躓いて、友達とかできなかったらどうしよう。
絶対うく。
初日からいきなり不安要素盛り沢山だな。
………まじで凹む。
「入学式はもう終わったわよ。ちゃんと連絡はしておいたわ。それと説明もね」
「すいません、いろいろと」
そう言って、欠伸をする。
その時、ガラガラと保健室のドアが開き見知った顔が入ってくる。
「よっす!大丈夫か?」
「大丈夫?」
「お前ら、どうしてここに?」
「連絡があってな」
「私がしておいたの、一様あなたの家族に」
ということは、そこからこの二人にも伝わったわけか。
幸か不幸か。
高身長で、スポーツ抜群の親友宮野高次と家がご近所さんで所謂幼馴染の福田香の二人に。
こいつらとは長い付き合いになる。
それで親も知ってるわけだ。
まぁ、腐れ縁ってやつだな。
ちなみに、俺は全て平均というある意味どこにでもいる平凡な少年である。
勿論俺は不幸体質ではないし、特殊能力を持っているわけではない。
………この日までは。
「そういう日常ストーリーなのである!」
………たぶん。
「………いきなりお前何言ってんの?」
「悪い、気のせいだ。それで、入学式は終わったのか?」
「終わったよ。つまらない話が長々と………。もう、聞き飽きた」
まぁ、入学式は基本的にそんなものだろう。
別段なにか特別なことがあるわけでももなく。
かろうじてあるとすれば………クラス発表くらいか。
「クラスどうだった?」
「俺らは4年間同じクラスだぞ。またよろしくな!」
「………俺はお前と一生離れられないのか」
「私たちは別れられない運命なんだよ!」
「なんで悲しそうなんだよ!それになんだそのセリフは?まぁ、初日行ってないんだから知り合いがいた方がいいだろう」
もしかして………このクラスわけは意図的なものか?
………そんなわけないか。
また、同じクラスなんだな。
思わず、苦笑してる自分がいる。
「具合は?」
「もう大丈夫」
「それじゃあ帰るとしますか」
「私は買い物があるから」
そう言って香は先に帰る。
いつものごとく、夕食の買い出しか。
「俺達も帰るか」
「そうだな、寝てたから頭もスッキリしているし」
でもなんだろう、この言いようのないモヤモヤしたものは。
倒れる前、何があったんだ?
………何か忘れている気がする。
なんだろう………、なにかとても大切なことの気がする。
………なにかに視られている気がした。
もう、校門の近くまできていた。
校門には星蓮高校と刻んである。
星蓮高校………学力平均で部活動などが盛んないたって普通のどこにでもある高校だ。
明日から俺が通う学校でもある。
ふと、なにかの気配がして後ろを振り返る。
そこには見たことのない黒髪の少女が………
「おい宮野、あれ!」
そう言って指を指すが
「ん? どうした?」
振り返るとそこには誰もいなかった。
「あれ!? 今さっき、そこに………」
「どうかしたのか?」
宮野が訝しげな表情で俺をみている。
「さっきそこに黒髪の少女がいたんだよ」
「幻でも見たんじゃないのか?」
「幻………」
………そんなはずは。
目を擦り、再度確認するが………誰もいない。
「おいおい、どうしたんだ? 大丈夫か?」
「いや、わるい。気のせいだったみたいだ」
幽霊なんてものがこの世にいるわけがない。
「ついにお前の欲求不満も幻を出現させるに至ったか!」
そう言ってワハハハと爆笑している。
俺も一緒になって苦笑いする。
振り返ると、またそこには見たことのない黒髪の少女が………、目を擦ってもう一度よく見ると………やっぱりなにもいなかった。
この後から俺は不運なことが度々起こり始める。
道を歩けば車に轢かれそうになり、学校で飲み物を買おうと自販機に行くと都合よく売り切れだったり、授業中居眠りをしていれば必ず教師に注意された。
…アレ?後半当たり前じゃね?と思ったキミ!
ふっふっふ、私はな今まで寝て授業をやり過ごしてきたスペシャリストなのだ。
ハイ、今そこのアホだろうと思ったキミ!
天才とはな、1%の霊感と99%の努力によって生まれるのだ。
わかったか!ドヤ!
ちなみに、俺はとある主人公のごとき不幸体質的人間ではない。
ごく普通の人間だ。
今日もそしてこれからも、何一つ変わらずこんな平凡で退屈な毎日が過ぎていくのだと思った。
けれど、この時既に俺の人生は変わっていたのかもしれない。
安寧な生活から騒然たるものへ。




