90 不運な勇者
続きです。短めにして頻度をあげようかなと思います。
騎士に案内された豪華な一人部屋に置いてある大きなベッドに横たわりながら、この世界に来る前にクラスメイト全員で受けたチュートリアルを思い出す。
まずここは僕達がいた世界のゲームや小説の舞台で描かれているものとよく似ている剣と魔法を使って魔物を倒し、冒険するファンタジーな世界。しかもそこに、RPGゲームのようなレベルと言う概念が存在するハイブリッドな世界だ。
そこで僕達はゲームなどのお約束であるラスボス、魔王を倒すために召喚された勇者という設定になっているらしい。
なんで成人にもなってない学生を選んだのか分からないけど。
次にRPGゲームでお馴染みのレベル上げの仕方だ。この世界でのレベルアップの条件は単純で、魔物を倒すや魔法の訓練をするなどといった行動をすると、それに見合った経験値が手に入り、一定数溜まるとレベルが上がる仕組みになっている。
レベルが上がるとステータスが上昇し、新しい魔法を獲得することが出来るみたい。しかも行動に人よってはステータスの伸びが変化したり、獲得する魔法も変わってくるそうだ。
その他にも色々とあったけど、一番僕が気になっているのはレベル100で解放される進化という項目だ。詳しい条件までは分からなかったけど、その気になればいずれエルフや獣人、魔人にも進化することが出来るみたい。
翼のようなものがある種に進化すれば、空を自由に飛び回り人間では絶対に経験できない事が出来るとか最高だと思う。
あぁー、早くレベル上げしたい。でも、魔法のチュートリアルを受けている最中にここに来たから、全然使い方が分からないんだよな。ステータスにも魔法なしって出てるからどうにかしないと。
お決まりのスライムみたいな魔物がいれば物理でも倒せそうだけど、動物系の魔物だと僕には無理そうだなぁ。運動苦手だし。それにグロい系もちょっと勘弁して欲しい。
まぁ、あれこれ考えても意味無いし今はとりあえず流れに身を任せていればいいや。
……寝よ。
この時の僕は何も知らない子供だった。
◇
「見つけたか!?」
「あぁ、森の方に逃げて行く姿を見たぞ!」
「良し! 追いかけるぞ! 千変万化を確保したとなれば、一攫千金も夢じゃ無いぜ!!」
僕は何処かも分からない森の中を走っていた。
『そのまま真っ直ぐ進んで。あ、右に避けて!』
「うぉい!! あぁ、僕の服が……」
『後で綺麗にしてあげるから、今は気にせず走って!』
「あぁぁ! もう嫌だぁぁ!! 何で僕だけがこんな目に」
『もう! 大声出さないの。追っ手に気づかれるでしょ』
どう言う因果か、僕は何故か勇者から犯罪者にジョブチェンジしていた。
鏡太陽 レベル35 人間
HP 560
MP 750
STR 30
INT 100
VIT 50
AGI 150
DEX 120
魔法 眷属召喚
残機 3