89 呼び出された愚者達
遅くなりました。三章始まります。
「おぉ、成功だ! ようこそ我らが世界へ。歓迎いたしますぞ、異世界の勇者の皆様」
勇者なんてRPGゲームでしか言われそうにない台詞だと僕、鏡太陽は回らない頭でぼんやりと思う。ついでに、外国語なのに何故理解出来ているのだろうとも。
「ここは何処……」
「えっ、何? まじ?」
「はっ? えっ? はぁ?」
僕と一緒にいたクラスメイト達も、急に切り替わった今の状況を理解出来ていないみたいで狼狽えていた。
さっきまでチュートリアルをやっていたはずなのに。
辺りを見渡すとさっきまでいた謎の空間と違って、机や椅子に黒板は見る影もなく消え去り、謁見場のような場所に僕達はいた。目の前には如何にもな格好をして椅子に座るおっさんがこちらを見てはしゃいでいて、壁際にはこれまたあれな騎士様が立ち並んでじっとこちらを見ている。
もしかしてあれの言っていた事が本当だったとしたら……ここが所謂最初の間になるのかな? オープニングソングとかあれば分かりやすいのに。
「やはり記録書の通り、召喚して間もない状態では勇者殿達も混乱しているようだな。話しは後にして、今はゆっくりと休むが良い」
僕達に目の前のお偉いさんの人がそう言うと、横で待機していた騎士達ががぞろぞろと近寄ってくる。ふむふむ、きっとこれはテンプレートってやつだ。
「勇者であらせられる皆様には、各個人にそれぞれお部屋をご用意させていただいております。我々がご案内いたしますので、よろしくお願いします」
持て成すように近づいてきた騎士様達は全員イケメン、美女でアルカイックスマイルを向けられたクラスメイト達はこんな時でも色めき立つ。
でもまぁ、混乱はしていても切羽詰まっている訳ではないから、仕方ないのかもしれない。
「とりあえずここは言う通りについて行こう。皆んなもそれで良いよね?」
「良いんじゃね? ここで突っ立ってるのもあれだし」
「意義なーし」
「てか、テンション上がってきたわ!」
クラスのリーダー的存在の人がパパッと指揮をとると、それに周りが賛同する。見慣れた光景だ。それに僕もいつも通り身を任せて、皆んなと一緒に流されていく。
上質な絨毯
高価な花瓶
高名な画家の絵画
騎士達に案内されながら周りを見ていると、突然頭の中に目に入った物の詳細が浮かび上がる。例えるならゲームでアイテムをクリックした時に出てくるウィンドウみたいなものだ。
妙に手抜き感は否めないが、やっぱりこの世界はあれの言っていた通りの場所みたいだ。くふふ、これから僕の英雄譚が始まると思うと、どうしても口元が緩んでしまう。
近衛兵 レベル??
僕はどれだけレベルを上げられるかなぁ。
鏡太陽 レベル1 人間
HP 200
MP 100
STR 10
INT 10
VIT 10
AGI 10
DEX 10
魔法 なし
残機 3




