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75 目的

続きです。

「さてさて、光栄にも選ばれましたエミルちゃん。なぜ貴女は自分が選ばれた分かりますか?」


身体が痺れて頭に靄ががかったようで蓄積魔法を上手く維持出来ない。ただのドレスが俺にとって拘束具のように感じる。


「知らない」

「だよねぇ、知るわけないよね。むしろ知ってたらびっくりだよ」


女性の高い声が頭に響いてガンガンする。もっと静かに喋って欲しい。


「何が目的」

「んーとね。私の目的は、ここでエミルちゃんとお話しする事かなぁ」

「お前と話す事は無い」


意味が分からない。俺と話すだけなら道化の救済者を名乗る必要もないし、わざわざ王様と歓談している時に接触しなくてもいいはずだ。


「まま、聞いてよ。私達の活動目的とか、エミルちゃんを誘う理由とか色々あるんだから」


やばい、久しぶりの生身で座ってるだけなのに、もうしんどくなってきた。たぶん打たれたのは魔力抑制剤だと思うけど、それのせいで余計に身体が怠い


「まずは選ばれた理由から教えてあげる。エミルちゃんはね、人類を救う鍵になる存在だからだよ」

「人類を救う?」

「そうだよ、いずれ訪れる災厄を払うための人柱になって貰いたいんだ」


そんな訳の分からない事で、俺を人柱にしようとする人達とか絶対まともじゃない。何とかしてジークに気付いて貰わないと。


「エミルちゃんもジークから聞いているじゃないのかな? 魔王の厄災についてさ」

「そんなの聞いてない。後、ジークの名前を気安く呼ばないで」

「あはっ、強気だねぇ。もう一本追加しとこっか」


くそ、二本目とか普通の人間は死ぬぞ。


「そっかぁ、聞いてないか。それじゃ転生者とかも聞いたことが無い感じ?」


ひゅー、ひゅーと喘鳴がなる。急激に身体の機能が低下したせいで呼吸までし辛い。


「ありゃ、量間違えたかな? うふっ、でもこの程度で死ぬ柔な存在じゃないの知ってる。辛いのは慣れっこだもんね」


もう無理、座ってられない。痛みとか考える間もなく崩れるように地面に倒れこむ。


「そのままでいいから聞いててね。私達、道化の救済者は、かつて人類の半分以上を死に至らしめた厄災を防ぎたいんだ。だけど、今のこの世界の情勢じゃ、半分どころか全滅もありえる。でもね、その事を私達がいくら声高らかに訴えてたとしても、世迷言だと言って誰も耳を傾けてはくれない」

「だったら世界が強制的に変革するための動線を、無理矢理引いてやればいいと思ったの。それぐらいの力は持ち合わせているからね。それでこの救済を盤石な物にするためにエミルちゃんが必要なんだ、()()()()()()()()()()()()と言う貴重なサンプルとしてね」


辛うじて聞こえてくる声でも分かる程にこいつは自分に酔っている。自身の事を正義だと思い込んでいる殺戮者とか手に負えない。


「エミルちゃんがもし自分から協力してくれるなら、手荒な真似はしないし、最低限度の自由は認めてあげる。更に辛いときの話し相手にだってなってあげちゃう、今みたいにね。抵抗したって無駄なのは今日で理解してくれたでしょ? 私達がその気になれば、何時でもエミルちゃんを攫う事が出来るんだ。それでもなお抗おうとするなら、エミルちゃんの大切な物を壊しちゃうかもね。例えば、今もこの状況に気付いていない誰かとか」


「お前……殺すぞ」


俺の幸せに手を出す奴はこの身が獣に落ちようが、手足がちぎれようが絶対に逃がしはしない。


「……あはっ、次の襲撃で迎えに行くから、それまでにお別れを済ましておいてね。それじゃ、また会いましょう」

「おい、エミルどうした?!」


そう言い残して気配が消えた瞬間、倒れ伏す俺にジークがやっと気付いてくれた。


「もう、遅いよぉ」


優しい手付きで抱きかかえてくれたジークに身を任せ体温を感じながら、文句の一つを言った所で俺は意識を失った。

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