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74 招かれざる客

続きです。

「とても光栄な提案だけど、ごめんなさい。私にはまだ、やりたい事がある、です」


それにいつかあの子が成長して自分の道を選ぶその日までは、一生を左右するかもしれない、ターニングポイントを俺の意思だけでは決めれない。


「そうか……残念だが仕方あるまい。お主の人生はお主の物だ。だが、もしそのやりたい事が終わった暁には、我が国をもう一度訪れるが良い、歓迎しよう」

「どうして私にそこまでしてくれるの、です」


俺はミサキ達を失いたく無いという願いを叶えた。その過程でこの国の騎士を助け、脅威になる魔物も討伐しただけだ。魔法の研究成果を出した訳でも、前人未到の偉業を成し遂げた訳でもない。まさか俺みたいな得体の知れない少女を欲しがるまで戦力が不足しているのか?


「お主は自分の価値を、正しく理解しておらんな」

「価値? 結晶のこと、です」

「それだけでは無い、お主が持つ魔法の知識、魔剣を作る技術、そしてその美貌。財宝の詰まった宝箱が人の姿をしているかのようだ。そんな人間を手に入れたいと思うのは、普通であろう?」


そんなの俺以外にも探せば沢山いるだろうに。


「まだ分かっておらんのか。これはお主の夫も、苦労が絶えんな」


はぁ? 俺は結婚してないんだけど。夫って誰を指しているんだ。


「失礼ながら、()()夫では無いです陛下」

「ふむ、そうなのか。夜会に来た時から仲睦まじくしておるから、勘違いしてしまったわ。しかし、()()とはな」


俺とジークを交互に見てニヤついている感じ、すっごい既視感を覚える。これはそう、和の国の爺が誰かを揶揄う時と同じだ。


「お戯れを陛下。彼女とはまだ付き合ってすらいません」

「なんと、それは真か」


真面目なお話は王様の興味の対象がジークになったおかげで終わり、用済みとなった俺は従者が運んでくれた茶菓子をつまみながら様子を見守る。ジークって結構短気だからあんまりいじると怒るから程々にね。


「お嬢さん、退屈なら私と一緒にお茶しない?」


ふとした瞬間に突然横から声をかけられ、びっくりしてお茶をこぼすところだった。危ない危ない、王様の前でそんなことすればまた俺に矛先が向くじゃないか。いったい誰だよ俺に気付かれずに近づいてきた奴は。


「あはっ、不機嫌な顔もプリチーね。閉じ込めて一生可愛がってあげたいくらいだわ。こほん、そんな貴女に朗報です。な、な、なんとあの道化の救済者のメンバーにご当選されました! わーぱちぱち」

「ーーっ!」


咄嗟に持っているカップを投げつけ距離を取ろうとするが、身体が思うように動かず盛大にこけてしまう。くそ、油断した。毒か何か入っていたか。


「ほらぁ、急に動いたら危ないよ。大人しく座ってましょうね」

「ジーク!」

「あはっ、声を出しても無駄だよぉ」


誰もこの状況に気付いていないのか?! こいつどんな魔法を使ってやがる。


「ん~、流石神様からのギフトだよね! こういうのをチートっていうんだわ。ほい、お薬追加ね」


ちくりと動けない俺の腕に薬品を注射し、担ぎ上げて再び椅子に戻される。ひっ、何を打ち込んだ。


「もうちょっと私とお話ししましょ」


最悪だ、魔法までも使えなくなってきたぞ。

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