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71 パーティーの前に

タイトル変えました

いやだいやだと現実逃避していたらあっという間に時間になってしまった。


「お綺麗です、エミル様」


送られてきたドレスをブランに手伝って着せてもらい、肩まで届くようになった髪を頭の後ろで纏め、お気に入りの髪留めを付ける。俺のサイズにピッタリに作られたそれはパーティー用とあってか、手足が晒され肩までもが剝き出しになっていた。


このドレスは少女趣味全開のメルヘンチックな仕様でふりふり、ひらひらがふんだんについており、腰についている大きめのリボンが愛くるしさを主張している。全体的に子供っぽいのが不服だけど、薄っすらと魔力を帯びているためにかなり高級品だと分かる。そのため俺でも細部まで確認することができた。これ、おいくらするんだろう?


それよりこんな服装で王様が主催者するパーティーに行っていいのかと疑問に思ったが、お堅い格式ばったものでは無く料理と会話を楽しむ宴会? のようなものなので問題はないとアルベルトも言っていたし、そもそも向こうから送ってきたものなので気にするだけ無駄か。


「準備できたか?」

「うん」

「入るぞ」

「……似合ってる?」


ドアを開けて入ってきたジークに慣れないヒールでぎこちなく振り返り、感想を聞いてみるが今日は普段はしないお化粧をしているので若干気恥ずかしくて俯いてしまう。


「あ、あぁ。天使がいるのかと思った」

「その例えは分からないけど、ジークも似合ってる」


前世の何かに例えたせいで、褒められているのか今一分からなかったので少し不安だ。その動揺はどっちの意味なの。


「おう……それじゃ行くか」

「うん」


パーティー会場までは用意された送迎の魔導車で移動する手筈なので玄関に向かおうとすると、後ろから手を掴まれて止められる。


「どうしたの、ジーク?」

「振り向くなよ」


やっぱりお化粧は俺に似合わなかったのかなと思った矢先、ジークは俺の真後ろに立ちそっと抱きしめるように腕をまわしてきた。


「えっ」

「首元が寂しいからな。その、プレゼントだ」


突然の不意打ちに呆然としているとジークは恥ずかしそうにそう言ってきた。


「プレゼント?」


俺が我に返った時には既にジークは離れており、気づくと首下には飾り気の無いシンプルなハートのネックレスがつけられていた。


「引き留めて悪かった、行こう」

「ジーク!」


そのまま行こうとするジークを今度は俺が引き寄せ、ヒールで高くなった身長から少しの背伸びをして届く頬にそっと触れるキスをする。今はこれぐらいしか返せないけど許してね。


「エミル?!」

「不意打ちはお互い様」


龍型だろうが王様だろうが今の俺に敵は無い。



向かった会場は貴族街にある大きな屋敷で、俺達の家の三倍ぐらい広いお宅だった。大きさしか分からないのは屋敷を覆うように結界が張られているために俺の放出魔法がはじかれてしまい、中を確認する事が出来なかったからだ。でも隣でジークが感嘆の声を漏らしていたので、肉眼では外からちゃんと見えるようになっているみたい。


すぐ隣には魔導車を駐める専用の場所まで用意されていて、そこで車を降りると同じ様にパーティーに招待されたであろう人達がぞろぞろと会場に向かって歩いていた。その人混みに自然と紛れ込んだのだが、ちらちらとこちらを盗み見るように視線を感じる。俺の服装以上に派手な人もいたので安心したのだけれど、注目されるのは何処に行っても同じだった。


「招待状はお持ちですか?」

「はい」


入口に近づくと受付をしている人に止められ、招待状を求められる。正直またかと思いながら渡し、その確認している間に何故かボディチェックまでされた。これ意味あるのか?


厳重な警備になるのはしょうがないにしても、ここに来るまでに二回も徘徊している国騎士に止められうんざりする。その度に招待状を見せて追い払うのだが、確認に時間がかかり入る前から少なくない時間を待たされたおかげで、何だか出鼻をくじかれた気分だ。


「ご確認できました。エミル・シュヴァルツァー様とジーク・ブレード様ですね。屋敷内は放出魔法の使用は厳禁ですのでご注意ください。では、ごゆっくりお楽しみください」


重厚な扉を開きながら忠告される。えっ、厳禁なの?


「もし使ったらどうなるの?」

「その場合は警備隊に取り押さえられます。特殊な結界が張られておりますので、誤魔化すことは出来ません」


もう、帰りたい。


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