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続きです

任務を終えた俺達のクラスは学園から少なくない報酬と休日を貰い、ミサキとイインチョウはショッピングに、レオンとジークは男二人で何処かに出かけ、俺は前に約束していたレオンの武具を製作するために工房に籠ると、思い思いに過ごしていた。


今日も俺以外の人は外出しており、本当は俺も1人で食べ歩きでもしようかと思っていたのだが、ジークから毎月渡されているお小遣いを何時の間にかあの子に使われていたために、金欠であえなく断念。ジークに強請ってはみたが、財布の紐が緩むことは無かった。


最悪アイテムボックスの中にある物を売ればお金の工面はいくらでも出来るけど、そこまでして食べ歩きしたいかと言われれば否なので、今日も大人しく工房で暇をつぶす。


あの子に何も言わなかった俺が悪いのだが、この大量にある女性物の服はどうしたものか。アクセサリーも無駄にあるし、絶対これミサキ達の影響だろう。服もアクセもジークがくれたものだけで十分だと言うのに。でもまあ、着たらジークは喜んでくれるかも? 割とこうヒラヒラした服装が好きみたいだし。


ゴンゴンゴン!


アイテムボックスの中身に夢中になっていた俺は、工房まで響く鈍い音によって我に返り、そこで初めて結界内に人がいる事に気付いた。来客の予定なんかあったっけ? と疑問に思うが、どちらにせよ今は俺一人しかいないから、居留守でもしようかな。幸い工房にいるからばれる心配はないだろうし。


「ここにいるのは分かっているよ、エミルちゃん! 嫌なのは分かるけど出て来てくれ、僕も仕事なんだ!!」

「ちょっ、先輩! 大きな声を出したら近所迷惑ですよ」


あぁー、最悪だ。何で俺が一人の時に来るかなぁ。しかも、俺が家に居ることを分かっている辺り、どうせ何処かで監視でもしてたのだろう。


面倒くさい、そう思いなが工房からアルベルトの下に向かう。こんな風に次も来たら、もういっそ特定の相手だけを出禁に出来る結界でも開発しようかな。


「五月蠅い」

「やっぱりいたね、エミルちゃん」

「今すぐ帰って」

「僕も仕事なんだ」

「……少しだけだから」

「ありがとう」


家の中に嫌々招き入れるから、当然お茶何て出さない。


「手短にお願い」

「そう邪険にしないでよ。と、その前に彼女の紹介をしてもいいかな?」

「どっちでもいい」


アルベルトの隣にいる女性は同僚なんだろうけど、興味ないし。それより一緒にいたカークとか言う討魔者はどこに行った。


「は、はい。私は国騎士第四番隊所属のミラです。よろしくお願いします」

「どうも」

「彼女は僕の秘書として、一緒に来て貰ったんだ」

「あっそ」

「それじゃ、いくつか質問させて貰うよ」

「黙秘権」

「まだ質問してないよ」


それから聞かれた質問は、新種の蠍と牛頭の魔物の事と、師匠との関係についてだった。俺はそれに対して当たり障りのない返答をする。ジークみたいにスムーズにとはいかないけれど。


その間、ミラと名乗った女性は記録するためなのか忙しなく手を動かして何かを書き留めていた。一見ただの記録係に見えるけど、質問が始まってから常時何かの魔法を発動している。


ユニーク魔法なのか効果が全く分からないが、この場で使うとしたらその能力は限られるだろう。それに、俺に直接的な害は無いみたいだし放置でいい。アルベルト達はどうやら俺が魔力を感知出来る事までは知らないようなので、変に気付かないほうがいいだろう。


「最後に、討伐した蠍の心臓はどうしたんだい? もし持っているようなら提出して欲しい。然るべき報酬は払うからさ」


まぁ、やっぱそれを聞いてくるよね。魔物の心臓は魔力の源であるが故に、使い道が多い。調べれば魔物の情報を得る事ができ、加工すれば魔石に、それこそAランク程の魔物の心臓を手に入れたとしたら、一財産築けるぐらいに貴重な物だ。


でも、大抵は討伐する際に破壊されているため、せいぜい欠けらしか残らないがそれでもそこそこのお金になる。


「食べた」

「はっ?」

「えっ?」

「美味しかった」


正直に答えた所で二人とも静止した。アルベルトは何故かミラを見るが、ミラは凄い勢いで首を横に振って返答していた。


「本当に?」

「くどい」

「じゃあ、この前にちゃっかり持っていった牛頭の一部も?」

「ステーキにしたら、中々に美味だった」


まさか美味いかどうかも分からない金の卵を食べると言う発想が無かったアルベルト達は面食らっていた。まあ、普通の人はお金か魔石にするよね。


この話がミサキ達に知られたら相当渋い顔するだろうな。何せボコられた相手だし。俺が今日一人で良かったと初めて思ったよ。


「はぁ、君はいつも僕の想像の斜め上を行くよね」

「そんなの知らない」

「先輩大丈夫ですか?」


これを上に報告するのが嫌になるよ、と恨み言に近い言葉を残してアルベルトは帰っていった。ざまぁみろ。


邪魔者もいなくなり、これでようやくゆったり出来ると思った矢先に、またしても新たな訪問者がやって来た。えぇ、普段はほとんど誰も訪れないのに今日に限ってこうも来るかな。居留守が通じる相手だと助かるんだけど。


バァン!


「こちらに、ジーク様はいらっしゃいますか」

「ジーク、探したぞ!」


居留守がどうとかの問題では無く、ドアを破壊して二人の女性が入って来る。ジークの知り合いみたいだけど、凄い関わりたくない。


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