閑話4 騎士の悩み
久しぶりの閑話です
任務を開始してから僅か二日で、リズヴェの森の半分を調査し終えた。後、一日足らずで今回の任務は終了するだろう。なのに未だ本来の目的を達成出来ずにいた。
僕達2人に任された本来の任務は、新種の魔物を1人で討伐したと言うエミル・シュヴァルツァーにある事を聞き出すこと。もし口を開かない場合は強硬手段を使ってでも聞き出せとの命令だった。それが和の国で有名な魔剣士と同じ姓だとしても。
エミル・シュヴァルツァーの素性は法の国の情報力を持ってしても、殆ど知ることが出来ないでいた。歳が十四であの魔剣士バルド・シュヴァルツァーと同じ姓を持つ少女。盲目の上に身体に障害を抱えているが、魔法によって日常生活ましてや魔物の討伐まで可能とした天才努力家。曰く、3、4種類の魔法を常時発動しているだとか、新種の魔物を1人で討伐した等々。
初めて聞いた時は何かの冗談だと思っていたが、本人確認してその認識を改めることとなった。十四歳にしては小柄な少女は、真っ白な髪にとても整った容姿はまるで精巧な人形の様。目が不自由なので杖を片手に持ってはいるが足取りは確かなもので、森の中だというのに常人と変わらない動きをしていた。
注意深く観察すると杖は魔道具であり、そこに魔力を流し補助として使っているようだったが、驚いたのはそれだけでは無い。彼女は身体強化を使いながら、まるで息をするかのように索敵までこなしていた事だ。
発動は練度がものを言う魔法において、誰かと会話しながらこれが出来るのは国騎士の中でも一部だけだろう。そんな英傑が彼女も含めて5人、顔が引きつらなかった自分を褒めたいぐらいだ。
銀髪碧眼で同年代女性は放って置かないだろう容姿、けれど抜き身の刃の様に感じさせる雰囲気がそれをさせない青年。弱冠十歳にして武の国で剣闘士の異名を持ったジーク・ブレード。
茶髪茶眼で頬に傷跡をつけた青年は帝の国の円卓に所属しており、閃光の異名を持つレオン・ハルト。
黒髪紫眼に眼鏡をかけた少女も同じく円卓所属であり、奇術の異名を持つマキ・クリスタ。
道中に演奏していた金髪翠眼の少女も同様に円卓所属で、狂人の異名を持つミサキ・シルベスター。
それぞれが持つ肩書きは調べている途中で乾いた笑いが出てくる程で、この任務を依頼した上の人間に苦言を呈したくなるレベルだよ。相手は学生だけど一歩間違えれば首が物理的に飛ぶのはこちらなのだから、これぐらいは許して欲しい。
どういう経緯があったのかは調べても分からなかったが、全員が彼女を守るために行動を共にしている。そんな一個小隊に守られている状態では、本来の任務もあったものではない。
……これどうしよう。
手袋を捜索中




