52 任務 3
続きです。
「ふっ!」
「それで最後です」
「おう、了解」
最後の魔物を討伐したレオンと俺は、ユミルの台詞を聞いて休憩に入る。
「やはり惚れ惚れする働きだね、2人共。噂には聞いていたけど、ここまでとは」
「これでまだ十六のガキだってことが驚きだがな」
一緒についてきた2人がわざとらしく褒めるのを無視しながら、アイテムボックスから取り出した携帯食料を齧る。手早く食べれるように工夫された味が何とも言えない物を食べながら、視線は自然とユミルに固定されていた。
「過保護だな」
隣で同じく携帯食料を食べていたレオンが俺を見て苦笑しながら言ってきた。
「……言われなくても自覚してる」
「さいですか」
俺はエミルの時と同じ事をしているだけ。ただ、ユミルの場合はそれがもっと必要なだけだ。この世界で大切な女の子を守るのはやりすぎ位で丁度いい。けれどもこの話はあまり追求されたくないので、話題を変える事にする。
「このまま順調に進めば後、二日ぐらいか?」
「だな。予定より早く終わりそうだけど問題ないだろ」
俺達がこの森に入ってから既に一日が経過していた。道中に現れた魔物はどれもこの森に生息しているもので、俺とレオンだけで事足りる程度の強さしか無かった。まぁ、任務と言ってもそれを担うのが学生、それも成人して間もないような子供だから、これぐらいが妥当なのだろう。俺達が異常なだけで。
それにここは資源調達で向かった森に比べて雑ではあるが、かなり人の手が加えられている。しっかりと踏み固められた道があり、地図も正確、ましてや場所を示す目印までもが一定間隔で配置されているのだ。だからこそ俺達学生に白羽の矢が立った訳だが、これで魔物が出なかったら前世で言う森林浴とそう変わらない。
俺の勘だがミサキ達は既にそういった意味で楽しんでいる節がある。片手に持っている飲み物がこの前オープンした店の人気スムージーしか見えない。もう少し危機感を持って欲しいと思うが学生らしいのであえて口にはしない。それに美味しそうに飲んでいるユミルを見られて俺も眼福だからな。帰ったら買い溜めしておこう。
なので今の所任務については順調だと言える。
「これで付き添いが美人のお姉さんだったら、言う事はなかったのにな」
「ふっ、確かにな」
「君たち、僕達に聞こえると分かってて、言ってるよね?」
「生意気なガキだ。だが奇麗な姉ちゃんが好きなら、帰った後に俺がいい店教えてやるぜ?」
俺達の何気ない会話にしっかりと参加してくるあたりが抜け目がない。どんな僅かな声量だとしてもこの2人には聞こえてしまう、いや違うな、聞き逃さないの間違いだ。そのおかけで迂闊な会話をしないように気を張るのが地味にストレスだ。
国騎士4番隊所属のアルベルトと討魔者カークは、本来ならばここに派遣されるような人材では無い。彼らにはもっと重要な仕事があると思うのだが、上の人間は余程俺達の存在が気になる様だ。
この国の4番隊と言えば対人特化の集団、主に要人警護や犯罪者を捕える事を専門にした組織だ。討魔者のカークも同様に外に逃げ出した犯罪者を捕える事だけを生業とし、Aランクまで上がった奴だ。
そんな2人が揃いも揃って俺達の前に現れるとしたら、要件など大体決まっている。事故に見せかけた暗殺、又は尋問と言ったところか。
前者は上の人間が無能だった場合あり得るので本当に洒落にならない。もっと穏やかな任務になると思っていたが、今世の人生はどうも波乱万丈な運命にあるみたいだ。
寒いより暑い方が好き。




