39 瘴纏魔装
なるべく早く更新できる様に頑張ります。
「そっち行ったぞ!」
「オッケー、任せてー」
ミサキ達は資源調達の為に来た、まだ駆け出しであろう討魔者を助けながら本来この場所にいるはずの無い魔物を討伐していた。
「ふぅ、やっぱり武器が無いとやりにくいな」
「素手で魔物を倒している人の台詞じゃないよねー、それ」
「ほら、話してないで手を動かして。早く次に行くわよ」
「へいへい」
「委員長って意外とがめついよねー」
「……お金は大事よ」
お金になる魔物の死体をせっせと回収していた委員長は一瞬動きを止めた後に、若干顔を赤くしながらボソッと呟いた。
ドオォォォン、と何か爆発したような音と共に強大な瘴気の塊が現れた。
「「「ーーッ!」」」
「今の音なに!?」
「分からないわ。けれど、この瘴気は確かあの時の……」
「ジークの所に向かうぞ!!」
「了解!」
◇
俺は蠍の魔物の罠にまんまとハメられた。あの時放った瘴気の塊は回避した瞬間に爆発した、避ける事が不可能な程に細かく砕けた鎧片を周囲にまき散らしながら。
それだけならまだ対処の仕様があった、けれどその可能性すら潰されていた。切り落とされた手足も、乱雑に飛ばしていた瘴気までもが同時に爆発したのだ、丁度俺達を綺麗に囲う形で。
全方位からの同時攻撃、普通の人間だったら為す術もなくやられるだろう。普通の人間だったら。
『……またなの?』
『うん』
やばい、このままだとジークが死ぬ。
『私の身体でもあるんだから、大切にしてよね』
『うん』
今変わったらジークを守れない。しかも、彼女が痛い思いをしてしまう。
『今度の相手は魔物? それとも人間?』
『うん』
ならば本来の形に戻るしか……
『話し聞いてる?』
『少しの間だけ、元の形に戻っていい?』
『……いきなり唐突ね』
『丁度いい機会、リハビリしないと』
俺がいつまでも変わっていられる保証がない以上、いつ元に戻ってもいいように訓練しないとね。それに本来は彼女がこっち側のはずだ……まぁ、変わる為の言い訳だけど。
『リハビリ?』
『そう、リハビリ』
『言葉の意味は分からないけど、貴方が言うなら頑張ってみようか』
『大変だけど、助けてくれるジークがいる』
『貴方は本当に、ジークが好きね』
『……もう行く』
『あ、』
彼女の憂いは俺が晴らす。俺が化け物であったとしても。
◇
「黒壁の楯!!」
俺はジークを守る為に自身の魔力と瘴気を複合させた魔法を発動させる。距離の離れたジークだけを囲む様にして地面から漆黒の壁が現れた直後に、飛び散った鎧片と爆発の衝撃が全身を襲う。
鎧片が全身に突き刺さり至る所から出血しながら地面を何度もバウンドし、数メートル以上飛ばされてから巨大な木にぶつかり、ようやく停止する。
「ぐふっ」
痛い、痛い! 痛い!! 火で焼かれたのではないかと錯覚する程の激痛が全身を襲う。
あの魔物絶対に殺す!!
「エミルッ!!」
急いで駆け付けてきたジークにはダメージが全く無く、俺の魔法が完全に相手の攻撃を防ぎ切った事に安堵する。
「よ、かった」
「今止血するから待ってろ!」
「だいじょうぶ」
「大丈夫じゃないだろ!!」
「大丈夫だから、離れて見てて」
「何を言って……ッ!」
俺の額から二本角が徐々に生えていくと同時に、全身の傷が自己修復していく。
あぁ、この感覚だ。血が沸騰したかの様に感じるほどに全身と感情が高ぶっていく、今すぐあの魔物を仕留めろと本能が訴える。
けれど、今の身体では殺せない。ならば殺せるだけの身体を整えればいい。
「瘴纏魔装」
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