34 知能持ち
続きです。
討魔者の悲鳴と共に、今まで無かったはずの強い瘴気を感じた俺は急いで索敵の範囲を広げる。
「続きは後。」
「あぁ……状況は分かるか?」
「少しの間、支えてて。」
索敵能力を上げるために、俺は他の魔法の使用をやめて索敵だけに集中する。森の中に推定Cランクの魔物が4体が暴れているのが分かる。それに、Bランクを優に超えているだろう個体が最悪な事に、先程の広場に存在している。
「森の中にCランク4体。広場にB以上1体。」
「厄介だな、どうする?」
「私は討伐に行く。ジークは?」
「……俺は有象無象より、エミルが大切だ。だから、命の危機を感じたら即座撤退する。これだけは約束してくれ。」
「分かった。じゃ、早く広場に行こ。」
俺がわざわざ強い魔物の方に行くと言ったら、ジークは頭を乱暴にかいた後に、すぐにイインチョウに連絡を入れた。暫く会話するとイインチョウ達は俺と同じ考えだったみたいで、森の中の魔物を討伐しに行ってくれるそうだ。
強い魔物の瘴気を感じて身体が疼くのを抑えながら、俺とジークは広場に向かった。
◇
さぁ、お手並み拝見だ。
◇
魔物の影響か広場にあった建物の多くは崩壊しており、着いた時と打って変わって異様な程に静まり返っていた。まだ多くの人が存在しているというのに、悲鳴や戦闘を行っている様な音は聞こえてこない。
けれど、広場にいる魔物との距離が近づく程にその理由が分かってしまった。ここにいる人達の多くは初心者であり、魔境にいる様な魔物とであった事はない。だから、この肌を刺すようなひりついた瘴気を感じ、怖気図いているのだろう。
かくいう俺もさっきから一歩、また一歩と近づく度に、身体が震える。しかし、それは恐怖からくるものではなかった。
向かった先では恐怖に屈しなかった勇気ある討魔者複数人が、魔物を囲む様に対峙していた。それに対して、魔物はまるで興味がないといった感じでその様子を見ていた。
だが、魔物が俺の存在に気付いた途端に、放出していた瘴気を身体に纏っていき戦闘準備を始めているようだった。これは厄介な相手になるなと思いながら、こちらも魔剣を取り出し、身体強化のギアをあげる。
「あれか……」
「知ってる?」
「昆虫型の魔物と戦った事はあるが、蠍は初めてだ。」
「私も。」
全長4メートルの蠍の姿をした魔物は、瘴気を纏う事により鎧の様な外骨格で全身を覆い、囲んでいる討魔者には目もくれずこちらをじっと見つめている。
「今がチャンスだ! 皆やっちまえ!」
「く、くそが! 俺をコケにしやがって!!」
注意が完全にこちらに向いているのを勝機だと思ったのか、囲んでいた討魔者達が一斉に攻撃を仕掛ける。
「馬鹿が。」
ジークが吐き捨てる様に言った言葉は、相手の力量すら図ることの出来ない愚か者に対してだった。
俺達から目を離さないと言う事は、この中で誰が一番自分の脅威理解しているから。ましてや、相手の力量を見極めて手を抜く様な魔物が、簡単に隙を晒す訳がない。
魔物は鬱陶しそうにその場で一回転し、尻尾に纏っていた鎧を礫の様に飛ばして、囲んでいた討魔者全てを一撃で絶命させた。
無差別攻撃では無く1人1人を的確に攻撃した魔物に、自然と自分の口角が上がるのを感じた。
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