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3 これから。

これで一旦終了です。

ふわぁぁ、尻から伝わる小刻みな振動で目が覚めた。何だ? 新手のプレイか? この変態め。


と、思ったら勘違いだった。この揺れは何処かに運ばれてるのかな? そう思って辺りを探ると何時もと違って大量の人が俺の周りにいる事が分かる。その中に人型がいてびっくりした。どういう事かと言うと、火の玉を中心に全身へと線を巡らしてある人が数人いるのだ。


今はその人達と何処かに移動しているみたいだ。最初は大勢で◯交パーティーでもするのかと思ったけど、何日か経っても行われないので違うみたい。いつのまにか手足に付いていた鎖は無くなっているみたいだけど、依然として身体は使い物にならないので人形プレイを続行中。正直俺の近くには人型タイプが4人もいて怖いです。何なのこの人達。


「―――――」

「―――――――?」

「――――」


うーん、何か喋っているみたいだけど聞き取れない。でも男の人の声じゃないかな。まぁ聞き取れた所で言っている内容分かんないから意味ないんだけどさ。


つん、つん。


さっきから人型タイプの1人が頬を突いてくるんだけど、威力を考えてくれませんかね。痛みは無いんだけど首に衝撃が伝わってますよ。


つん、つん、つん、つん、つん。


えぇい!鬱陶しい! その指噛みちぎるぞこらぁ! ……噛みちぎる歯無かったわ。クソ、せめてもの抵抗でその指しゃぶってやらぁ。俺のテクを舐めるなよ、指だけに。なんちゃって。


ぱく、ぺろぺろぺろぺろ。


「!―――――!?」

「―――――!」

「―――?」


なんか3人がすごい速さで近づいて来たんだけど。もしかしてリンチですか? 指しゃぶっただけじゃん。仕方ない人形プレイ続行するか。


「―――――」

「――――――」


何か話し合っているだけで殴られない? もしかして、この人達は前のクソ野郎共と違うのか? 何処に連れて行かれるか分からないけど、今よりマシでありますように。



少女を連れて帰国した俺達は魔眼の取り引きがあった事、またその保有者が生存していた事を王に報告し終え、医務室に向かっている。


結局あの少女は帰国の最中にユキの阿保に一度だけ反応しただけで、それ以来大きな反応を示さなかった。まぁ、あの阿保のおかげで色々分かった事があるがな。まさか歯が無いとは思ってなかった。今は医務室で検査を受けているはずだ。


ドアをノックして医務室に入ると、何時もの不機嫌面を余計に酷くした男がいた。


「いつにも増して酷いことになってるぞ、ハザック。」

「そりゃ、あんなの見てしまったら誰だってそうなるさ。」

「そんなに酷いのか?」

「むしろ、まともな所が1つもないね。何で生きてるか分からないくらいに。」

「お前でも分からないのか……」


この国で最高位の医師でさえ分からないか。


「彼女を分析(アナライズ)した結果、盲目なのは勿論の事五感の殆どが機能してないね。おまけに魔物の臓器が見つかった。」

「なっ! 魔物の臓器だと?」


馬鹿な!? 人間にとって猛毒だぞ!?


「あぁ、何の魔物のか知らないけど適合している。こんな事例は初めてだ。」

「治るのか?」

「今、回復魔法が使える医師を片っ端から集合させてるからどうにかするが、目と臓器はどうしょうも無いね。」

「そうか。」

「安心しろ私がいる限り絶対に治してみせる。」


やはりこの男に任せて正解だ。


「それを聞いて安心した。俺は一旦帰るがまた見舞いに行くと彼女に伝えてくれ。」

「あいよ。さてと、これから忙しくなるな。」


少女には生きて欲しい、助けて出したあの日からこの思いは変わらない。



俺は何時もその少女と一緒にいた。寝る時も、ご飯の時も、トイレだって一緒だった。しかし、それは唐突に終わりを迎えた。あの時俺は……



んっ、なんか久しぶりに変な夢を見た。最近は全く見なかったのに。


「ようやくお目覚めかな? 調子はどうだい人形ちゃん。」


ん? 調子? そんなの何時も通り動か……お、おぉ!腕が動くぞ。それに足も。自己修復したのかな?


「その様子だとまずまずだね。」


触覚も戻ってる! 手触りのいいさらさらの布地の感触がする。


「聴覚の方は問題ないかい?」


て、あれ? 耳も聞こえるようになってる!それに話している意味も分かるぞ!! 俺の灰色の脳みそと身体よ、良く頑張った。


「ちょっと失礼するよ。」


そう言って誰かが俺の身体の隅々を調べていく。ところでこの人誰? 手つきからして検査だとは思うけどこの人ロリコンとかじゃないよね? このまま押し倒されてベットインは嫌だよ? いぇす、ロリータのーたっち。


「体内に残っていた毒もほとんど抜けたみたいだね。これなら魔力の検査もできるかな? 後はバルドにも連絡しないといけないし。それから、」


身体を触りながらブツブツ独り言をつぶやいている。俺はこれからどうなるの?


独り言を呟いていた男(声から推測)が今度は色々な質問をしてきた。


Q 何か少しでも記憶は残っているかい?

A 何も覚えてない。(首を横に振るだけ)


Q ここが何処か分かるかな?

A 分からない。(首を横に振るだけ)


Q 自分の名前は分かるかい?

A 分からない。(首を横に振るだけ)


と言った具合に沢山質問された。


「それじゃあ最後の質問だ。君はこれからどうしたい?」


これからか……。手足は動くと言っても1人で満足に行動できるか未だ不明だし、もしかしたら一生不自由なのかも知れない。それに盲目なので、隣で誰かに支えて貰わないと1人じゃ生きていけないのかも。


考えば考える程、俺の生きる意味を見出せない。ならばいっそ


「殺して。」

「ッ!……それは出来ないよ。君がどんなにそれを望んでも私は、いや私達は君に生きて欲しいと思っている。」

「どうして?」

「君にはまだ色々な可能性がある。目が見えなくとも、身体が不自由だろうとも、諦めるにはまだ早い。それに君はまだ魔力の使い方も知らないだろう?」


魔力? そんな物があるのか。だけど、魔力の使い方が分かった所で何が出来ると言うのだろう?


「魔力はいわば生命力と言っても過言ではない。君が生き残ったのも魔力の恩恵だろう。魔力とは便利な物でね、使い方さえ学べば君は誰にも頼らずに生活出来るかもしれない。だけど、その為にはそれなりの努力を積む必要があるけどね。」


そうなのか、なら少しは頑張ってみようかな? もしダメだったらその時は……


「それに生きていれば、君の瞳を取り戻す機会があるかもしれない。どうだい、君にはまだまだ選択肢あるんだ。今、死ぬなんて勿体ないだろ?」


……この人は優しいな。死ぬ事しか考えてない俺に生きる選択肢を与えてくれた。いつか貴方の顔を見られる、そんな日が来るといいな。


「さて、検査の続きと行きますか。」


俺は今日初めて涙を流した。


ファンタジー初挑戦。

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