27 魔粧纏心
これにて戦闘終了。少し短いですがご了承ください。
俺の目の前には裸の女の子が立っていた。
真っ白な髪に、透き通る様な肌。その華奢な身体には傷1つ無く、紫の瞳と額に生えてる小さな二本の角が幻想的で、少女から女性に変わる途中の姿は神秘的で美しく、触れれば消えてしまうのでは無いかと思う程の儚さをはらんでいた。
彼女は俺を見るとその紫の瞳を細め、徐に口を開いた。
『久しぶりね。』
『そう。一年ぶり、ぐらい?』
俺は彼女を知っている。
『また無茶をしたわね。』
『いつものこと。』
彼女は最初から俺の中にいた。
『もう抑えきれないわよ?』
『……じゃ、後はよろしくね?』
悲しみに心を閉ざして。
『仕方ないわね。』
『ごめん、無理させて。』
否、内に秘めた魔を抑えるために。
『それはお互い様、でしょ?』
『ふふ、そうだね。』
互いの役割を持って。
『外の世界楽しい?』
『楽しいよ。』
羨望と恐れを抱いて。
『そっか。』
『ジークが何かと、世話してくれるから。』
希望と絶望を知って。
『ぷっ、何それ。1人で自立するんじゃなかったの?』
『ジークはいいの。』
尚、最善を尽くす。
『……ごめんね。』
『急にどうしたの?』
そこに一片の曇りは無く。
『本来なら私が……』
『気にしなくて大丈夫。偶には、交代してみる?』
己の信念を持って。
『私に出来るかな?』
『フォローする。』
俺達は共存している。
『ありがとう…… っ! そろそろ目覚めるよ。』
『気合い十分。』
『『魔粧纏心!!』』
◇
ほぼノータイムで放った第1級放出魔法『雷光』が、エミル達全員に直撃したのを確認したハシュマーは、勝利を確信していた。
ハシュマーのユニーク魔法『皇帝』は、吸収した魔力が飽和状態になった時のみ発動可能なもので、発動中はどんな魔法だろうが使用する事ができる。
今回の『雷光』はエミル達全員、計5発を同時に放ったために、マリのユニーク魔法で吸収した魔力と、自身の魔力のほとんどをつぎ込む事になった。
魔力が一気に無くなった反動で全身が脱力感に襲われている中、舞っていた砂塵が晴れ始め、改めて周囲を確認すると、生徒や先生達はかなり離れた位置で観戦しており、先程まで戦っていた場所は見るも悲惨な状態になっていた。
久しぶりの全力戦闘で羽目を外しすぎた、と反省していると違和感に気づき、ある一点を見つめ自分の顔が引きつるのを抑えきれなかった。
「マジかよ……」
口調すら変えている余裕もなく、それをただ見つめるしかなった。
そこには二本の角を生やし、全身から高密度な瘴気を放っているエミルの姿があった。
◇
今回の相手を確認するために、ゆっくりと重い瞼を開ける。
まるで本物の瞳の様に、その精巧に作られた2つの義眼で辺りを見渡し標的を見つけた瞬間、頭を抱えて蹲る。
(エミルのばかぁぁ! 相手が男だなんて聞いてないよぉぉぉ!!)
「お前は、あの白いのか?」
(ひぃぃ!無理無理無理! 魔物相手なら大丈夫だけど、まだ男は無理だってぇぇ。)
「ユニーク魔法でも発動したのか……」
(でもでも、エミルが戻って来るまで頑張らないと。)
「まぁ、どちらにせよ勝つのは俺だ。『纏雷』」
ハシュマーは残っている魔力をギリギリまで使い、自身の強化を図る。
(そうだ! 目を閉じて辺り一帯を攻撃すればいいんじゃない。)
「黒炎の檻」
エミルとハシュマーを包み込む様に黒い炎が上がる。
「ふっ、忘れたのか? 俺が魔法を吸収できる事を。」
怖いから耳も塞いで。
「はぁ、最後の最後でこの様な終わり方とは……何だこの炎、魔法じゃない? 何だこれは!!」
すぅぅぅぅ。
「っ! 」
「龍の咆哮」
そうして放たれた音の衝撃波は、黒い炎の檻に閉じ込められ防ぐ魔力を持たないハシュマーに直撃し、意識諸共周囲の一切合切をその圧倒的な威力によって粉砕した。
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