閑話2 目的と邂逅
これにて一旦閑話は終了。次からエミルのお話です。
マリティモ第3王女、もとい木下麻里とファルス、増田隆に牢屋越しで再会を果たした俺は数日後に釈放された。
マリの働きによって無罪放免となったのだ。まさかマリと隆がこの国にいるとは思ってなかった。しかも、王族とその護衛とか随分と俺と差が出たものだ。
前世では幼馴染だった2人は見た目と身分が変わっても中身は全然変わっていなかった。マリは相変わらず生意気だし、隆は真面目な奴だ。
特に隆は前世からの変わり様が凄かった。話し方もそうだが、ぽっちゃりだった腹や愛くるしい顔の面影も無く、今は短い黒髪に茶色の瞳をした伊達男になっていた。
解放された俺は今までやって来なかったこの世界の勉強を始めた。今まで我流で使っていた魔法の使い方から、歴史、他の国の情報など様々な事を覚えていった。
お金や勉強に必要な物はマリと隆が俺に無償で貸してくれた。本当にこいつら大人になったな、見た目は子供だけど。
大きな借りが出来てしまった。あいつらは気にしないだろうが、いつかこの恩は必ず返す。
◇
それから4年が経って俺は14歳となった。この世界の知識を蓄えた俺はマリ達と交わした約束を果たしに、武の国を旅立つ事にした。
その交わした約束とは、この世界にいるクラスメイトを見つける事と、魔王の厄災について調べる事だ。
自由に動けない2人に変わって俺が世界を旅する事になる。それには命の危険を伴うが昔の俺とは違う。俺はあの時自惚れて失敗した、二度と同じ間違いは起こさない。
さぁ、旅立ちだ。
◇
それから1年が経って俺は魔剣士のいる和の国へとたどり着いた。ここに来る途中に技の国によって調査したが、転生者らしき人はいなかった。
俺と同じ様に旅立ったか、もしくは既に亡くなってしまっているかも知れないが、どちらにせよ俺の旅はまだ始まったばかりだ。
転生者の情報は無かったが、魔王の厄災については新たな情報を手に入れた。
武の国で分かっていた事は、今から1000年以上前に
も同じ様に魔王が現れ、それと同時に各国から勇者と呼ばれる者が立ち上がり、魔を討ち滅ぼした事ぐらいだ。
そこに新たに技の国で得た情報では、魔王と勇者はユニークの使い手で一騎当千の力を有していた、その中でも魔王は魔眼『魔を統べる瞳』を使い、魔物を支配していた、という記録を見つけた。
これにより勇者はユニーク持ち、つまり転生者である可能性が高くなった訳だ。後は魔王は魔物が関連してくる事も分かった。
和の国では一体どんな情報を手に入れられるだろう。他の転生者がいると良いんだが。
先ずは魔剣士に挨拶しに行こう。変に誤解を受けてまた捕まってしまったら困るからな。
街で聞き込みをすると魔剣士はバルドと言う名前だそうだ。今は城内で幼い子供と暮らしているとか。
結婚していたのか。まぁ、あれだけ強くて渋い男なら女の方が黙ってないだろうな。
俺はマリから貰った王族の紋章を見せてから、城の中に入っていった。
◇
「誰かと思えばあの時の小僧か。」
「あの時はどうも。おかげで更生出来ましたよ。」
「ほぉ、そうかい。それで何の用でここに来たんだ?」
「実はーー」
俺がここに来た目的を話してしばらく滞在する事を認めて貰った。転生者については人探しと言ってぼかして伝える事にした。
「なるほどな、そう言う事なら問題ないだろう。それでこれからは私用なんだがちと頼まれてくれないか?」
「何ですか?」
「とある事情で子供を保護する事になったんだが、その子と友達になってくれないか?」
「友達、ですか?」
「そうだ。頼めるか?」
「そう言う事なら大丈夫ですよ。任せて下さい。」
そうして俺はエミルと出会う事になった。そしてこの出会いが俺の人生を左右する事になる。
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