15 旧友
今日は時間があったので投稿出来ました。
ジークに抱えられて借りてきた猫の様に大人しくしていると、被害を受けて無い教師の1人が先程の魔法について聞いてきた。
「先程の魔法は一体何ですか?」
「あれは重力爆弾。」
「重力爆弾? 初めて聞く魔法ですね。階級はいくつですか?」
「私のオリジナルだから決めてない。」
「なんと! あれは貴女が作ったのですか?!」
「範囲、重力、爆発の複合魔法。」
「はっ?……今なんと言いましたか?」
「範囲、重力、爆発の複合魔法。」
「……本当に?」
「本当。」
「あの、良ければ理論を教えて貰っても?」
「紙とインクある?」
「少々お待ちください!!」
身体強化を瞬時に行い、一瞬で姿を消した教師にジークと2人で唖然としていた。どんだけ全力なんだよ。でも、なんか怒られ無くて済むかも?
「予想外の反応。」
「ここの教師も変人だったか。」
瞬足の変人1号だな。多分これからもっと変人が増えると思うけど。
「お待たせしました。どうぞこちらに理論を!」
渡された高価そうなノートとペンで理論を書いていく。
この魔法は範囲重力に爆発の魔法を追加したもので、指定した場所に重力の魔法で超圧縮した爆発の魔法を解き放つだけの簡単な物だ。
範囲重力とは違って重力爆弾は広範囲殲滅を目的とした魔法でその威力はさっき試した通りだ。
俺がノートに書いている間にジークが教師と話していた。
「こんな事してて良いんですか?」
「問題ありませんよ、試験を再開するには少し時間がかかりそうですから。」
「すみません、結界まで破壊してしまって。」
「いやいや、謝る必要は無いよ。良いものを見せて貰ったからね。それに結界の強度の見直しも出来て一石二鳥さ。」
「はぁ、そうですか。」
「なんなら私が張っても良いよ?」
壊れるのは大体予想出来てたから、張り直す気満々だったし。どうせ俺が入学したら壊すのは早いか遅いかの違いだろう。
「なんでエミルが上から目線なんだよ。元はお前のせいだろ。」
「さーせん。」
「こいつ……」
「やはり結界まで習得済みですか。貴女と是非個人的に話し合いたいですね! 今日この後時間ありますか?」
「ジークも一緒ならいい。」
1人でこの人を相手にし続けるは嫌だ。ジークにも犠牲になって貰う。
「もしかして彼は貴女のこれですかな?」
「ん?」
小指を立ててどうしたの?
「そういうのとは違う関係だ。言葉にはし難いがな。」
俺が分かっていなかったので代わりにジークが答えくれた。
「ほぅ、そうなのですね。っと、他の教師も起きて来ましたのでまた後で色々聞かせて下さいね。」
目を覚ました他の教師に先程の説明をしてくれているみたいだ。変人だけど有能な教師なのかも。
しばらくして、事情説明を受けた教師の1人がさっきの変人と言い争っている。何かあったのかな?
聴覚を強化して盗み聞きをする。
「何をデタラメな事を言ってるんだ! 1人で3種類の魔法を使った複合魔法だと? ただの小娘に出来るわけがないだろうが! 絶対に協力者がいるはずだ。今すぐ探し出して捕らえなければ。」
「待って下さい、彼女の魔法は1人で行ったものですよ。魔法の理論も見せて貰いましたが、完璧と言って言いものでした。それに身体強化も類を見ない程の使い手ですよ。」
「馬鹿を言え! あの小娘が俺でさえ出来ないものを出来るだと? 俺は信じないぞ!」
「全く頑固な方ですね。もっと柔軟な思考が出来ないから行き詰まるのですよ。」
「なんだと貴様!」
あちゃ、揉めてるなぁ。他の教師も仲裁出来て無いみたいだし。頑張れ〜。
時間かかりそうだから今の内に結界でも張り直そうかな。見られてるとあの変人のから質問攻めされそうだし。
結界とは複合魔法の代表的な物だ。範囲の魔法で特定の場所に設置し、防御、魔法耐性、物理耐性などの魔法を付与した物だ。
これは術者の腕によって強度も変わってくるし、その形も違ってくるそうだ。
この修練場は大きいので複数の人の手によって結界が張られていたのだろう。複数人の方が1人当たりの魔力負担が少ないので効率的だが、1人で全て行うより結界の強度が弱くなる。
魔法はイメージが大事なのは言わずもがな、1人で全て行う場合は自分だけがそのイメージを持っていればいいけれど、複数人で同じイメージを完璧に合わせる事が出来ない為に強度がどうしても落ちてしまうのだ。
だから俺の魔法1発で壊れてしまう。しかも、結界には衝撃吸収がかかっていたので余計に壊れやすくなっていた。
衝撃吸収はある一定までは吸収出来るが、上限を超えてしまうとすぐに壊れてしまう脆いものだ。
かけるなら壊れ無いように細かな魔力の調整をしなければならないので、上限によって階級が変わる特殊な魔法の1つだ。
今回はその衝撃吸収に加えて各種耐性をつけるだけの簡単な結界を修練場に張り直す。変に弄らない分、単純で強固な結界になる。
俺が結界を張り直している間に、教師の揉め事は周囲にいた護衛の人の介入により仲裁されていた。
「どうなった?」
「なんだか面倒くさい事になりそうだぞ?」
「えー。」
「元はお前が蒔いた種だ。しっかり責任を取れよ。」
「ちぇ。」
すると仲裁していた護衛の1人が近づいて来た。
「すまないが、これから俺と模擬戦をしてもらう事になった。」
「なんで?」
「教師の1人がどうしても認め無いのでな。護衛である私と模擬戦を行えばボロが出ると言って聞かないのだよ。全くいい迷惑だ。」
「ルールは?」
「武器は使用禁止で先に戦闘不能、または降伏により勝敗を決める。」
「分かった。」
「貴公が相当な使い手である事は護衛一同が分かっているが、あの教師が言うことを聞かんのでな。」
「それなら仕方ない。」
「感謝する。」
あの人まだ信じてくれなかったのか。模擬戦だと不正を発見しやすいと思ったのかな。
「ちなみに質問なのだが、隣にいるのはもしかしてジークか?」
「そうだが、お前は誰だ?」
「俺だよ俺。」
そう言って頭に被っていた兜を外す。
「お前! その顔まさかファルスか?」
「久しぶりだなジーク。」
「どうしてここに?」
「俺は武の国から護衛としてここに来たんだよ。」
「と言う事はまさか……」
「あぁ、来てるぜ。」
「まじかよ。」
なんかよく分からないけど、この護衛の人とジークは知り合いって事で良いのかな? 武の国から来たって言ってたし。
てことは、まさか俺ジークの友達とやりあうの?
面白いと思ったらブックマーク、評価、感想等お願いします。