14 イージスアート
今月は忙しいので更新が少し遅くなると思いますが、3日に1回は更新して行こうと思います。
イージスアートは学園都市の中でも屈指の名門であり、卒業生はイージスアート出身と言うだけで選り取り見取りの職に就けると言う。その中でも国騎士が1番人気で入隊当初から階級持ちで入る事が出来るので目標の1つになっているそうだ。
そしてこの学校の特徴的な所は、入学する時に技術研究のコースと国騎士コースのどちらかを選択しなければならない事だ。コース分けによりその専門分野に特化する事で僅か3年で卒業ができるのだ。
と言っても、コースの変更は毎年可能なので行ったり来たりしている優柔不断な人も多数存在しているらしい。
「準備出来たか?」
「うん。」
「じゃ、行くか。」
「おー。」
俺達は師匠の推薦で入学することになっているが、入学前に簡単な試験があるみたい。その試験では推薦入学の人たちの実力を測るもので、あんまりにも試験結果が悪いと落とされる事もあるそうだ。
その試験内容は毎年変わるみたいで当日になってみないと分からない。落とされないように頑張ろう。
◇
「それでは本日の試験内容を説明します。今日はーー」
イージスアートの試験会場で今日行う試験の説明が始まった。最初は講堂にて紙でのテストが行われた後に、結界の張られた修練場にて実技のテストがあるそうだ。
意外な事に受験者は俺達を含めて多くいた。見る限り魔力を扱えている人が多い感じだ。国騎士コースの志望なのかな?
周りが気になって聴力を強化して話声を盗み聞きすると、各国から貴族や王族までもがいる事が分かった。成る程、護衛のために試験会場の周りに完全武装した人が沢山いたわけだ。
ここは貴族や王族が学びに来る程の場所なんだ、これは何としても合格しないとな。
「気合い入れなくてもエミルなら余裕だろ。」
「油断大敵。それが私の座右の銘。」
「そうかい。」
始まった知識のテストでは魔法の知識から魔物の弱点など幅広いジャンルの問題があって、自分の得意分野の回答をすればいいそうだ。俺は盲目だが魔力を見ることができるので、インクに魔力を付与する事で紙に書いてある文字を読み取り回答していった。
「魔法建築の分野なんて初めて知った。」
「魔物の素材を使った錬金術なんかもあったな。」
「最新鋭。」
「だな。」
魔法建築も錬金術も問題数が少なかったので、出来たばかりの物なんだろう。俺も調べて研究してみようかな?
「次は実技だけど修練場を破壊しないでくれよ、エミル。」
「確か魔法の習熟度を見るんだっけ?」
「放出型と蓄積型の2つを見るみたいだぞ。」
「階級指定は無いよね?」
最近また重力魔法を使った新しい魔法作ったから、試し撃ちしたい。
「自分の得意な魔法でって言ってたから、何でも良いんじゃないか?」
やった! 試し撃ち決定だ。
「よしっ。」
「……お前修練場壊すなよ。」
「2回も言わなくても分かってる。」
「本当かよ。」
修練場は壊さないから大丈夫だよ。
◇
試験を行う修練場には多くの教員が集まっており、外で待機していた護衛の人達も俺たちの様子を見にきていた。
「それでは試験を開始します。もし魔法の発動が出来ない者は自分の得意な物なら何でも構いませんので、披露して下さい。」
そういえば国によって魔法の習得には違いがあったな。和の国では軍事訓練だったけど、武の国では特に制限もないそうで法の国に至っては小さい頃から覚えるのが当たり前らしい。
魔法を使えない国があるかも知れないから魔法無しでもいいのか。
「では受験番号を呼ばれた者は前に出て来てください。」
最初の人は大勢の人の前で緊張したのか放出型の魔法の発動に時間がかかっていた。周りの教師も護衛の人も何も反応を示さないが心なしか落胆しているように感じる。
次の蓄積型の魔法は部分的な身体強化のみで右腕だけ少し強化されている程度のレベルだった。
このレベルは流石に酷いな。放出型も6級の火の玉は時間をかけた割には威力が低かった。
それから次々と人が呼ばれて行くけど皆似たり寄ったりで魔法のレベルが低すぎた。まさかこれが普通なのかな?
そう思って次の人を見ていると、試験が終わった人達の方から緊張が緩んだのか話声が聞こえてきた。
「あれが噂の……」
「すっごい美男ですね。」
美男とかどうでもいいけど噂ってなんだろ?
「ジーク知ってる?」
「何の話だ?」
「今呼ばれた人の事。」
「あぁ、確か法の国で有名な魔導士の息子とかだったな。」
「そう。」
「気になるのか?」
「ただ聞いてみただけ。」
「本当か?」
「本当だよ?」
「ならいい。」
「変なの。」
それにしても時間かかってるな、何の魔法を使うつもりなんだろう。と思っていると彼の周りに炎が出現し、その形状が変わっていく。
この魔法は放出型の3級の炎槍なのかな? 俺の知っている物に比べて形が変わっていて見たことのない形をしている。しかも、その上4つも同時発動している。
放たれた魔法は制御が甘かったのか的に当たったのは1つだけだったが、威力は十分だったようで的を貫通し結界にまでダメージを与えていた。
「おぉ! 炎槍を4つ同時発動とは素晴らしい。」
「それに魔力切れを起こしてないということは、魔力量も多いようだ。」
「しかも、既存のものと違い改良までされているとは、この歳で恐ろしいですな。」
今まで無言だった教師陣もこれには賛辞を贈っていた。それに周りの護衛の人も隣と感想を言っているようだ。
「ありがとうございます。しかし、これだけでは終わりませんよ?」
「おぉ、そうだったな。蓄積型も見せてくれ。」
その後の蓄積型は身体強化であったが、他の人に比べ物にならないぐらいに魔法が上手かった。
「あの人はましだね。」
「あの魔力量に炎槍の形、まさか奴も……」
「ジーク?」
「いや、何でもない。」
「今日変だよ?」
「大丈夫だ、心配ない。」
本当に大丈夫かな? 俺だけ受かってジークだけ落ちたら嫌だよ。
ジークの事が気になりつつも、ようやく俺の出番になった。今は目の前の事に集中しよ。
放出型の魔法は前の人が派手だったので俺も遠慮なく新魔法を試せるぞ。
「重力爆弾」
的に向けてでは無く、上空に向かって放つ。
ドゴォォォン!!
と空気を震わす程の威力で修練場の結界をいとも簡単に破壊してしまった。
やっぱり持たなかったか、後で謝っておこう。許可して貰えるなら俺が張り直してもいいかな。
周囲が沈黙している中で、次は身体強化を使い鉄製の的を手刀で真っ二つにして、ジークの元に戻る。
「壊すなって言ったよな、エミル。」
「うん。修練場は壊して無いよ?」
「屁理屈言うじゃねぇ! 結界ぶち壊しやがって。それにさっきの魔法なんだよ?! 少しは自重してくれ。」
「でも、落とされたくないし。」
「周りを見てくれ。ほとんどの人が気絶しちまったぞ。」
本当だ、護衛の人と教師数人を除いて皆んな気絶していた。
「なんで?」
「なんでって、そりゃ至近距離であんな大爆発があったら並の人は気を失うわ!」
「今度は気をつける。」
「ほら、教師の人がお前を手招きしてるぞ。」
「そんなの見えないから知らない。」
「俺も一緒に謝ってやるから行くぞ。」
ジークの脇に抱えられて教師の元に向かう。
結界の事は謝るけどそれ以外は悪くないもん。