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12 首都ヴァールテクス

俺は何か創作するのが好きなんだよな、これだけの素材があるなら色々作れそう。昨日見つけた魔導車をモデルに一旦組み上げて行こう。


重力魔法を使って魔金属を変形させていく。この魔金属とは魔法との相性が良く、魔力の伝導率が高い事から魔剣などの製作によく使われるものだ。確か大体1キロあたり金貨1枚だったかな? 和の国の鉱山で大量に掘った記憶がある。


作っている間ジークには他の3人の相手をしてもらう。


「ねぇ、エミルちゃんは何してるの? 呑気に何か作っているみたいだけど。」

「こそこそと何を話してたか知らないけど、これからどうするんだ?」

「何か考えがあるなら教えてくれないかい?」

「はぁ、俺達ばかり頼るのでは無く少しは自分達で考えてくれないか? 俺達は君達の保護者じゃないんだ。」

「うっ、そうだよね……」


毎度の事、面倒くさい役目を押し付けてごめんねジーク。付いて来てくれて助かってます。主に人とのコミュニケーションで。俺1人なら放置する自信がある。


ジークに任せて、あれもこもれもと作っていたらあっという間に数時間が経っていた。


「出来たよジーク。」

「やっとか……俺が昨日見た魔導車よりも大きくないか?」

「細かいことは気にしない。」

「いや、もはや別物なんだが。」


確かに車輪も車体も1.5倍以上大きくなってるけど、それだけじゃないか。……嘘です。めちゃくちゃ改造してます。だけど後悔はない。


「ところであの3人は?」


いつの間にか居なくなってる。何処に行った?


「痺れを切らして旅立ったぞ。」


え、何がしたかったのあの3人。


「引き止めなかったの? 」

「必要そうな物を渡しておいたから大丈夫かと思ってな。」

「本音は?」

「相手するのが面倒になった。」


ジーク、師匠に性格似てきたな。


「それなら仕方ない。」

「そうだ。仕方ない。」

「じゃ、試運転手伝って。」

「了解。これどこから乗るんだ?」

「ここのドアを開けて。席に座ってて。」

「よっと。お、内部は意外と広くて快適だな。」


車内は衝撃吸収の魔法を付与した席など、限界まで魔法を付与したスペシャルな魔導車になってます。


「よく出来てるな。」

「なんかね、漠然としたイメージが頭の中にあったの。」

「前の記憶って奴か?」

「そうかも。」


俺には記憶がない。本当の名前も歳も知らない。それなのに時々、既視感を感じる事がある。


「これどうやって動かすんだ?」

「このハンドルに魔力を流して後は魔剣と同じ感覚で動かせばいいよ。」

「意外と簡単だな。」

「だね。」


お互いに乗り回し感触を確かめ、マーキングした馬車に向けて出発した。


「改めて見るとやべえなこれ。」

「気に入った?」

「そういう話じゃねぇ。」

「? どういうこと?」

「この魔導車に使っている素材の話だよ。」


えっと、純度100%の魔金属を外装にその他諸々の魔物の素材を使っただけだよ?


「これオークションに出したらとんでもない値段がつきそうだ。」

「大金貨1枚ぐらい?」

「魔法付与もあるから大金貨の10枚の間違いだろ。」

「まさか。」

「はぁ、首都の学校で金銭感覚を学んでくれ。」

「はいはい。」


横でおやつを食べながら目的地につくまでのんびりとしていた。



夕方頃に大きな検問所がある都市に到着した。どうやら当たりだったみたいだ。


道中あの3人を見つけられなかったから、方角でも間違えたのだろう。


検問所に魔導車で乗り付けると騒ぎになるとジークに言われたので手前で降りて、アイテムボックスにしまっていくことにした。


検問所では師匠に貰った紙を見せると、目の色を変えて慌てて奥に引っ込んでしまったので少しの間、検問所横の応接室で待っていると壮年の男がやって来た。


「たく、随分と変な時間に来たもんだ。」

「どちら様で?」

「あ? バルドの奴から聞いてないのか?」


そういや、何か師匠が言ってたな。知り合いがいるとか何とか。確かメルドだっけ?


「もしかしてバルザークさんですか?」

「なんだちゃんと聞いてるんじゃないか。」


全然違った。メルドは師匠のお兄さんだった。


「なんだってこんな時間に来たんだよ。」

「それは色々とありまして。」

「まぁなんだ、もうすぐ夜だから話は後だ。とりあえずついてこい。」


旅立ってからまだ少ししか立ってないけど、ようやく1つの目的地に到着した。これからここで学園生活が始まる。


「おっと忘れてた。ようこそ首都ヴァールテクスへ。歓迎するぜ。」


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