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106 精鋭

続きです。

また面倒な事をと思っていたが、ステラ達が提案してきた内容は俺達、もとい俺にとって悪くないものだった。なのでタイヨウには、いざという時には俺が何とかするからと説得して現在に至るわけだ。


「本当に何をしてるの?」

「説明が面倒」

「えぇ……」


ルルやステラが興味津々に質問をしてくるが、俺はおざなりな返事をする。恐らく今している行為の理由を説明すれば、何で、どうして、と矢継ぎに質問されるのが目に見えているからな。


「あ、あった」


暫くの間無言で探していると目当ての物を見つけたので、地面から手を離してルルにジェスチャーを送る。


「終わったっすか?」

「うん。だから、ツルハシかして」

「うへぇ、休憩無しっすか。何だかズルいっすね」

「うるさい」


近くで休憩しこっちを観察していたルルから小言とツルハシをもらいつつ、掘り進めていく。


「おぉ、爽快っすね。地面が砂糖菓子のようっす」


目的の物を近場から手当たり次第掘り起こしていると、ルルは楽しそうに尻尾を揺らしていた。


「ねぇ、ステラ。あの子、何者だと思う?」

「お忍びで来た、何処かの国騎士団長とか?」

「あり得そう。私は技の国の技師だと睨んだ」

「あぁ、そうかも。私達の武器に色々と言ってたもんね」

「ねー。ま、どっちにしても見た目からは想像できないけど」


お気楽なルルに比べてステラとリンの二人は、俺の正体が気になっているようだったが、どちらの予想も正解とは程遠いものだった。けれど、その勘違いをする原因には心当たりがあるのである意味仕方ないと言える。


それに今この場で俺をこっそり観察している奴等も、大体同じ事を考えているだろう。だから、派手に勘違いして勝手に怯えててくれ。


「よっと。ところでタイヨウさん? は、まだウチらに慣れてくれないっすか?」


いつのまにか掘り出した鉱石の回収を手伝ってくれるルルは、一人離れた所で黙々と作業しているタイヨウについて聞いてくる。


「ん。あれは何時もの事だから」

「おーい……ありゃ、ダメっぽいっすね」

「放っておいていいよ」


タイヨウにルルが一応声をかけるが、ブンブンと手を横に振るだけの安定行動に苦笑していた。


「尾行していた時とは大違いっす。もしかして、亜人(ウチら)が嫌いなんすかねぇ」

「いや、亜人は好きだと思う」


だってタイヨウの視線は三人の耳と尻尾に釘付けだもの。


「そうっすか? それなら安心っすけど」


実際タイヨウはこれまで一言も話さず、会釈する程度のコミュニケーションのみで、俺の後ろに隠れているか、遠くから三人を眺めているだけだった。


多分、タイヨウは声帯が男の時と変わらないから、ステラ達に迂闊に話しかけられないと思っているのだろうけど、元々の声が男らしいのもでは無いなので、気にする必要は俺は無いと思う。


まぁ、後は単純に初対面の異性に緊張しているだけかも知れない。寧ろそれが八割な気がする。


「あのヘタレめ」

「あはは、厳しいっすね」


魔鉱石の回収が一区切りつくとルルは自分の仕事に戻っていった。なので俺はルルにツルハシを返して、手渡された魔鉱石をアイテムボックスにしまいながら、一息つく事にした。


『お姉ちゃん』

『大丈夫』


一人になった途端に妹は心配そうに声をかけてくる。やはりバレてしまうか。


『でも……』


妹は俺の心の機微にとても敏感になった。きっと今は羨望の気持ちを感じとったのだろう。


『これは、私一人で解決しないといけないの』

『どうして?』

『どうしてだろうね』


妹は分からないと言うが、今はそれでいい。妹には解決方法以外を考えて欲しいから。


妹と会話をしてると、俺達のいる採石場に新たに二つの魔力の塊がやってきていた。その二人は他の人とは違い師匠と同等かそれ以上の魔力を持っているようで、俺の探知圏内にいる事に気づいたのか、視線の先で俺を捉えていた。


「おい、何でこんな所に魔槍様がいるんだよ」

「知らねぇよ。サボりじゃねえのか?」

「隣にレディがいるんだ。仕事だろ?」


検問所に入っていった二人はどうやら有名人のようで、それを見た人達がにわかに騒ぎ始める。


やべぇ、なんだか嫌な予感がしてきた。


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