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11 愚者の末路

毎度この港には多くの学生がやってくる。その多くは他国から来た間抜けな子供だ。首都行きの格安馬車に何の疑問も持たずに乗り込んでくる。それが罠だとも知らずにな。俺達はそんな馬鹿を奴隷として売り捌く簡単な仕事だ。


大抵の学生は魔法の腕に自信を持っているが実戦経験している奴なんて1人もいやしない。身体強化で接近して封魔の枷をつけてやれば何の抵抗も出来ずにお終いさ。


今日も馬鹿な子供が5人も引っかかった。夜中になっても辺りを全く警戒してない様子を見て笑っちまう。こんなお子ちゃま達には世の中の厳しさを教えてやらねぇとな。今から楽しみだぜ。



武装した人が俺達囲むように配置してある。数は全部で12人で全員接近型と思われる。


「私が分かる範囲に12、近接型。身体強化は下。」

「了解。勘違いかも知れないから話だけ聞いてみるか。」

「夜中に武装して囲んでいるのに勘違い?」

「それでもだ。」

「……分かった。」


早く終わらせて寝たいのに。


距離が縮まり相手がこちらを目視したのだろう。ほんの僅かだが動揺しているのが分かる。ジークが前に出て武装集団に問いかけた。


「こんな夜中に何の用だ?」

「そんな事も分からないのかこのガキは?」

「死にたく無ければここから立ち去れ。」

「はっ! 威勢のいいガキだな。だがそれがいつまで持つかな?」


武器を構えて全員が不快な声で笑っている。この声は嫌いだ。今すぐに消してしまいたい。


「それが貴様等の答えか。」

「抵抗するなら手足の一本でも切り落として構わねえ。野郎共やっちまえ!」

「もういいぞ、エミル。」

「分かった。範囲重力(サークルグラビティ) "(めつ)"」


ぐしゃりと何かが潰れる音がした。それから少し遅れて濃密な血の匂いが辺りを埋め尽くした。


「……俺1人でやった方が良かったかもな。嫌もの思い出させちまっただろ?」

「気にしなくていい。もともとこうなる運命だったから。」


俺の発動したオリジナル魔法により武装した12人は押し潰され、地面の染みとなった。


この魔法は放出型の範囲の魔法と蓄積型の重力の魔法を組み合わせたもので、俺が指定した範囲に重力の負荷をかけることができる魔法だ。元々、重力の魔法は制御が難しく第2級に分類され、その効果によって自滅する可能性がある危険なものだ。


そのため重力に耐え切れなかった物は全て地面の染みに仲間入りを果たすことになる。しかし、この魔法には欠点がある。それは指定した範囲内のみにしか効果はないことだ。例えば動きの速いものにはまず当たらない。それに指定する範囲が広い程比例して重力は弱くなる。そのため動きの遅いものにピンポイントで当てなければ意味をほとんどなさない代物だ。


それでも重力の魔法には様々使い方があるので俺のお気に入りの魔法だ。


「そうか。馬車はどうなった?」

「今もなお移動中。」

「後を追うか?」

「マーキングしてるから大丈夫。」

「周囲の魔物は?」

「小型が少し。」

「なら今日はもう寝るか。」

「それがいい。」


言い終わる間にいそいそとテントに戻る。眠い、今日はもう何もしたくない。


「考えるのは朝になってからでいいか。」



次の朝、馬車がいなくなっていることに気付いた3人が外で騒いでいた。


「なんで馬車がないのよ! どうなってるの?!」

「夜に何かあったんじゃねえか?」

「でも、夜は静かなもので音なんてなかったよ。」


何か知っているかを聞こうとこちらのテントに無断で入ってきた。


「ジーク君も何か知らな……なによこれ?」

「どうした? ってなんだこりゃ。」

「これは魔道具のテントだね。エミルちゃん達ってどこかの貴族だったのかい?」


鬱陶しいな。何も知らないのは警戒もせずに寝てた自分達のせいでしょうが。


「どうかしたか?」

「あっ、聞いてよジーク君。朝起きたら馬車がね、無くなってるの。」

「それは知ってる。」

「どうしよう……」

「こんな魔道具持ってるんだから、他にも何か役に立つ物でも持っているんじゃねえか?」

「そうだね。どうかなかな? エミルちゃん。」


……本当に面倒な人達だな。役に立つ物なんて何もないぞ。


「すまないが役に立ちそうな物はないな。」

「そんなぁ。」

「これからどうしたもんか。」


昨日の馬車が停止しているので後を追ってみるしかないな。そうすれば何処かには着くだろう。


(ジーク。)

(どうした?)


これからのことをジークと相談する。


(方針は決まったが問題は他の3人だな。)

(一緒に連れて行くと3日はかかる。)

(せめて乗り物でもあれば俺が引っ張って行けるんだがなぁ。)


そういえば、魔導車の作りかけがあったな。後足りない部品が少しはあるけど引っ張るんだったら問題ないかも? そのことをジークに伝える。


(昨日の考え事はそれだったか。ところで足りない部品ってなんだ?)

(魔金属とゴムが足りない。)

(それなら大量に持ってるぞ。)

(おぉ、流石ジーク。準備いい。)


これなら魔導車が作れるぞ。そこに他の3人をぶち込んで移動したら楽になるな。


それじゃ、クラフトと行きますか。

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