102 魔の国
続きです。
大国の一つに数えられる魔の国。そこは剣や鎧、また魔道具の製作に欠かせない魔金属を多く産出する事によって成長を遂げた国である。更にその他にも領土内に数多くの鉱山を保有するために、人は武器貯蔵国とも呼ぶ。
「白狼様との一緒の任務だから、期待してたのにぃ~」
「ちょっとリン。白狼様に聞こえたらやばいって」
「でも、ステラ達だってそう思うでしょ?」
「そうっすね。確かにこんな所にまで来てやる事が、ただの人探しっすからね」
「もう、ルルまでやめてよ。まぁ、私もちょっぴり残念だけどさ」
フードを深めに被り、厚手のローブを着こんだ三人の亜人達は時折辺りを見回しながら街中を歩いていた。
「それにこんなにも沢山人がいたら、見つかるものも見つからないっすよ」
「大体、女の子の捜索とか碌な結果にならないのにね」
「奴隷落ちしているか、それともって感じよね」
会話の節々から渋々といった様子の三人は顔や身体は隠しているのだが、尖った耳や大きな尻尾が服の上からでも丸わかりで、傍から見ると一発で亜人だとばれてしまう格好をしていた。
「目立ってますよ。貴女達」
三人の後ろから若干呆れながら声をかけてきたのは狼人であるブランだった。彼女は三人とは違い耳も尻尾も堂々と外に晒しているが、何故か使用人の服装をしていた。
「わっ! びっくりした。驚かさないで下さいよ、白狼様」
「鍛錬が足りませんね。獣人種なのですから、気配に敏感でなくてはなりません」
「りょ、了解です。それで白狼様は、どちらに行かれてたのですか?」
「私は宿泊する場所を確保しに行ってました。この祭りで直ぐに埋まりそうでしたので」
魔の国首都、シュタール。そこは今、年に一度開催される技の国と合同で行われる武器祭りの最中にあった。この祭りは技の国の職人達にとって重要なもので、各国から新作の武器や防具などを買い求める多くの国騎士や討魔者に、自分達を売り込む絶好の機会なのだ。
認められれば国騎士のお抱え技師になる事もあるし、高ランクの討魔者がパトロンになってくれる可能性もあり、毎年大きな賑わいを見せているので有名だった。
しかも今回はそれに加えて王子王女様の成人を祝福する祭りとも重なり、 各国は魔の国との繋がりを深めようとこれ幸いと年頃の娘、息子を献上しようした。その結果、シュタールには過去最高に多くの人が訪れ、街中には催し物や出店が立ち並び熱気を帯びていた。
「捜索は祭りが開催されている期間までです。もしその間に発見出来なくても撤収します」
「了解しました。つまりは一週間以内ですね」
「そうです。では軍資金と宿舎のカギを渡しておきますね」
「白狼様は、またどちらかに行かれるのですか?」
「はい。ちょっと野暮用がありますので別行動します。後は任せましたよ」
言いたいことだけ言ってブランは人混みの中に消えていった。残された三人は不満そうな顔をしていたが、渡された軍資金がやけに多かったのと、中々に高価な宿舎をとってくれた事に気付きまんざらでもない顔を浮かべていた。
「それにしてもさ。何でこの国に来た途端、あんな格好してるのかな? 趣味?」
「うーん。白狼様が何を考えているか、ウチにはさっぱりっす」
「同感。そんなことよりも屋台見に行かない?」
「賛成っす」
「リンもルルも適当なんだから。あ、置いて行かないでよ」
始まって早々に観光に出る三人を止める者は誰もいなかった。
◇
「ねぇ、タイヨウってさ。お金持ってる?」
「少しだけならあるけど……ちょっとこれは無理かな」
「だよね……タイヨウだもんね」
「それ、どういう意味?」
露店に置いてある鉱石を眺めている二人の女の子がいた。
「ギルドに行ってお金稼ぎしよう」
「はぁ。なけなしのお金も、それに消えちゃったしね」
黒髪をポニーテールにした女の子はジト目で、真っ白な髪を腰まで伸ばした女の子の両手に持っている串焼きを見つめながらため息をつく。
「食べる?」
「いらない」
鏡太陽は財布の中身を確認し、一緒に行くとか言わなきゃ良かったと早くも後悔していた。
夏って感じになってきましたね。私は溶けそうです。




