101 成長
続きです。
クロマメとタイヨウが相談している間、俺は邪魔にならないように一旦テントの外に出ることにした。外に出るとそこはどうやら渓谷のようで左右を山に挟まれており、川の流れる音と湿った空気に土の匂いがする。
約二年ぶりに感じる世界は、沢山の魔物達が激しい生存競争を繰り広げている大自然そのもので、肌を刺す瘴気と魔物の気配は否応なく生存本能を刺激する。
「すぅー、はぁー。懐かしい感じだ」
何も出来なかった最初の戦闘を思い出す。あの時も確か……と俺が吞気に追慕していると、テントから出てきてほんの数分しか経っていないのに、既に二桁を超える魔物がこちらを警戒していた。
「流石は魔境。魔物の数と強さがおかしい。けど」
そのどれもが脅威たり得ない。そう思うのは俺はまだ放出魔法を発動していないのに、魔物の気配が手に取るように分かるからだ。それに食事している時に薄々は分かっていたが、保有している魔力量も昔と比べて尋常じゃないぐらい増えているし、五感も大分回復している。
正直、今なら第一級放出魔法でさえも連発出来る自信がある。
一体俺が見ていない間に妹はどれだけの魔物を食らったのだろう。でもまあ、さっきから一切襲い掛かってこない魔物達の様子を見れば、大体察するけどね。
これは今度から瘴気を使った戦闘は妹に任せた方が良いかもな。アイテムボックスの中を探った感じ新しい武器とかは見当たらなかったから、恐らくは瘴気を武器にして狩っていたと思うし。
ただ一つ気になるのはアイテムボックスの中に、俺の知らない多種多様な魔物の頭蓋骨が大量にあったことだ。多分、妹が入れたと思うのだけど変わった趣味にちょっと引いてしまった。
「それにしても、どうしてこっちは成長してないんだ」
他は目覚ましい成長を遂げているのに何故、身体的特徴だけが乏しいのだ。特に自分の手のひらのサイズに収まってしまうこれは、まるで成長していない。
『まだそんなの気にしてるの?』
大きすぎるのも嫌だけど小さすぎるのもなぁ、と思っていると、起きて早々に面倒ごとを押し付けて寝てやがった妹が話しかけてきた。そんなのとは何だ、そんなのとは。
『お姉ちゃんはさ、どんな感じに成長していて欲しかったの?』
どうって……理想を言うならもっと大人の女性らしさが欲しいかな。
『うーん。もっと分かりやすく説明して』
あー、今よりもうちょっとだけ身長が高くてすらっとしてて、くびれがあって、後少し胸が大きければ。
『ふむふむ……なるほど分かった。ちょっと痛いけど、我慢してね』
「え、いだだ!! ちょっとユミル!?」
妹が納得した瞬間、身体の内側から何かが蠢く様な違和感を覚える。そして急に全身を軋むような鈍い痛みが襲う。その場に立っていられない程の痛みに妹の名前を呼ぶが反応はなく、なおも身体の激痛は止まらない。
「ぐぅぅぅ!!」
結局その場に蹲り歯を食いしばって何とか耐え、痛みが引いてくる頃には全身が脂汗でぐっしょりと濡れていた。しかも、身体の中をかき回されたような気持ち悪さも相まって、最低の気分だった。
「はぁ、はぁ。最悪」
絶対に何かをやったはずの妹を問い詰めるのすら怠い。
『上手くいったけど、お姉ちゃん大丈夫?』
「……何が」
『ちゃんと成長できたよ』
は……はぁ?




