98 決意
めちゃ短いです。
元々この身体の持ち主はあの子なのだから、本当は君が好き勝手に生きている姿を傍観しているのが正しいのだ。役割を終えた俺がこれ以上、あの子の物語に手を加えてはいけない。
俺のせいで歪んだ形に成長を遂げたと分かっていても。
きっと俺が姿を見せなければ、あの子はこの魔物しかいない場所から離れることはない。そうなれば俺は、親しい誰かを傷付けているあの子の姿を見ないで済む。
……我ながらに身勝手な事だとは自覚している。でも、これが最善だ。
だけれど、運命とやらはそれを許してはくれなかった。
カガミタイヨウと言う人間との出会いで、あの子はついに一歩を踏み出した。魔王としての一歩を。
美しい白鬼は俺にもう一度、夢を見ろと言う。俺がどんな思いで諦めたのかも知らずに。今更俺がやめて欲しいと言っても、聞いてはくれないだろう。だって、俺の本心はあの子に知られてしまっているのだから。
俺の夢を叶えるためなら、あの子は立ちはだかる全ての障害を善悪関係なく踏み潰すだろう。あの子は人の心を理解していても、倫理観なんてものは何一つないのだから
俺はもう暗闇からの傍観者だけではいられない。俺のために一歩を踏み出した妹を見捨てるなんて事は出来ない。俺が踏み外し始めた道を正してあげる。でも、もしもそれが出来なくて最後を迎えたらその時は一緒に……
さぁて、意地悪をしてくる妹に仕返しをしなくては。




