95 和解?
ジャンルとタイトルを変更しました。あーでもない、こうでもないと考えていたら遅くなりました。
「邪魔な奴は追い払ったよ?」
木々をへし折りながら豪快に舞い降りた女の子は、信じられないこと言いながら迷いなく擬態している僕達の方に歩み寄ってくる。十メートルは優に超える木々の青々と生い茂った葉によって遮られ、上空からだと緑の絨毯しか見えないはずなのに何で僕のいる場所が分かったんだ……
くそぉ、魔法なのか魔人の力なのかは知らないけど、なんにせよもう逃げる事は出来ないか。どうにかしてこの場をやり過ごさないと。だけど、友好的にコミュニケーションを取ろうにも、最初の自己紹介で失敗した僕には、まともに会話できる自信はこれっぽっちもない。
「どうしよう……」
『大丈夫だよ、太陽。今度は私がついてるから!』
『本当に大丈夫?』
『うん、任せて』
女の子との距離が徐々に狭まってきて色々な意味でドキドキしていたら、黒豆から頼もしい言葉がかかる。
『分かった。自信を取り戻した今の黒豆なら、上手くやれると信じるよ』
全てを託して念話を終えると、僕の身体にくっついて擬態していた黒豆は人型に変形し、僕の前に堂々と仁王立ちした。
「わ、わたしの名前は黒豆。あ、あなたは?」
……黒豆は僕の眷属だったと改めて思いながら天を仰ぐ。あぁ、残機が減りませんように。
「死塊が、喋った?」
けれど、僕と全く同じ台詞だったのに返ってきた反応は違っていた。視線を戻すと唐突な黒豆からの自己紹介を受けた女の子は喋ったことの方に興味を持ったようで、歩みを止めて疑問を口にしながら不思議そうに首をかしげる。そして何を思ったのか高速で黒豆の前まで移動してくると、躊躇いなく手を使って直接身体中を調べ始めた。
その様子は何というか、まるで好奇心を持ったものに飛びつかずにはいられない猫のような……うん? ひょっとして、この子はただの純粋な子供で僕が思っているようなラスボスでは無い?
「新種? それとも知能持ち?」
「あ、あの、私は死塊じゃない、です」
「違うの?」
「一応ブラックスライムっていう種類で……っ! ちょ、ちょっとそこは」
「凄い。こんなところまで」
そう仮定するなら色々と疑問が浮ぶ。何でこの子は初対面だった僕をいきなり殺したのだろう。男だったから? でも、それだったら僕が復活した時点でまた殺されていそうだ。それにあの子は僕が復活した後に謎の奇行をしていたけど、質問をするだけで殺そうとはして無かった。おまけに今思うと、この子は僕が龍を怖がっていたから態々追い払いに行ってくれたのだ。
そんな子が果たして悪人なのだろうか?
思索にふけっていると、ふと助けて欲しそうにこっちを見つめる黒い瞳と目が合う。いやいや、見た目だけは美少女である人外達の絡みとか僕には無理だから。終わるまで頑張れと無言でサムズアップをして応援することぐらいしか出来ないよ。
「はぁ、はぁ。もう、満足した?」
「うん」
結局、涙目になるまで好きなようにいじられた黒豆は女の子の魔の手から解放されると、もうお嫁に行けないと言いながら羞恥からか地面に突っ伏していた。僕が言うのもあれだけど、ご愁傷様です。
一頻りにいじっていた方は満足したのか、徐に地面に座るとアイテムボックスから何かを取り出してそれを食べ始めた。本当に自由気ままな猫みたい。
ふぅ、よし。覚悟を決めよう。
「こほん。あの、僕とお話しない?」




